地熱発電所のゲート前で降りると、軽トラが1台。さすがに連休最終日ともなるとこんな感じか。
荷物の整理をしてパッキング、足回りの準備を整えていたらもう11時30分。今日はかかっても3本なのだが初心者もいることだし、若干焦る。焦るのだけれども、急いだって仕方がない。天気を選んで入渓したおかげで、雲ひとつないスカッ晴れなのが有難い。
11:43スタート。
見飽きた地熱発電所だが、初見の人にとっては新鮮らしい。そりゃそうか。あの太いパイプの中を蒸気が巡っているのだろうが、どういう仕組みになっているのかは、実はよくわかっていない。こんど調べてみよう。
入渓点までの林道歩きがツラい。天気が良すぎて暑い。汗が流れる。早いとこ沢床に降りたいところだ。
舗装路から、ヤブ道へと変わるところでちょっとした違和感が。なんだか、これまでで最高レベルでヤブが濃い。左右からの覆い被さり方が、割と本格的な藪のそれなのだ。
一昨年の10月に来た時の印象と大分違うなあ。刈り払い有無によるものなのかはちょっとわからないが、沢床へと向かう屈曲点もネマガリダケがマシマシになってる気がする。
しゃーない。覚悟を決めてズンズン行く。もう少しで沢に降りられるというところで、何やら視界に人工物が……釣り人の携帯用の魚籠が転がっていた。わりと新し目なので、最近落としたものだろう。Mくんも、このヤブで熊鈴を持って行かれたとのこと。フ。
これほどヤブが深いとなると、入渓点はちゃんと考えなくちゃなぁ。2番目の堰堤上に向かって直線的に降りるのがベストな判断だったかもしれない。次回の調査課題としよう。
そんなこんなで、無事沢床に降り立つ。水は、まあ冷たい。Mくんも喜んでいる。ヨシヨシ。しばらく沢での歩き方やフリクションのことなどを実地でレクチャーして、改めて出発だ。
とりあえず丑首までとなるが、途中の右岸から入っている枝沢のところで水補給。ついでに(特に足回りで)違和感などあるかどうかのチェック。問題なし。
何回か渡渉しているときに思ったのだが、大雨の後だけに水量が平水時に比べて明らかに多い。10〜15cmくらい水位が高いのではないかと感じる。この水量の多さにはこの後も手を焼くことになるのだが、この時点ではわかっていない。

丑首着は13:15と、いいペース。

わちゃわちゃと記念撮影なんぞをして、いよいよ核心部のお函へと突入する。
ダブルストックで行こうとするMくんに説明をして、ここでは二人ともストックは仕舞う。3点支持について改めて話をしたりして、入り口のトラロープを掴む。
水量は多いものの、急な増水さえなければ基本的には危ないところは(強いて言えば)1箇所のみ。右岸で2番目に乗っ越すところの下りだ。先に降りて手本を示すものの、初めてだとけっこう怖いのはよくわかる。下からホールドなどの指示をしつつ、最悪落ちても受け止める前提で構えるが、Mくんどうにか無事にこなしてくれた。
ちょいちょい見ているが、歩き方のセンスが割といい。6月のKちゃんもだが、またもや有能な新人を発掘してしまったか。
難所を越えたら、あとは観光みたいなものだ。お函特有の景観にMくんも歓声を上げている。スダレ状の滝が右岸から入る核心部で休憩。

発電所あたりを歩いているときは、今日は泳いでもいいかもと思ったが、さすがにここまで来ると飛び込む勇気は萎んでしまう。いやだって、風はけっこう涼しいし、汗は冷えたし日陰だし。
大石沢には15時すぎに到着。焚き火跡にアルミホイルがやけに多い。やたらと積み上げられた石も素人丸出しで、まさに噴飯モノである。
アルミホイルは持ってきたゴミ袋に入れて回収。ブルーシートは来年の課題とする。さすがに燃やすのはマズイかねえ。

荷を下ろしてタープを張って薪を集めるのだが、2人いると薪集めが本当に楽。ありがた山にもほどがある。1時間ほど作業したら、いよいよ釣りタイム。
Mくんは、釣り自体も初めて。テンカラ竿の振り方を丁寧に教える。といっても、基本は10時2時の竿の振り方と、しならせて毛鉤を飛ばす感触を伝えるのみ。
ん〜、初めてだとちょっと難しいかな。でも葛根田は基本的に上が開けてるから、枝がかりすることもほぼないし、好きにキャストさせる。
だがしかし、釣れない。釣れないねえ。
大石沢出合周辺は、いるときはすぐ食いついてくるんだけど、今回はどうも魚影が薄い。しびれを切らして自分も竿を出して大石沢上流を釣り上がったのだけど、魚影が薄いというかそもそもイワナがまったく走らない。
夏を挟んで、相当人が入ったのかもしれない。雨のあとは食いが良くなるイメージなんだけど、まだ水量が多くて引っ込んでるのかもしれない。盛夏ならともかく、秋はテンカラ自体が不利っていうのもある。少なくとも、ドライ系じゃないほうがよかったなぁ。
17時をすぎた頃から釣瓶落としで暗くなる。正味1時間ほどしか時間を取れず心苦しいのだが、ここはスパッと諦めて焚き火タイム。イワナ食べさせてあげたかったなぁ、食べさせたかったよぅと情けなく愚痴りながらウイスキーをグイグイ呷る。
Mくんは、さすがに沢のようなシチュエーションでの焚火は初めてだったらしく、夜は大いに盛り上がった。オッサン2人が酔っ払うとこうなるよねという典型のような話題でバカ笑い。とめどない奇声が沢の音と混ざり、夜が更ける。