小津映画マラソン

昨年の秋から年末にかけて、NHK BSで小津映画をやたらと放映してた。事前に原節子さんのことを知っていたのではないかと勘ぐりたくなるようなタイミングの良さだったが、それを録画して、このところずうっと観てました。

東京物語/彼岸花/お早よう/秋日和/秋刀魚の味

以上5本。

いやー、正直に書くと「疲れた」の一語。どれもこれも名作なんだが、連続して観るもんじゃあないね。東京物語を除くと、主要キャストだけでなくセットも同じだし。まあ予算かかんなくていいんだろうけどw

佐分利信/中村伸郎/北竜二のオッサン3人が、それぞれ会社の重役っぽい役柄で出てくるんだが、よくそれで出世できたな的ないい加減さで笑える。オバチャン枠は杉村春子と高橋とよのツートップ。そんで、若いイケメン枠は佐田啓二という安定布陣。

個人的には『お早よう』がスキ。子供らが、おでこを押されたら屁をこくという芸を必死で身につけようとする様がすばらしい。ついつい「実」を出しちゃう子がなんともいえない。そんな倅のパンツを杉村春子が小言をいいながら洗うわけである。そりゃあ洗濯機も欲しくなるわけだ。


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亭主が屁をこくと「呼んだ?」と女房が出てくるというシーンもよい。こうして書くとなんだか屁の映画のようだが、もちろんそんなことはない。ただ、軽石を砕いて飲むと屁が出やすくなるというのは、ちょっとしたトリビアかもしれない(最終的には否定されていたが)。

あとあれですね。やっぱり岩下志麻は最高ですね。『秋刀魚の味』の嫁入りシーンはグッとくるものがあります。そして、結婚式の夜、独り台所でうなだれる笠智衆の姿には落涙を禁じ得ないのであります。


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生死を分つもの〜127時間

けっこう前の話ですが、『127時間』という映画を見ました。

・行き先を誰にも告げていない
・きちんとした装備を持っていない

まぁ、この時点でアウトなわけです。

ソリッドシチュエーションな映画としては、ホラーやサスペンスでもないのに、すごくよくできてると思いますた。演出の妙。

冒頭で若いお姐ちゃんたちとキャッキャウフフしてた主人公が、刻一刻と追いつめられていく様が妙にリアルで背中がムズかゆくなります。

アウトドアとか好きな人は、観ておくといいかも。

感度サイコー!! ナニサリは素晴らしい映画だった!

いちばん後ろの列。隣にはなぜか妙齢の金髪のおねいさんが座って、ずうっと曲に合わせてユサユサと体を揺らせていた。映画館というのがもどかしい。拍手もできやしない。

『忌野清志郎 ナニワ・サリバン・ショー 〜感度サイコー!!!〜』は、ただのコンサートフィルムじゃない。それは、参加ミュージシャンの顔ぶれを見ればわかるとおり。結論から言うと、愛に満ちあふれた、素晴らしい「映画」だ。

途中、3度ほどウルっと来ました。まず、「後ろの奴等のために」で。

いや、自分が映画館のいちばん後ろに座ってたのは関係なくて、完全にその場の「後ろの奴等」と同化してた。いきなりあんなことになったら、ちょっと感動してしまうよなあ。

次は、なんども見てるはずなのに改めて涙腺が緩んだ。矢野顕子との「ひとつだけ」。

もうひとつは敢えてコメントしませんが、泣き所も笑い所もとにかく満載、それだけは保証します。

この世を去ったミュージシャンを題材にした映画ってけっこう多いのしら。ジョン・レノンとシド&ナンシーとジム・モリソンかな、私が見たことあるのは。

もちろんどれも映画として、またファンとしてもソコソコ満足いく作品だったけど、ナニサリほど楽しくて、あたたかい、参加している人たちの息づかいが伝わる映画はない。本当に愛された人なのだ。知ってたけど。

もう一度、キヨシローに会いたかった。それが本当に実現するとは思ってもみなかった。いや、かなり真面目にそう感じている。

終幕後、最前列で顔を膝に埋めて静かに涙を流してる人がいた。その気持ち、とてもよくわかると肩に手をかけたいくらいだった。

映画『レスラー』をようやく観た

劇場公開時は行けなかったんだよなあ、コレ。畏友・dai君からずうっと勧められていたのだけど、ようやく目にすることができた。

んー。素晴らしい作品です。まさにオレ好みというか、ど真ん中ストレート。

内容はググればいくらでも出てくるので割愛しますが、とにかく切ないですねぇ。随所で、心の奥がキュ〜ッとなる。特にラストは、息を飲みます。

あと、有名なこのやり取り。80年代最高!90年代最低!!

