スティーブン・キング 『ザ・スタンド』<全五巻>

ここ数年、けっこうな頻度で読んでいるキングの、超長編をやっとのことで読み終えた。『ザ・スタンド』である。

もともとキング作品は、本人も認めているように(笑)、とても長いものが多い。だが、この作品のように全五巻という膨大なスケールともなると、さすがに珍しい。実は当初、全三巻かと勘違いして読み進めていた。三巻の終わりのほうで、「これじゃどうやって物語に収拾をつけるのだろう….」と訝しんでいたくらいだだけに、あと二巻もある(!)と知ったときは愕然とした。

作者自ら、『指輪物語』を意識したというだけあって、スケール感は他の作品に比べても桁違いなのは確かだ。謎のインフルエンザ・ウィルスによって、バタバタと人が倒れ、しまいには全人口の数%を残して、人類は絶滅の危機に瀕してしまう。残された人々は過酷な状況に放り出される。ロックシンガー、妊娠した女学生、聾唖の青年、老婦人、孤独な少年、社会学者などが闘い、葛藤し、裏切り、物語を紡いでいく。そしてもちろん、生き残ったのは善人だけではない。

やがて生存者たちは自ずと二分され、お互いが進むべき道を歩み、破壊、そして再生への希望をつかむ。

キング作品に慣れてる人であれば、スルリと読破できるだろうし、読後感も圧倒的で近年ではすこぶるよい。

ただ、個人的なベストである『ペット・セマタリー』『トム・ゴードンに恋した少女』には少々及ばないかな〜。