『詩人てるゆき』がツボすぎて苦しいでござる

週刊アクションは数少ない私の定期購読誌です。8割方はエロと食い物という内容のくせに、時折とんでもない作品が掲載されたりするんで、そういった出会いをいちど味わうと、なかなかやめられないんですよね。

なので、グラビアアイドルの等身大ポスターとかどうでもいいよとブツクサ言いながら、毎回駅で買ってしまうわけです。

で、アクションで不定期連載されてたこの作品。これがもう、トンデモない、自分的にはドツボなマンガでした。


もうね、特に説明とかはしません。以下、ご覧いただいてビビビと来たら、ぜひ手に取ってみてください。森ガールの回が最高とだけ言っておきます。「あとがき」もまた、ポエムでしてねぇ。

「単行本一冊分だけ描いて、出して様子見」というステータスなのかもしれませんが、本誌ではすでに、「初老てるゆき」という続編とも言える作品が掲載されています。こっちのほうが、身につまされるというか、まあ明らかに狙ってきてますね。

そういう意味では有望なのかも。

JコミのiPhoneアプリが神な件

年末年始はあんまり自分のために時間を使うことができず、実家でやっつけようと思っていた書類仕事や、読みたかった本もほとんど手つかずでした。

年始のアレコレや三連休が明けて、ようやく仕事モード。DLすらできていなかった、JコミのiPhoneアプリを落とし、試してみました。

なんと、タイミングよく『いよっ、辰あにい!』が公開されているではありませんか。あ、年末にはすでにあったのか。見落としてたぜ。

んで、早速iPhoneアプリで読んでみたのですが、これが素晴らしいデキ。コミックビューワーとしてもいいし、PDFビューワーとしても使えそうです。

なんといっても、作品そのものをDLして、いつでも読めるのがステキ。これで通勤電車の中でも楽しめますな。iPadにもブチ込まなくては。

弱気は最大の敵

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こういう作品に出会えると、ちょっとうれしい。

『球場ラヴァーズ』(石田敦子/少年画報社)

のっけから、津田のエピソードでなぜか涙があふれる。これはズルイなあと思いつつ、読み進める手が止まらない。野球好きなら、これは絶対にチェックすべきマンガですね。

広島ファンが主人公なので選手そのものはキャラとしては出てこない。作者自らが、プロ野球をテーマにマンガを描くことの難しさに触れているとおり、ドカベンやあぶさんの時代はとっくに昔のことで、いまどきは、例えばモーニングの『グラゼニ』みたいにまったくの架空のチームや選手とするか、あるいは正面切って、なにがしかの手続きをした上で描くしかないんだけど、おそらく相当困難なのだろう。本作も広島東洋カープからの協力はもらっているけれども、公式マンガではないとのこと。

また、広島ファンが主人公ではあるけれど、ネタになるのは広島だけとは限らない。個人的にとても好きなのが、昨年の日本シリーズ、ロッテvs中日の第6戦をバックに描かれるあるエピソード。次の最終戦への流れもステキです。浅尾きゅん☆

飯田橋の「れもん」にも行かなくちゃ!!

『つっぱしり元太郎』の佐伯くんがいいね!

http://www.j-comi.jp/book/comic/4331

電子書籍は話題になってる割には、どこもかしこも「システム」に囚われた状態で、今ひとつ(というか全然!?)盛り上がっていない。そんな中、「Jコミ」はいち早くその可能性を見いだし、即座に実行に移しており、評価も高いようです。

やっぱり、シンプルなニーズに対してシンプルに応えている、というのが大きいのだと思う。利権争いもない、料率でモメることもない、みんながハッピーなソリューションが実現できてるんですね。

そんなJコミさんで、『つっぱしり元太郎』が公開されました。いまや伝説的な野球マンガ。ネットオークションでも滅多に出回らず、あったとしても相当高い値段が付いていただけに、ファンとしては非常にありがたい。

自分もこども時代に断片的だけども読んでいて、義足のピッチャー・メガネくんの印象がとても強い。フォークボールが武器というのと、義足がゆえにフィールディングが問題で、そのカバーの方法をめぐるシーンも覚えてる。

Jコミでの公開後、改めて1巻から最終巻まで読み進めると、何と言ってもエースの佐伯くんがものすごいイイ味を出してるんですね。最初の方は……というか物語のほとんど最後までそのキャラを通すんだけど、最後の最後で、カタルシスというか、こう、ぶわーっと盛り上がるんですわ(なんのこっちゃ、わからんですよね)。このへんは、オトナになって読んだからだと思う。コドモゴコロには、また別の受け止め方があったんだろうな。

主人公の元太郎、そのライバルとも言えるエースの佐伯、その恋人で元太郎も心を寄せる島津玲子、元太郎が住み込みで働く新聞配達屋の娘・美夏ちゃん、元太郎のよき理解者でありチームメイトのメガネ。こうして見ると、構図的には「あしたのジョー」を思い起こします。じっさい、野球マンガなのに、主要なキャラはほぼ上に挙げたほかは、監督とか、まあここではネタバレになるので言えない人が少々いる程度。その他のチームメイトについては、ほとんど描写されていなくて、これは意図的なものを感じます。

野球というのは舞台装置であって、そこに交わる人々をこそ描こうとしたドラマなわけですね。

当時の野球マンガの王道といえば、やはりドカベン。里中や岩鬼、殿間といった魅力的なチームメイトとともに、不知火や雲竜など、これまた凄みのあるライバルキャラを打ち破り、勝利を手にしていくタイプの作風は、ある意味もっとも成功したスポーツ漫画のひな形とも言えます。