Randy ‘The Ram’ Robinson: Goddamn they don’t make em’ like they used to.
Cassidy: Fuckin’ 80’s man, best shit ever !
Randy ‘The Ram’ Robinson: Bet’chr ass man, Guns N’ Roses! Rules.
Cassidy: Crue!
Randy ‘The Ram’ Robinson: Yeah!
Cassidy: Def Lep!
Randy ‘The Ram’ Robinson: Then that Cobain pussy had to come around & ruin it all.
Cassidy: Like theres something wrong with just wanting to have a good time?
Randy ‘The Ram’ Robinson: I’ll tell you somethin’, I hate the fuckin’ 90’s.
Cassidy: Fuckin’ 90’s sucked.
Randy ‘The Ram’ Robinson: Fuckin’ 90’s sucked.

best shit ever! とかシビレルぜ。この言い回し、某MMOでよく使ったものです。Cobainってのはニルヴァーナのボーカルの人ね。

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ところで、しばらく前にAppleTVを買ったんですよ。「レスラー」もコレで観たんだけど、いやはや素晴らしいね。映画のレンタルや購入だけじゃなくて、iPhoneやiPadのAirPlayがイイ。あと、iOS5で写真も簡単にPCやら何やらと同期できるし。

ヤマトとノルウェイの森

40代前半のオッサンとしては、前者は子供時代、後者は大学時代とリアルタイムに経験してきた世代なわけで、これは見逃せないな、と。

実写化っていうと当然ながら身構えるわけなんですけれども、映画館に行くと決めた時点でなんというか、覚悟のようなものはできているので、過度の期待はしておりません。基本、ニヤニヤしながら2時間ほど楽しむというスタンスであれば、間違いなかろう、と。そもそも、代打よしこが直子だもの。

共通して言えるのは、どちらも主役(キムタクとマツケン)は、賛否両論あれど上手くハマってます。むしろ感心した。「じゃあほかに誰がいるっていうんだ」状態。私は大いに支持します。

あとノルウェイの森では、しっかり早稲田ロケしてるんだね。すげー懐かしい。あれは全編本部なのかしら。文キャンっぽいシーンもあったようが気がするけど、ロケ地はあんまり分散させないだろうから、本部だけかもなあ。建物とか、基本のトーンは本キャンも文キャンも同じだったからね。

いずれにせよ、某芸能デスクのお言葉、「あら探しをしながら見るのならヤメた方がいい」にすべてが集約されています。どちらも。作品そのものはもちろん、その後のさまざまな議論も楽しめるという意味では、こうした国民的コンテンツの映画化というのも悪いところばかりじゃないね。

どうせなら、「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」も実写化してほしいぜ。もちろん山崎カントクがVFXね。世界の終わり編と、ハードボイルドワンダーランド編の2部作で。

住んでる街に映画館があるという幸せ

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TOHOシネマズがやってる、朝イチでいわゆる名画を上映するって企画がありまして、今週はニューシネマパラダイスだっていうもんだから、たまらず行ってきました。1人1000円ナリ。安い。

思えばこの映画、封切り中は映画館では見てません。話題になって、ビデオで見たとかそんな感じ。大学生で、ちょうど初めてVHSのデッキを買った頃じゃなかったかなあ。

まさに、一度映画館で見てみたかったと思ってたタイトルです。内容については、みなさんよくご存知のとおり。オープニングでテーマ音楽が流れた途端、涙腺がゆるみ始めます。

もちろん、ラストシーンにかけては顔面が滝のよう。劇場内でも、そこら中でスンスン、ズズーッ、スンスンのサラウンド大会。

いやでもね、この映画が罪だなあと思うのは、終わってからのいわゆるエンドロールが短いんですよ。最近の映画だと、たっぷり5〜6分、へたすると10分くらいかかったりするじゃないですか。それがない。1分くらいで場内が明るくなっちゃう。

仕方がないから、みなさん鼻をすすりながらうつむき加減でいそいそと出口に歩き出すわけです。なんというか、バツが悪いね。

その後、家人とこの映画について話をしました。「泣ける」映画には違いないけど、問題は泣かせ方なのだよなあ。テレビ局が絡んでる邦画とかの、「いかにも」なテクニックじゃないんですよね。結局、「オマエはまるでわかっとらん」と憤慨・紛糾(笑)。

それにしても、ニューシネマパラダイスを観て泣けるかってのと、ラーメン二郎で小豚を残さず食べられるか、この2つについては、オトコたるもの定期的にチェックせねばならんですねえ。

いや、二郎は食べてないけどさ。

映画『悪人』と『事件屋稼業』

映画『悪人』がなかなかよかった。深津絵里がモントリオールの世界映画祭で最優秀女優賞を受賞したそうだが、実際には脇を固める面々のほうが印象的だった。

特に柄本明と樹木希林。あと宮崎美子がグッと来ます。おすすめ。

善人ヅラした悪いヤツ、被害者ヅラした加害者等々、いまの世はまことに複雑だ。ついつい、『事件屋稼業』というマンガを思い出してしまった。

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原作・関川夏央、画・谷口ジローという奇跡的デュオによる名作シリーズ。上の写真は第5巻。ビルからの立ち退きを強要されている中華料理屋が、ゴネ得どころか欲の皮を突っ張らせるエピソード。地上げ屋のモノローグにかぶさる、日活時代の裕次郎というコマ。

