入院・手術ノ記

[入院〜手術前日]

入院したのは、手術の前日である。

自宅から、徒歩10分ほどの中規模な病院。コンビニにてティッシュやおやつを購入し、朝の10時に受付。

各種書類の提出や説明を聞き、個室に案内される頃にはもうお昼どきってことで、メシがでた。絵に描いたような病院メシである。なんかもっとこう、精のつくモンはないのだろうか。

入院中の患者を見渡すと、老人ばかり。看護師さん曰く、俺が最年少だそうだ。整形外科だからどうしてもお年寄り比率が高いんだろうし、食事もこんなもんでヨシとされているのだろう。おやつとして持ち込んだルマンドは、速攻でなくなりそうだ。

昼食後、浣腸しますね、とサラリと言われる。どうやら麻酔の関係で手術前には体の中をできるだけカラッポにするのだと…。いやあ、浣腸だなんていつ以来だろう?たぶん小学校低学年くらい? 晩飯後もパサパサ系。ルマンドがガッツリ減る。21時以降は飲食禁止。

[手術当日]

朝、血圧やら体温やら測り、点滴開始。水が飲めないのがツライが、点滴がポタポタ落ちるのを見ているとなんか喉の渇きが収まる。脳味噌がロジカルに納得してくれてるみたいだ。

手術は14時30分からと決定。それまで、点滴打ちながらひたすらボケーッとして過ごす。飲食できない中、連ドラの「ごちそうさん」を見ると切ない気分になる。

14時ころ、いよいよってんでストレッチャーに乗せられる。やや緊張。とはいえ、どうせ全身麻酔だから速攻で落とされて、目覚めた時にはすべて終わっているはず。

果たして、手術室について、なんか執刀医の皆さんが俺のMRIのデータみたいなの見ながらアレコレと話してて、天井の照明とかがイカニモな感じでおおーカッケーなぁなどとキョロキョロしてるうちに、看護師さんが、ホニャララ10ミリ入れまーすとか周囲にアナウンスしてて、それって麻酔のことですか?って聞こうと思ったらそこで記憶がプッツリ途切れる。

次の瞬間には、病室のベッドの上。ぼんやりした感じで周りに人が大勢いて喋ってて、自分の下半身に毛布なのか、やたらと布団を被せてるような感じで、確かに猛烈な寒気を感じるし、その一方で、パンツの後ろをグイッと下ろされ、明らかに座薬入れてます的な感触を肛門および直腸に感じつつ、なにかよからぬことでも起きたのかもしれないなぁ、などとボンヤリ考えていたら、痛みに耐えられなかったらナースコールしてね、ほらここにあるからねと、呼び出しボタンを左手に握らされ、あー我ながら握力が効かんなー、なんて思ってたら次の瞬間には病院の関係者は誰もいなくなってて、なぜか見舞いに来てたらしいカミサンが俺の顔を覗き込んでて、うわこいつ、会社早引きして来たんか、仕事ちゃんとせなあかんやろとか言おうと思ったのだが、自分でも呂律が回ってないのがわかるほどヘベレケ状態で、なんだかちょっと悔しい気分を感じつつも夢心地。

手術した右膝は猛烈な違和感というか、ビリビリした感じと、ズゥゥンとした重い痛みが断続的にあって、ピリピリのほうはそこから切開したんだろうなぁ的な傷の痛み。ズゥゥンは、まぁ、骨の中までいろいろいじくられたんだしなぁ的な。

そのうち、麻酔が切れてきたのかものすごく痛みが増してきた。いたたたたたたた、ということで、颯爽とナースコールをするわけだが、どうされましたか?と問うインターフォンに、痛いですう、という余りにも間抜けなやり取り。

すぐさま看護師さんがやってきて、肩にブスッと注射をしてくれた。今何時ですかと聞いたら夜9時半よ、と。

ええ、まだそんな時間なのかよ、飯はともかく水飲みたいんだけど、水飲みたいですぅってお願いしたら朝ごはんまでダメだって。ええええ。

あまりのショックに、そこで脳味噌が完全に覚醒。

体は依然として、強い悪寒がある。

だからなのか、やたらと体に布団がかかっていて重い。電気毛布もあるようだ。

点滴はわかるとして、両方の鼻の穴にもなんか管が入ってる。酸素なのかな。

おまけに、なんか股間に違和感がある。ってあああっ。いま気づいたけど、なにこの管!おれの、チンチンに突っ込まれてるこの管!あああああ!おしっこが自動的に吸い取られていくぅう!