でも、『つっぱしり元太郎』はそういう路線ではなく、主要な登場人物の心情描写がメインと言ってもいい。これは、チームスポーツを描いた漫画として見ると異端だけれど、まさにそこが面白いわけです。監督との衝突とか、じつに新鮮。

70年代は、本当にパワー溢れる時代だったのだと実感。繰り返しますが、本当におすすめな作品です。

さて、どうでもいい話ではありますが、作中に完全な脇役というかチョイ役というか、チームメイトにこんな名前の人を発見。外野フライに倒れる1シーンだけ登場するんだけど、これって偶然?? だとしたら、なんかすげー!とか思ったり。

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写真集『峡谷に宿るもの』購入

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東北、というか八甲田の源流の写真を撮り続けている岩木登さんの写真集が出た。力作揃い。素晴らしいゴルジュの写真が表紙を飾っている。

今年は諸般の事情により沢に行けそうにないので、酒を飲みつつパラパラとページをめくっては、無聊を慰めている。

Amazonでも買えるけど、いま見たら取り寄せくさい。版元の東奥日報のサイトから申し込むのが早いかもしれない。
http://www.toonippo.co.jp/book/index.html

北東北の沢にココロを奪われて十数年になるが、やはり源流域を覆う豊かな森がその根源なんだと思う。ブナの巨木が水をたたえ、その水が流れとなって山をゆっくりと削る。そんな中に身を横たえるひとときは、とにかくたまらない。

何をすき好んで、そんなところに行くのかと、みんなに言われる。一生懸命説明しようとするけれど、たぶん言いたいこと、伝えたいことの10パーセントも分かってはもらえない。

アウトドアならオートキャンプやコテージ泊が快適で楽しい。家族みんなで行ける。山に入るなら、せめて夏山ジョイな縦走路、最近は生ビールが飲めて風呂にも入れるらしい。

うむ。オートキャンプも夏山ジョイも、その楽しさは知ってる。あれはいいものだ。雨露を避けて眠ることができるし、トシベなんていう凶暴な害虫に襲われることもない。なにより、しっかり管理されている。幕場も道も。文句を言うところなんか、ひとつもない。

沢の素晴らしさ、きっとそれは古い古い、リズム&ブルーズのようなものだ。

ヒットチャートを賑わす流行歌ではないし、みんなが知っていて好きな曲でもない。カラオケにも向いてない。そもそも、そんな曲を知ってる人なんて、ほんのわずかだ。

誤解してほしくはないけれど、流行歌だって好きだし、ミスチルやくるりは天才だと思ってる。最近だと、なでしこのおかげでRADWINPSだって聴いてる。本当だよ。アルバムを買ったらBUMPのパクリかと思ったけれど。

だから、オートキャンプもそのうちやってみようと思ってる。いや、どうかな……。ていうか、クルマを買うところから始めないとな。

いかん、酔っぱらってきた。こんなときはオーティスだ。YouTubeで検索。” I’ve Got Dreams to Remember”を発見。切ない歌詞だ。じんとくる。

もし佐々木希がババヘラアイスの売り子だったら

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ババヘラアイスに初めて遭遇したのは、角館だったと思う。さっぱりとしていて、言ってみれば「昔のアイスの味」のような。

そんなババヘラアイスのすべてがマンガと文章でわかる本、『ババヘラ伝説』を購入。一気呵成に読了した。感想は、素晴らしいの一語に尽きる。私が大好きな、秋田の無明舎出版の本で、装丁はちょっとシンプルだけど、内容は濃ゆい。名著である。

・雪の日もババヘラアイスが売られるのはなぜか
・なぜ辺鄙な場所でわざわざ売っているのか
・ヘラを使うのはなぜか
・そもそも「ババ」ばかりなのはなぜか

うーん。いろいろ腑に落ちた。そしていま、モーレツにババヘラアイスを食べたくて仕方がない。

アイスの売り子が佐々木希である可能性は何%あるのかについて思索に耽りつつ、「こまち」に飛び乗りたいものである。秋田は最高だ。

なお、この本はAmazonなんかでも買えるけど、できれば版元から直接どうぞ。地方出版の鑑。地元に根ざした、本当に素晴らしい出版社なのだ。やはり北東北三県は、文化の成熟度が高いんだと思う。社長の安倍さんの著作やコラムなんかも異常にレベルが高く、いちファンとして応援しております。

無明舎出版
http://www.mumyosha.co.jp/

またもや『渓流』がとっくに出ていた件

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夏号は、なんとDVDが付録に付いてます。すげー。テンカラの巻き方。うーん、やはりやらねばなるまいか。

とりあえずナナメ読みしかしてないけど、UltraLightの特集についてはあんまり参考にはならないかな。むしろ、高桑さんの記事で「遡行中に釣ったイワナはすぐ切り身にして、ビニール袋でヅケにする」というのが個人的なヒット。いずれ試してみたい。

というわけで、太公望の皆様は書店にてゲットしてください。

『アリンコ球団』がネットで読めるだなんて、の巻

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このセリフにときめかない男子はいないでしょう。アキコ、かわええなぁ。ウエストされても飛びついて送りバントを決めるあたり、そこいらのプロ選手にも見習ってほしいものです。

そんなわけで昨夜、吉森みき男センセイの『アリンコ球団』がJコミで公開されました。40代のオッサン歓喜です。
http://www.j-comi.jp/book/comic/3831

Jコミについてよく分からないという方は、こちらの記事からどうぞ。

浅草橋のおでん屋で飲んだのが4月23日。そのときヘベレケになって、dai君に「こんなのがあるんだぜ〜」と話をしたのが始まり。その後、facebookで概要を伝えてからが、早かった。

