ムーンライダーズ 『アマチュアアカデミー』再発によせて

年末進行まっさかりなくせに、スケジュール表は忘年会でギッシリ。今週中にどこまで仕事を片づけられるかが、シアワセな年末年始を迎えるカギとなるだろう……なんて思ってる人、日本中でいっぱいいそうだなぁ。

こんなときは、音楽でも鳴らしてシコシコ働くに限るわけで。

ムーンライダーズ 『Amateur Academy(アマチュアアカデミー) ~20th Anniversary Edition~』

時代を先取りしすぎた、なんて言葉は陳腐だが、実際彼らはこのアルバムの前々作『マニア・マニエラ』が、あまりにも先鋭的すぎるとレコード会社に判断され、お蔵入りした前科があった。そんないざこざの後、レーベルも移籍して心機一転なタイミングでリリースされたのが、この『アマチュアアカデミー』だった。

だが、やはり当時(1984年)の日本では幅広い理解を得られず。絶望した(?)メンバーたちは、次作で楽曲のすべてが個人制作、ボーカルのみ鈴木慶一で共通という超個人的異色アルバム、『アニマル・インデックス』を産み落とすことになる。

かなり気合いが入っていたであろう『アマチュアアカデミー』のセールス失敗によって、いちリスナーとして見ていても、バンドは一時ギクシャクしたものになった気がした。実際、各自ソロ活動やプロデュース業にさらに熱心になったんじゃなかったかな(うろ覚え)。

今回出た20周年記念盤は2枚組の構成。Disc1はオリジナルのリマスターだ。Disc2は特典系で全7曲。BLDG(英語バージョン)、Goap(ライブ)、SEX(ライブ)、NO/OH(ライブ)、MIJ(シングルバージョン)、GYM(シングルバージョン)、HappyBirthday(完全未発表)が収録されている。この時期は慶一さんの喉もまだ若く、ライブでのクォリティーも高かったなぁ(最近は……)。

おそらく、ムーンライダーズのファンで投票をしても三本の指に入るであろうこの名アルバムが、長らく絶盤だったというのも信じがたい。オリジナル音源のCDは持ってたんだけど、特別版ってことで購入。改めて聴くと、今だからこそココロに刺さる言葉とメロディーだったりもする。

これまた陳腐かつ平板だが、ようやく時代が追いついたのか……って、ちがうな。時代はきっと、この不良中年バンドには永遠に追いつけないに違いない。そういや、新作がそろそろ出るとかいう噂もあるけど、どうなってるんだろう?

はちみつぱい 『センチメンタル通り』

ムーンライダーズというバンドの音に初めて触れたのは、高校生の頃……かな。たしか、懐かしきレンタルレコード(You & Iっていうチェーンね、これって全国展開してたのかな?)で借りた『Amateur Academy(アマチュアアカデミー)』という名盤。ガツンとやられて、それ以来ずーっと毒され続けている。

ムーンライダーズのどこがいいのかと言われると、答えに窮する。まったく、どこがいいんだろう(笑)。ボーカルの慶一さんは……ムチャクチャ歌がうまいわけでもないし、実際、このバンドが日本の音楽シーンで「売れた」ことなど、一度たりともないんじゃなかろうか。それこそ、トレンディードラマの主題歌でも手がければよかったのに。

曲がいいとか言っても、すこぶる平板なんだけど、ただ、彼らを語るうえでいくつかのキーワードはある。内省的であり、時にエキセントリックで退廃的、度肝を抜かれることもしばしば。「やられたなぁ」という爽快な敗北感を、何度も味わうことができるのが麻薬的なんだろうと、軽く自己分析。まぁ、あくまでも個人的な見解なんでこの程度で。

んで、そのムーンライダーズの前身バンド、はちみつぱい 『センチメンタル通り』を、ムーンライダーズ歴20年にして、初めて買った。

とにかく、音がいいです。これはビックリ。オリジナル音源を24bitリマスターしたってことなんだけど、この時代の音としては、ビックリするくらいクリアで迫力がある。アコギの音なんて、とても30年以上前の作品とは思えないほど。AACにエンコードしてもそれはハッキリしていて、時代的に同じ頃の、はっぴいえんど作品(リマスターされてないやつ)などと比べると特に明確だわ。

内容ですか? 少なくともここ数日、自分のiPodはこのアルバムばかり繰り返し再生してる。クドクドとは申しませんが1曲目の『塀の上で』だけで、もう金を払う価値はあったと確信したくらい。今頃になるまで聴かなかった自分を恥じ入りましたよ、えぇ。

思えば、軽薄な音楽を忌み嫌うようになって(軽快な音楽は好きですけど)、自分の人生は軸がちょっとずつズレてきたような気がする。そのきっかけとなったひとつのバンドがムーンライダーズであるのは間違いないわけで、死ぬまで頑張ってほしい。本人たちにはそんなつもりはないんだろうけど、日本の音楽シーンをアジテートし続けてほしいのでありますよ。