全身チューブだらけ。注射でマシになったとはいえ、膝がクッソ痛い。ピリピリっときてズゥゥン、ピリピリっときてズゥゥンである。

ほんの少しでも体を動かすと、このピリズンが来る。

ところが寝返りとは言わないけど、ちょっとは体を動かさないと、褥瘡というか床擦れというか、背中から尻にかけてジンジンとそっち系の痛みというか気持ち悪さがあるのだ。手術中からずっとこの体勢だったしなあ。

ちょっとずつ体を動かさないと、背中と尻が痛い。で、動かすと膝が痛い。でも動かそうにも布団が重いのと、チューブが突っ込まれまくりでいかんともし難い。喉は絶望的に乾いてるし、麻酔の影響なのかすごく痛い。

少しウトウトすると、そのうち何らかの痛みで目が覚める。水が飲みたい。朝までの10時間、う・う・うぅと声にならない声をもらしながら、これを繰り返す。あまりにも時間の経過がのろく、iPhoneで仕事のメールをチェックし、いつもよりぶっきらぼうな返事をいっぱい書いた。

[手術翌日]

入院中の朝食時間は7時と聞いていたのに、10分過ぎても何も出てこなかったので、コールをして、とにかく水を飲ませてほしいと直訴。備え付けの冷蔵庫にペットボトルを入れておいたので取ってもらうが、寝たままでは飲めない。

手伝ってもらい、上体だけをどうにか起こす。病院のベッドなので、スイッチひとつで背面が上がるのはよいのだが、膝に激痛が走る。尻も痛いが膝には負ける。半泣きで、どうにか半身を起こし、ペットボトルにむしゃぶりついた。人心地つき、例によってパサパサなパン(朝はいつもパンだった)をモソモソと食べる。むかし、給食で出たような、袋入りのマーガリンとジャムが懐かしい。

この段階で、ようやっと精神的にも余裕が出てきたというか、まあ痛みにも慣れたっていうか、その痛み自体に、なんかホッとしたのですよね。

なぜかというと、これまで悩まされ続けた膝の痛みと、同じ場所と種類だったから。手術がうまく行ったかどうかはともかく、この病院の医者は、自分の痛みの原因に、おそらくはちゃんと辿り着いてくれた。

100%治るという保証はないということは、くどいほど説明を受けてはいたので、今後、また激しい運動をすれば痛みが出ることもあるかもしれない。悪化する可能性だってゼロではないだろう。

それでもまあ、思い切って手術を受けたのは失敗ではなかったという確信めいた予感(?)を、改めて感じた。結果はそのうち出るだろう。

水で薄めたようなコンソメスープをすすりながら、カミさんにメール。「バターサンドとかクリームサンドみたいなやつを買ってきてくれ。あと、ぷっちょみたいなグミ系もヨロシク」。

-完-

(気が向いたらリハビリ編を書きます)

「入院・手術ノ記」への5件のフィードバック

  1. 大変だったな。
    さぞや痛かったろう。
    いや、ホント同情するよ。

    でもね。

    その悶え苦しむさまを想像するにつけ
    ついつい笑ってしまったよ。
    「痛いですう」でそれは頂点に達した。

    リハビリがんば(説得力ねぇー)

  2. 手術オツカレサマデス。

    私も以前脛の開放骨折で1ヶ月ぐらい入院して手術した方の足を動かせず、1ヶ月あるけなかっただけで、筋肉が一気におちて、さらにかたまってしまい、足首を曲げるだけでも相当リハビリしましたよ。(ホント毎日歩くって大切だなーとおもった次第です。箇所や歩けない時期は違えどリハビリがんばってください!決して脅してるわけではありませんので…(^_^;)

    ゆっくり「拡張」の記事でもみながら!”#$%&…ください。

  3. ありがとー。もう松葉杖なしで歩いてるよー。
    階段の上り下りも、問題なし。

    来週抜糸予定だし、意外と順調でやんす。

    拡張は……さすがにもう付いていけそうにないw

  4. こ、これは。
    やっぱり手術って、あらためてすごいことよね・・・・

    むりせずゆっくりー!

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