作品リストや原稿の保管状況、果ては法務関係の確認など、とても大変な作業をひとつずつ丁寧にこなし、気付いたら2ヶ月もたたないうちに公開ですよ。いやー、すごいなあ。もちろん、俺はなんもしとらんのだけどw

『小学2年生』の1976年2月号から連載スタートっていうことなんで、1968年生まれのワタクシとしては、ドンピシャでリアルタイム世代なわけです。当時の学年誌って連載は引き継がれるので、4月からは連載自体が『小学3年生』に移って、『小学4年生』の7月号まで続いた作品です。

いずれ短編や長編すべての作品が、何らかの形で読めるようになるといいなあ。

Jコミ自体については、色んなことを言う人がいて、絶版作品とはいえ、作家さんにとってこの形態がいいのかどうかは、正直なんとも言えない。そそのかしてしまった手前、思うことはいっぱいあるけど、日本の電子書籍市場は、まだハッキリ言ってカオスだ。配信大手のラインに乗せるというのもひとつの方法ではあったかもしれないが、これはこれで「アリ」だと思うわけです。アリンコ球団だけに。

だって、読みたくても読む手段がなくなってしまった作品に再び出会うことができたというのは、明らかな事実だしね。

吉森センセイも「よくわからんけど、やっちゃってやっちゃって!」という豪放磊落な方なので、いまこの時代に作品がどんな形であれ公開され、少なからず反響があるということは喜んでいただけたのではないかと勝手に推察する。

売れ線の、メジャーな作家さんたちだけが日本のマンガを支えてきたわけではないし、70年代なんかは、知名度は低くてもおもしろい作品はいっぱいある。そういった作品に、もっともっと光が当たる時代になるといいなあ。

『ネオ・ボーダー』連載スタート!

2週間前と同じく、駅の売店でアクションを購入し、構内のドトールへ。そそくさと席について、さっそくページを開きます。

『ネオ・ボーダー』は地味目なグラビアの次、巻頭カラーでの掲載。

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うううううううう、こ、これは……!!!

時代設定もさることながら、思い切りのよさが最高にシビレます。素晴らしい挑戦。読んでる間、顔はずうっとニヤニヤしていたかもしれん。

それにしても作画のたなか亜希夫センセイは、いろんな連載を経て、線が細かくなりましたよね。

ええと、これ以上は内容には触れません。ぜひ手に取ってお確かめください。

『ネオ・ボーダー』の舞台は平安時代!?

アクション発売日。出勤前に駅スタンドで購入し、最終ページから開くと……。

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へ、平安時代末期??

物語は時代の転換点…
…平安時代末期。
蜂須賀が、ルーズに
カッコ悪く登場して…
…やがて、例のごとく。

な、なるほどそうきたか〜。これは予想のナナメ上どころか、完全に想定外。木村はきっと、農民役なんでしょうね!

ボーダーといえばいくつかのキーワードがあって、例えばR&Bとか、アチラ側とか。そのへんが平安時代末期という設定でどう生かされるのか、あるいは生かされないのか。

ともあれ、あと2週間である。

蜂須賀が帰ってくる!

発売日よりずっと遅れて、週刊漫画アクションを購入。相変わらずエロ&グルメが多勢を占める誌面をバラバラとめくっていた。

で、最後のほうのページにこの告知。『ネオ・ボーダー』だって!? おいおいおい。どういうことだよ、ムチャクチャ嬉しいじゃないか!

相も変わらずインターネットという衣を得たマーケティングが世の中を支配し、キヨシローのいない21世紀を蜂須賀はどのように過ごしているのか。狩撫麻礼じゃなくて、ひじかた憂峰名義ってのも興味深いところだけど、このコンビによる『リバースエッジ 大川端探偵社』がとてもイイだけに、期待も高まるというもの。

楽しみだなあ。

星新一『ショートショート1001』が届いた

ちょっと早めのクリスマスプレゼントとして。

夢中になって読んだ、あの頃が懐かしい。

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えと、とりあえず装丁がハンパないっす。三冊セットだとズッシリ。いや、一冊だけでも相当重い。二段組で1600ページとか。寝る前にちょっとずつ読み進めたとして、読破するのに何年かかるやら……。

初めて読んだのは、たぶん小学生だったかな。図書館にあったのか、それとも学級文庫か。高校くらいまではたまに手に取ったりしてたはずなんだけど、実家に帰れば残ってるかも。

星新一は、いくつかココロに残る話がある。それだけを探そうと思っても無理だし(笑)、そもそもこの紙の塊を前にするとそんなつもりは微塵も湧いてこない。じっくり読み進めていくうちに、「ああ、これだこれだ」と思いがけず再会するのが楽しみです。そんな意味でも、思い切って買ってみてよかった。

なお有名な話だが、母方の祖母が、森鴎外の妹の小金井喜美子。これも血筋ですねぇ。

小林まこと版『沓掛時次郎』

長谷川伸の作品は、もっと評価されてもいいんじゃないかと昔から思っています。

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ともあれ、『関の弥太っぺ』に続き、小林まことがイブニングで連載していた『沓掛時次郎』の単行本が出ました。本誌での最終回では、菅原文太と対談なんぞしてはしゃいでおりましたが、それも収録されています。

ある程度連載を追ってはいたもののヌケもあったりして、通して読むとやっぱイイなぁ〜。因果あり、手にかけてしまった男の妻子をその後も見守る時次郎。義理と人情ってのは、やっぱこーいうものですよ、ええ。流れそうになる涙を必死に堪えること数多。

