会社の近所に魚介系のラーメン屋があるんです。ある夜、会社帰りにどうしようもなく腹が減って「この際ラーメンでいいや」と、のれんをくぐりました。すると、いつもは食券制なのに、肝心の券売機が使えなくなってる。
おやじに声をかけると「夜は違う店なのでメニューみてオーダーしてくれ」とのこと。きょとんとして席につくと、確かにメニューが置いてある。
……なんだこれは。しばし悩んだ挙げ句、意を決して頼んだのが「偽郎油そば」なるモノ。偽郎? 偽郎ねぇ……なーんかイヤな予感がする。 待つこと数分後。
ドーン!
「よくかきまぜて食べてねー」
オ、オヤジ……。作るとこ見てたけど、あんたさっき、どんぶりにまず背脂ゴリゴリして、麺とタレをかけてから野菜を盛って、その上からさらに念入りに背脂ゴリゴリしてませんでしたか? 俺に死ねと?
ていうか、これって油そばですか? どちらかというと脂そばなんですけど、合ってますか? 文句言いながらも完食したけどさあ!
調べてみたら、普段は魚介系スープのラーメン作っとる店が、夜になると突如二郎インスパイア店になるらしい。そうですかそうですか。ちょっとトラップに引っかかった感じだなー。
味は、まあ二郎っぽいといえば二郎っぽい。ややマイルドかな? 美味いといえば美味いですな。世の中に、二郎インスパイアがいっぱいある中、あえて偽郎と名乗るところが奥ゆかしいかもね。若い頃だったら、そうとう気に入ったかもしれないけど、食後、胃もたれに苦しんだのはお約束。
二郎は、府中二郎* で小豚を完食できなかったことがあって、もう卒業したのに……。
※多摩地方では小金井/府中/野猿街道の二郎が御三家と言われます。