『Mr.インクレディブル』(2004年 ブラッド・バード監督)
仕事柄、ピクサー作品はすべて目を通しているので、チェックしてきた。今週末からかな、封切りは。原題は「The Incredibles」、つまり「インクレディブル一家」だ。邦題を決めるのに苦労したとは思うが、これじゃ映画のコンセプトが台無しかとも思う。まぁ、邦題問題は挙げたらキリがないか。
そもそも”incredible”という単語自体が、日本人には馴染みが薄い。”unbelievable”なら知ってるんだろうけど。あと、いわゆるMrs.インクレディブルの名前は、”Elasty Girl”(伸び縮み娘)だが、パンフや公式サイトなんかだと「スーパーガール」になってた。気を回しすぎるのもどうかなあ、と思う。まぁいいや。
ピクサー作品の歴史は、テクノロジーの歴史でもある。『モンスターズ・インク』に出ていた女の子、ブーは、当初は髪を垂らしている設定だったが、当時の3D技術ではそれが困難だった(髪は、結局結ばれている)。そう、実はピクサー作品で人間が主人公なのは、この作品が初めてなんである。長女は内気で、いつも長い髪で顔を隠しているのだが、そういった表現もやっと実現できたわけだ。ちなみに、エンドクレジットには、「Hair & Cloths」のレンダリングチームが独立して記されていた。かなりの大所帯で、かつこの映画のテクノロジー的なキモでもあったのが、よくわかる。
他の作品との差異は、まだある。最も大きいのが上映時間。アメリカでは、「アニメは90分以内」というのが一般的なのだが、本作は110分を越える。要するに、長い作品は子供受けしないということらしいんだけど、この上映時間については、相当ディズニーとモメたらしい。
肝心の内容だけど、これがすこぶるイイ。過去の作品では『モンスターズ・インク』が個人的ベストだったが、それを上回ったかな。
スーパーヒーローたちが活躍する陰で、市民への被害も拡大。そして訴えられ、敗訴。彼らはみな、一般市民としての隠遁生活を余儀なくされる(なんてアメリカっぽい!)。イクレディブル家を支えるお父さん、Mr.インクレディブルも今では冴えない保険会社のサラリーマンだが、つい情に溺れて保険金を支給してしまうため成績はよくない。これまた元スーパーヒーローの妻と営む家庭を支えるために働くも、完全なリストラ要員である。ヒーローの資質は子供たちにも遺伝しているが、長男はそれを隠して暮らすことにフラストレーションがたまる毎日で、イタズラばかり。長女は、とことん内向的で好きな男の子に話しかけることすらできない。そんなある日、父親のもとに、スーパーヒーローとしての仕事の依頼が入るのだが……。
伏線の張り方も絶妙。笑わせるところ、泣かせるところもバランスよくて、見る前はかなり眠かったのに、寝入ることもなくラストまで引っ張られました。原題からもわかるように、テーマは明らかに「家族」。特に母親の存在がカギですな。私はチョンガーなんでアレですが、夫婦子供連れで見に行くといいんじゃないかと思いますヨ。
最後に、ピクサーとディズニーについて。
この両社がタッグを組むのは、次回作『Cars』まで(車が主人公って……しかもNASCAR??)。ディズニー側は新しいCGアニメ制作会社を開拓したそうで、本格的に契約は打ち切りということらしい。スティーブ・ジョブズは激怒したそうだが、ディズニー側が、ピクサーをコントロールしきれなくなったというのが真相か。まぁ、ディズニーもいい話ばかりは聞かないんで、潮時だったのかねぇ。
じゃあ、ピクサーは配給に関してどこと組むのか? ジョン・ラセターは何を考えてるのか? ひょっとして、ジョブズが強引に動画配信事業をアップルで始めるとか……って、それはさすがにないか(笑)。
「Mr.インクレディブル」
「Mr.インクレディブル」、観てきましたよ?。 もう最高!!期待以上に面白かった