ストーリーの良さはもちろんですが、この作品の価値を高めているのは、そこだけに拠るものではないですね。やはり構成力、演出力が素晴らしい。弥太っぺもそうだったけれど、小林まことというマンガ家の表現力には凄まじいものがあることを再発見。子供の頃に読んだ『一二の三四郎』とかのバタバタなイメージが強かったけど、まさに円熟の極み。

夫を殺した相手、いっぽう殺した男の女房、この2人の絶妙な距離感がたまりません。物語終盤の、最も盛り上がる部分でのやり取りは、凡百の愛の語らいなぞ簡単に吹っ飛ぶ出来。このへんの、作者なりの消化の仕方っていうのが、映画とはまた違った味わいです。市川雷蔵版しか知らないけれど……(あのラストは良かったにゃ〜)。

あと、子役の太郎吉。自閉症児として描かれており、その騒々しさは連載で読んでいた頃は浮き気味、スベり気味かなあ……とも危惧しておりました。ところが通して読むと、なるほど必然性がある。むしろ作品の芯と言ってもいい。

作者自身、最終回が掲載されたイブニングの作者コメントで、実子が自閉症であったことを打ち明けてらっしゃるが、ちょっと気になって調べてみたら、この太郎吉は『格闘探偵団〜走れ!タッ君』という作品のタッ君なんだね。取り寄せてみようっと。

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なお、例によってシリーズ全体の伏線もぬかりありません。次回連載作は『一本刀土俵入』だそうで、読者をじらしつつ、この大いなる試みは続くようです。

『俺節』復刻版〜震えて読め!

土田世紀が、好きです。

初めて読んだのは、アフタヌーンだったか。東北に住む中古車販売業の青年を主人公にした「永ちゃん」という作品を連載していて、やたらとインパクトが強かったのを覚えている。

このところ、過去の名作の復刻版をよく見かけるけど、この『定本 俺節』もその流れか。太田出版、エンターブレインに負けず劣らず、いいところに目を付けてくれました。

表紙カバーは銀の地にスミとホワイト。題字はもちろん北島三郎。ひときわの存在感。写真だと、反射しまくってなんだかよくわからんけれど。

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本作は、講談社での仕事で自分の才能に限界を感じていたところ、小学館にナニされて連載を始めることになったとか、巻末のメールインタビューに書いてあったけど、なるほどそんな経緯があったのか。

初期の作品だからか、ところどころ作画も荒いけど、逆にそれがいい。スピリッツで第一話を読んだときは大学生で、世の中はイカ天のバンドブームだった。そんな中、空気読まずに演歌をテーマに持ってくるってところが心意気。

改めてじっくり読み返してみると、実在する歌の歌詞や大ゴマが、随所に効果的に使われてる。タイトルも、毎回面白かったんだな。「俺のスペルマ150屯」とか。元ネタは、もちろん小林旭。う〜ん、ダイナマイト!

好きなエピソードは、やっぱり第一話と、あとヤクザの鉄砲玉を見送るシーン。まさしく演歌パワー。グッとくるぜ震えるぜ。

あと主人公・コージが、ストリッパーのフィリピーナ、テレサを抱くところね。相棒・オキナワのモノローグに深く、多いに、何度も頷く。

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じつは物語の中盤以降は、あんまり記憶がない。山小屋でバイト始めたりして、スピリッツ読むのやめてたからかなあ。まあ、この上巻に続いて12月に中巻、来年1月に下巻が出るそうなので、楽しみに待つことにしよう。

風太郎節よ永遠に

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最近の我が家は、にわかに山田風太郎ブームです。やっぱ、いいよこのひと。最高。忍法帖シリーズ、全部揃えたくなるわ。魔界転生とかも、ブッ飛んでたしなあ。

家人も、くノ一忍法帖を読んでゲラゲラ笑っていました。エロ路線といえば、まあ確かにエロなんだけどね。日本で初めてのQuickTimeムービーはくノ一忍法帖だったとか、どうでもいい話もありました。

風太郎先生は、聖蹟桜ヶ丘に住んでたんだよねえ。『あと千回の晩飯』を読みながらしみじみ。

来年は、没後10年なんだなあ。もっと再評価されてもいいと思うなあ。

ジミー・コリガン〜世界で一番賢い子供

もしいま、自由に使える1万円が財布の中にあるのなら……。

もちろんそれで、美味い食い物や酒を楽しむこともできるし、ちょっとした洋服を買うことだってできる。ユニクロに行けば、上から下まで全部揃う。そもそも、無理に使わなくたっていいじゃないかと仰る人も多いだろう。それはそれで、ごもっともだ。

だが、もしその使い道を委ねてもらえるのなら、いま私がお勧めするのは『ジミー・コリガン』全巻を揃えることだ。アメコミだからという理由で、この作品を読まないだなんてもったいなさすぎる。

どんなストーリーなのか、版元のプレスポップの紹介ページから一部引用してみましょう。

「ジミー・コリガン」の軸となるのは、現代に生きる孤独で感情の欠落した36歳の男ジミーが生まれてから一度も顔を見た事のない父親に会いに行く旅の物語である。しかし、直線的な語り口でなく、1890年代のシカゴから1980年代のミシガンまで時間と時空を超えた複数の物語が互いに絡み合って同時に展開して行くスタイルを取っている。

 
まあ、なんのこっちゃ分からんですよね。

正直言って、この物語を読み進めるのは、最初は苦痛を感じるでしょう。じっさい、相当な忍耐を必要とします。

コマの流れが(意図的に)分かりにくくなっているのもそうですが、妄想と現実が入り乱れ、いわゆるト書きもほとんどない。主人公のほかに、その父親、祖父、曾祖父といった人物が行ったり来たりして、相関関係をつかみづらい等々。

私の場合、どうにかコマを追い、ネームを読んで、最後までこぎ着けはしたものの、結局その後、3回は読み直しました。そして、紛れもなく傑作であると確信し、このエントリを書いているわけです。

なんというかね、この衝動は、初めてプログレッシブ・ロックに触れたときと似た感覚があるんですよ。特に、ピンク・フロイドの「ザ・ウォール」。あの2枚組を、歌詞カードを握りしめながら聴き入った感じ。さらには、アラン・パーカーが監督した映画版を観たときの感じ。

絵柄や登場人物の表面的なところだけを見てしまうと、どこがどう面白いのか理解に苦しむ人が多いと思うのですが、読み終わってみれば壮絶かつ感動的なクロニクル、そんな物語です。

全3巻。Amazonあたりでバラ売りでも買えますが、お願いだから1巻だけで評価しないでいただきたい。ここはひとつ、版元のプレスポップさんで豪華ケースつきの3巻セットをお勧めします。規模としては小さな版元さんですが、こういう誠実な仕事をしてくれるところがビジネスとして成り立ってくれないと、日本の出版業界に未来はない。

ちなみに「高価すぎる」と思うかもしれないけれど、翻訳モノであること、そもそも実売部数がそんなに見込めないこと、さらには装丁がムチャクチャ豪華なこともあるので、目をつぶっていただければと。

いやでも、この装丁はすごいですよ。上製の布張りで箔押し、エンボスと、昨今のお寒い日本の出版業界では考えられない豪華仕様です。

秋の夜長、ウイスキーでも嘗めながら、もう一度読み返してみようっと。

あ、もし酔狂な方がいて、ほんとうにジミー・コリガンを買ってみた!というのなら、細馬宏通という方が公開しているPDFファイル、「ジミー・コリガンの余白に(Marginal Note for Jimmy)」はぜひ目を通してみるといいです。

この細馬さん、何冊か本を出してらっしゃいますが、作家という感じでもなく、なんだか自由人なにおい。世の中には、面白い人がいっぱいいるなあ!

復刻版が出てたのか……『利平さんとこのおばあちゃん』

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大好きなマンガです。

中身はなんてことない、田舎に暮らすばあちゃんの日常。だがそれが、じつに佳いのですね。

とりわけ、初回のエピソード。これはもう、高校生の頃、初めて読んだとき大変なことになったのをよく覚えている(泣けて泣けて)。

当時はバブル真っ盛り。世の中全体が浮かれていた中、こんな素朴すぎるテーマの作品は逆に目新しかった。

残念ながら世間での評価は芳しいものではなく、単行本が2冊出た後は、おそらくは絶版になっていたはず。茶色いクラフト紙の装丁からは、作品同様の温もりが感じられた。

それが、いつの間にか復刻されていたとは! しかも、またしてもエンブレ。単行本未収録作も網羅されているのがウレシイ。

エンターブレインのコミック部隊については、妙なシンパシーを感じている。新井英樹に対する力の入れっぷりでもよく分かるのだが、この作品のような、ある意味、大手出版社に見放された(?)味わいのある良作を復刻してくれるあたり、じつに目の付けどころがいい。

ググったらわかったのだが、作者の法月理栄さんは、静岡県島田市出身(在住?)らしい。どうりで、作中の方言に親近感がわくわけだ。なんとなく、長野県南部の伊那とか飯田あたりをイメージしてたんだけどなー。

島田といえば大井川。果たして利平じいちゃんが通っていた温泉とは、寸又峡か川根温泉か。

私は死んだばあちゃんには、父方も母方にも、よく怒られもしたが本当にかわいがってもらった。昔の人の説教というのは、いちいち説得力があるのだよね。いまだによく覚えている。

そんな、年寄りに思い入れのある人には、ぜひ読んで頂きたい作品です(とはいえ、下のアマゾンのリンクだと上巻は品切れなんだよね、増刷かからないのかな……)。

なお静岡のゆるキャラ、ふじっぴーも法月さんのデザインらしい。こ、これは知らなかった……。

映画『悪人』と『事件屋稼業』

映画『悪人』がなかなかよかった。深津絵里がモントリオールの世界映画祭で最優秀女優賞を受賞したそうだが、実際には脇を固める面々のほうが印象的だった。

特に柄本明と樹木希林。あと宮崎美子がグッと来ます。おすすめ。

善人ヅラした悪いヤツ、被害者ヅラした加害者等々、いまの世はまことに複雑だ。ついつい、『事件屋稼業』というマンガを思い出してしまった。

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原作・関川夏央、画・谷口ジローという奇跡的デュオによる名作シリーズ。上の写真は第5巻。ビルからの立ち退きを強要されている中華料理屋が、ゴネ得どころか欲の皮を突っ張らせるエピソード。地上げ屋のモノローグにかぶさる、日活時代の裕次郎というコマ。

探偵とは職業ではない
生き方だ

きわめて危険で
同時に美しい
誰もが軽蔑しつつ
うらやむ生き方だ

たとえていうなら
銃口に止まった蝶のようなものだ


主人公・深町丈太郎は1948年生まれ。存命であれば、62歳。果たして彼は携帯電話を持ち、インターネットに支配された21世紀を生きているのだろうか。いつか、続編を期待したいのだが。

戦争と戦争をつなぐ線

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高校時代、歴史の授業は日本史も世界史も、一切受けることがなかった。

ずうっと理系クラスだったとはいえ、今にして思えばこれは相当偏ったカリキュラムだ。まあ、地方にありがちなことなのかもしれないけれど。

そんなわけで、歴史にはあまり馴染みがない。そもそも、年表を覚えるだけの学問だと思っていたので、基本的に努力というものの価値を軽んじていた当時の私は、どのみち歴史の授業があったところで、退屈なものとしか思わなかったと思う。

最近はゆとりとか、その反動とかもあるらしいが、教育の現場はどうなのだろね。相変わらず、○○○○年に○○○○が起きた的なことを念仏のように唱えているのだろうか。

とまあ、かくも歴史という学問について間違った認識を持ったまま大きくなった私のような人間には、この本はとても面白く読むことができた。

単純に日清戦争が起きて、次に日露戦争が起きて、さらに第一次世界大戦があって……といったブツ切れ状態だったものが、なるほどこのような大きな流れだったのねと、すごくわかりやすく解説してくれている。

もちろん、あらゆる出来事を網羅しているわけではないので、端折った部分も多いと思うけれど、日清から第二次大戦までが、ツルッと繋がるんですよ。膝、叩きまくりです。

とりわけ、偉い人たちの話だけではなく、市井の人々の感情や世論といってものにまで言及していて、なんというかリアリティーがある。日露戦争後の一般市民はそのように考えていた人が多かったのだなあ、とか。

東大のセンセイが実在の中高生とやり取りする、という構成で、まあ生徒さんたちが聡明すぎる気もするが、こういう講義だったら受けてみたかったなあ〜としみじみ思った。

話題になったのは1年以上前のはずなんで、何を今更と笑われるかもしれませんが、いや〜、歴史って面白いんですねぇ。

出版業界人必見動画 "The Future of Publishing"

This is the end of Publishing
and
books are dead and boring
no longer can it be said that
we like to read


このようなショッキングなナレーションで始まる動画が話題を呼んでいる。無機質な、text-to-speechで淡々と読み上げられる文章が、出版業界で働く現場の人々の胸に、グサグサ刺さる。

私のお気に入りは、この部分。

what important for me is
what Lady Gaga is wearing
and i don’t really care all that much
what Gandhi did last century


興味があるのは、レディー・ガガが何着てるかってこと。ガンジーが20世紀に何したとか関係ねーし、みたいな。

your market is
dying
don’t think that it’s all
going to survive


キツイっすね〜。でも胸熱。素晴らしい動画。なんのことやらワケがわからんというお方は、ぜひYouTubeを。しかも最後まで見てみて。何かの賞を取ったCMみたいですね。



2ちゃんねるなんかでは縦読み文化があるけれど、こーいうスタイルも面白いなあ。職人芸だわ。

おまけ。

シメは冷麺、食道園

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盛岡・八幡平紀行2010〜その5

初日に盛岡駅のさわや書店で、タウン誌のほかに購入したのは『盛岡冷麺物語』という新書だった。これも、地元出版社の発行。

著者は、朝日の記者。1993年に朝日新聞岩手版に連載された記事をもとにしている。何の気なしに手に取って目次をパラパラしてみたら、相当内容が濃ゆいのですよ。

盛岡冷麺については、ネットを検索してみるとさまざまな情報がすぐ手に入るが、けっこう出鱈目なものも多い。例えば、盛岡は平壌と緯度が同じなので冷麺が流行ったとかいう説。ちょっと考えれば、あり得ないわな。

同じく、在日朝鮮人が多かったからという話もある。だったら大阪はどうなのだ。浜松は。なぜ盛岡なのだ、と。

結局は、人なのだよね。盛岡冷麺は、よく知られているように食道園という店で始まった。その創始者が、青木輝人という方だ。すでに故人である。

  • 在日一世で戦前に威興(ハムン、現北朝鮮)から日本にやってきた。
  • 強制連行ではなく留学が目的だった、インテリ系。
  • 父親の知人を頼って盛岡に。
  • 子供の頃、威興で食べた冷麺を再現したのが盛岡冷麺の原型。
  • 他の多くの在日朝鮮人とは異なり、日本に帰化し国籍を取得している。
  • 本書は「ぴょんぴょん舎」の店主・邊龍雄(ピョン・ヨンウン)が、盛岡の冷麺のルーツを知りたいと食道園の青木に会いに行くところから始まる。おもしろそうでしょ? さらに綿密な取材を重ねるうちに、朝鮮半島のそれとは全く異なる盛岡冷麺の謎が、薄皮をはぐように解き明かされていく。ある意味痛快でもある。

  • 盛岡冷麺はなぜソバ粉が入っていないのか
  • 盛岡冷麺はなぜ辛いのか
  • 盛岡には看板に平壌冷麺と書いてある店が多いがなぜか
  • 盛岡冷麺はいつから盛岡冷麺と呼ばれるようになったのか
  • こういったことに興味がある方は、ぜひ手に取って読んでみてください。

    というわけで、最後の晩餐は敬意を表して食道園。暖簾や看板には、「平壌冷麺」と大きく書かれている。矜持を感じる。

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    冷麺は、辛みは別にしてもらった。もちろん完食。美味い。

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    翌朝帰京。次回は短角牛ステーキもだが、ぜひ福田パンを極めたいものだ。

    地方出版に光あり

    盛岡・八幡平紀行2010〜その1

    アンタばっかり夏をエンジョイしやがって、ズルイ! と家人に迫られた。じゃあどこへでも連れてってやるから行きたいところを言い給え、と切り返したところでノーアイデアだったりするもんだから、タチが悪い。

    海と山、北と南でどちらが良いのだと問えば、どちらかというと山、できれば涼しいところと。

    じゃあ東北しかねーじゃん。あれ?

    そんなわけで、急遽盛岡へ。2泊の予定で、松川温泉と駅前の東横インを予約。もちろん、レンタカーも手配。

    温泉つかって、美味いモンでも食えればいいだろ的にノホホンと考えていたところ、盛岡駅に着いてすぐ、駅ビルの書店で足が止まり、釘付けになった。

    妙に棚作りが面白いなあと思ってよくよく見たら、「さわや書店」さんじゃないですか、ココ。盛岡にはもう何十回と来訪していたくせに、これまでまったく気がつかなかった。不覚。

    さわや書店といえば、外山滋比古の『思考の整理学』。この20年以上も前に出た本が、近年バカ売れしてるんだけど、そのきっかけになったのが、コチラのPOPだったというのは出版業界ではわりと有名な話なのですね。

    詳しくは版元のちくま書房のページに。ここで登場している松本さんのほかに本店の伊藤店長という方も有名で、読書量がハンパないそうだ。朝4時起床で1冊読み終えてから出社、ひと月で30〜60冊は読むという。変態。

    上にそんな人がいるせいか、コチラでは書店員みんな本をよく読むらしく、それが手作りのPOPにも滲み出ていた。がんばってるなー。

    通路側の一番目立つところには、地元本コーナー。ここの、タウン誌のクォリティーの高さには驚愕である。盛岡・秋田・青森の北東北三県をエリアにした「rakra」、そして岩手・盛岡中心の「てくり」は、特にココロに刺さった。

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    タウン誌といったらちょっとした記事に、あとは広告も兼ねた飲食店などショップ紹介で埋め尽くされ、スカスカしたイメージだったが、どちらもしっかりとした取材がベースの特集など、読み物が充実している。なによりデザインがいい。

    秋田の無明舎出版も大好きな版元さんだけど、アタクシ、こーいうのに弱いんです。志の高い編集者の姿が想像される。思わず適当に2〜3冊ずつバックナンバーを見繕って購入。

    東京なんかにいなくっても、さらにはインターネットやら電子書籍やら関係なく、良質な出版活動は可能なのだなあ〜と当たり前のことを再認識した。それを受け止められる、盛岡をはじめとした北東北の文化度の高さも要因であろう。すばらしい土壌。

    帰京後さらにじっくり読み、その感がますます強まった。定期購読しようかどうか悩んでいます。

    さわや書店ではもう一冊、非常に素晴らしい本を手にすることができたのだが、それはまた、後日のエントリーで。テヘ。

    これはいい本! 『ウォーターウォーキング』

    ありそうでなかった、こんなガイドブックが欲しかったと長年思っていたものが出た。『ウォーターウォーキング』という本だ。

    沢登りは面白い。面白いからこそ毎年続けているのだが、今年みたいに猛暑が続くと、お手軽にクルマでも借りてピュピュッと出かけて、ジャブジャブときれいな水で遊んで夕方には帰って来れるようなプランを立てたくなる。

    もっといえば、女性や子供などズブの素人を連れて行ってもソコソコ大丈夫な場所ってないものだろかと思っていたのだ。

    さすがに本書も「女性や子供などズブの素人を連れて行く」という目線で書かれているわけではないが、発行元の白山書房のサイトでは、「丹沢の表尾根を登ることが出来る体力とバランスがあれば、WWは楽しめます。」とある。

    経験者がいて、足回りさえしっかり固めれば、グレードの低い沢なんかは問題ないだろう。

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    そもそも、ウォーターウォーキングとはなにかという点については、もう少し説明が必要かもしれない。沢登りのような本格的なものではなく、水と戯れることに主眼を置き、無理して稜線にツメたりはしない、日帰り中心のヌルいもの、ということかな。詳しくは、amazonの中見検索や発行元のサイトをご覧ください。

    中高年登山ブームの影響は否定できないが、まあ尾根歩きや縦走ばっかりしてた人で、沢には行ってみたいけれどちょっと怖いとか、そのような感じの方々を対象にしてるんだろうなあ。

    エリアは定番の丹沢や奥多摩・奥秩父に限らず、房総も網羅されている。ただ、房総の沢はいずれも「ヒルがいっぱいいるよ〜」と書かれていたが。

    思えば大昔、ズブッズブの素人を無理やり西沢渓谷に連れて行き、東沢を釜の沢出合まで遡行させたことがある。もちろん、浮き輪持参。けっこう楽しんでたナー(遠い目)。

    願わくば、幕営適地なんかも書いてあるとよかったけど、それは多くを望みすぎか。

    マタギ三部作

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    3作目となる、「氷結の森」を読了。作者は熊谷達也。

    解説にもあるが、なんだか船戸与一っぽいね。これはこれで好きな世界だけど、1作目のあのテイストを気に入っているファンとしては複雑なところかもしれない。amazonのレビューなんかを見ても、そのような評価が多いし。

    ただまあ、銃のスペシャリストといえば近代日本ではマタギなわけで。実際、日露戦争だの西南戦争なんかでは、無類の強さを誇ったというのは本当らしい。

    現代人にとっては、マタギという存在はもはやファンタジーなのだろうね……。「そっち」に落とし込んだ方がわかりやすいというか……。

    つい勢いで1作目を手に取ってしまい、即読了。読み出すと止まらないんだな、これが。肘折温泉行きてぇ〜。

    WiFi64にしました

    音楽とかをガンガン入れるわけでもないので32でいいかとも思ったのだが、手元にあるコンテンツの総量をひとしきり考えたところ、最悪の事態とは、それを管理するのがメンドくさくなることだと気づいた。そんで64である。アホだ。

    3Gはどうするか最後まで迷ったのだが、ソフトバンクでSIM Lockだなんてどうよ? ということで却下。どうせ今年はiPhoneも機種変することになるので、通信系はそっちでいいだろう。

    さて、あとは手塚治虫全集を「自炊」して……と。誰かやってくんないかなあ!

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    ところで手塚治虫といえば「火の鳥」。中でも「太陽編」が好き。火の鳥というシリーズ自体、古代と未来を振り子のようにして現代へと紡がれているわけだけど、太陽編は作品自体が壬申の乱の時代と21世紀を行き来している。

    物語は白村江の戦いに始まって、壬申の乱自体を、日本古来の八百万の神vs大陸からやってきた仏教、という形になぞらえるあたり、スケールも大きく、非常に読み応えがあります。

    いっぽうで近未来と設定された世界では「光」という宗教が世界を支配しており、それに与しない人々は「シャドー」として地下に暮らしている。ゴキブリの唐揚げなんかを日常的に食べたり。

    まあ、物語の解説はどうでもいいんですが、その近未来で、主人公は「光」による理不尽な支配状態を打破すべく、その総本山に乗り込み、テロを行うんですよねえ。

    私は最近のAppleのことを考えるとき、よくこの「火の鳥・太陽編」のことを思い出します。

    おっと、Appleがマーケットにおいて支配者的存在になり、すっかりevilと化したとか、そんな話にしたいわけではありません(笑)。

    ただまあ、世の中全体という大きな枠も、あるいは数人による小さなコミュニティーでも、支配構造の変革というのは常に起きりうるんだけど、ざっと歴史を見渡すと、意外と人間って同じことを繰り返すようになっとるのですね。

    弱くて虐げられた者が、大きな力を持つ者に立ち向かい、勝利を手にする。そこにカタルシスは生まれ、大抵の物語はそこでハッピーエンドを迎える。

    平凡なフィクションの世界でなら、それでもいいでしょう。しかし、現実世界では物語はとどまることなく続くわけで。あ、もちろん火の鳥・太陽編は、凡百のごとき終わり方ではなく、そのあたりキッチリと描かれています。

    つくづく、火の鳥シリーズは完結してもらいたかった……。

    芋虫とキャタピラー

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    寺島しのぶが銀熊受賞したとかいう話、当初スルーしてたんですが、作品紹介をチラッと読んだら「あれ?これは……」と。やっぱり、乱歩の芋虫じゃないですか。

    いやー、アレを映画化するとは勇気があるというか、さすがはピンクの黒澤・若松孝二。『われに撃つ用意あり』はよかったなー。あさま山荘とかよりも好き。

    ところで、こうして話題になったことで、「じゃあ観てみるか」などといった軽いノリで映画館に行ってしまう若者とかが心配だw

    ちゃんと原作読んで予習してからにしてほしいものです。映画ではグロいところはマイルドになってる可能性もあるからなんとも言えんですが。国内での公開は夏とかなのかなこれ。

    あ……と、ここまで書いたところで公式サイト(というか若松孝二のサイト)を見たんだけれども、なんか『芋虫』はインスパイアされただけっぽいね。さすがにねえ、あの世界はそのまんま映像化はできんわな。反戦色が強い?うーん。

    というわけで、とりあえず丸尾末広が描いたマンガ版『芋虫』はとてもおすすめ。ある意味、本家を超えたのではなかろうか。この人が以前出した、『パノラマ島奇譚』も相当よかったけれど、『芋虫』はまさに芸術の域。エンターブレインは、なかなかいい仕事するなあ。

    トラウマになっても知らんけれども。

    Comfortably Numb

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    なんか体調が悪いなーと思い、酒も控えておったのですが、熱が出始めてそのまま延々と一週間。38度〜40度くらいをいったりきたりで、これはインフルエンザではないかと医者に行くも反応は陰性。

    聞くところによるとインフルエンザってのは発症してからしばらく経たないと検査でひっかからないとかいう話もあるのですが、ほぼ寝たきりで一週間。家人も熱を出して、二人してゼリーやらプリンやらでカロリーを維持しつつ、アイスノンを奪い合い、世間様とは隔離された状態でしばらく過ごしました。

    折しも冬季五輪やらがテレビを賑わしておったようですが、とてもそんな気分ではなく、久しぶりにひどい寝込み方をしてしまいました。

    年度末のこの時期、一週間も臥せっておりますと、社会復帰したらしたでとんでもなく仕事が溜まってしまいます。

    ヨボヨボと出社すると、文字通り机の上には山積みになった書類の山。よくマンガとかで見かけますが、まさにあーいう状態ってのはリアルで起こりうるものなのだなと、ひとつ勉強になりました。

    ようやく、ペースが落ち着いてきたところ。ホッと一息であります。

    いろいろblogに書こうと思ってたネタはあったのですが、短くまとめます。

    The Crimson Jazz Trioがすばらしい。今更気づいたんだけど、この一週間で50回以上聴いてる。宮殿の40周年記念大BOXを買うべきか買わざるべきか、ちゃんと再生できるハードウェアはないんだけど……。

    小林まことの長谷川伸原作連載がようやくイブニングで始まった。瞼の母かと思ったら、なんと沓掛時次郎じゃありませんか。再びの入魂仕事に大きく期待。折しも、藤田まこと逝去。「当たりマエダのクラッカー」はリアルタイムではないけれど、子供の頃、必殺シリーズはいつも楽しみにしてた。合掌。