探偵とは職業ではない
生き方だ

きわめて危険で
同時に美しい
誰もが軽蔑しつつ
うらやむ生き方だ

たとえていうなら
銃口に止まった蝶のようなものだ


主人公・深町丈太郎は1948年生まれ。存命であれば、62歳。果たして彼は携帯電話を持ち、インターネットに支配された21世紀を生きているのだろうか。いつか、続編を期待したいのだが。

アリエッティとトイストーリー

この夏の話題のアニメ、2作品を観てきました。結論から申し上げると、どちらもツッコミ要素はあるものの、非常に良質で楽しめる、とてもいい作品です。時間が許すなら、どちらも観ておくといいと思います。

アリエッティは、原作が海外モノなんだけど、例によって多摩・武蔵野が舞台となってます。「耳をすませば」的なね。冒頭のシークエンスで野川っぽいような川も流れていました。違うかもしんないけど。

確かに前田センセイのツッコミもわからんではないけど、ディテールの作り込みや圧倒的な画力はさすがのひと言です。

ただし、後でたまたま目にしたんだが、TVCMで「これは事前に見せない方がいいのでは……」ってのがバンバン流れてたのはビックリ。やりすぎじゃあなかろうか。余計なお世話かもしれないけれど。

トイストーリー3は、六本木で観ました。吹き替え版がイヤだったんで。

確かに子供連れが多く訪れるだろうから、吹き替え版が圧倒的多数というのは理解できるんだけど、もう少し選択の余地みたいなモンがあってもいいと思うんだけどなあ。カップルなんかも来るだろうに。

内容はというと、ハッキリ言って泣けますねコレは。特に男の子はもう……。最後はもう、3Dメガネが曇ってたわ。随所の重要なセリフも、字幕版なのでフルで堪能できて満足。

思えば、トイストーリー1が公開されたとき、当時働いてたとこの雑誌で大特集したんだよね。表紙とかもトイストーリー仕様にして。長い年月が経ったのだなあ〜とシミジミ。

芋虫とキャタピラー

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寺島しのぶが銀熊受賞したとかいう話、当初スルーしてたんですが、作品紹介をチラッと読んだら「あれ?これは……」と。やっぱり、乱歩の芋虫じゃないですか。

いやー、アレを映画化するとは勇気があるというか、さすがはピンクの黒澤・若松孝二。『われに撃つ用意あり』はよかったなー。あさま山荘とかよりも好き。

ところで、こうして話題になったことで、「じゃあ観てみるか」などといった軽いノリで映画館に行ってしまう若者とかが心配だw

ちゃんと原作読んで予習してからにしてほしいものです。映画ではグロいところはマイルドになってる可能性もあるからなんとも言えんですが。国内での公開は夏とかなのかなこれ。

あ……と、ここまで書いたところで公式サイト(というか若松孝二のサイト)を見たんだけれども、なんか『芋虫』はインスパイアされただけっぽいね。さすがにねえ、あの世界はそのまんま映像化はできんわな。反戦色が強い?うーん。

というわけで、とりあえず丸尾末広が描いたマンガ版『芋虫』はとてもおすすめ。ある意味、本家を超えたのではなかろうか。この人が以前出した、『パノラマ島奇譚』も相当よかったけれど、『芋虫』はまさに芸術の域。エンターブレインは、なかなかいい仕事するなあ。

トラウマになっても知らんけれども。

口腔内火傷必至

寒い日は鍋かたこ焼きと決まっておる。

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キャベツは入れず。なるほど、このほうがたこ焼きとしての存在感が高まるんだね。すこぶる形而上的。

チーズとか餅とかを入れてもいいねえ、とか話をしてたんだが、結局ノーマルなものばかりを焼いた。2回戦でたこが切れたので、刺身で食ってたイカを入れたくらい。比べると、やっぱりたこのほうが美味いや。

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「おとうと」を観て来たんですけど、鶴瓶がたこ焼きの焼き過ぎで腱鞘炎で……みたいなシーンがあって、それでね。

映画のほうは、なるほどファンタジーとしての「寅さん」との対比として捉えると、強烈だ。しかし、吉永小百合出演映画としてみれば、相当な傑作の部類に入るのではなかろうか。母親役ということで、比較的無理もないし。

劇場内の平均年齢がハンパなく高かったが、そのリアクションも含めて話題の3D映画なんかよりも非常に楽しめた。鶴瓶って、本当に人気者なんだなあ〜と再確認。

『カールじいさん…』を観てきた

CGアニメ映画というジャンルは、これだけテクノロジーが発達して、ハードウェアの性能も上がり、おそらくはテクノロジーに明るいクリエーターがどんどん増えているというのに、ピクサーと双璧をなすようなライバル会社の存在が見当たらない。

たしかに自前のRenderManはいい制作環境だと思うけれど、ピクサー映画が面白いのは、3D云々ではなく、単純に面白いストーリーや映画を作る能力に長けているからだ。テクノロジーは単に屋台骨であって、それが全面に出てくるようでは意味がないということだろう。



それにしても、なんたることか。冒頭のシークエンスですでにもう、顔がダダ濡れである。後日、公式サイトを見てみたら宮崎駿も似たようなことを書いていた。ていうか、たぶん見た人すべてが、のっけからガツンとやられるんじゃないかと思う。

夫婦や親子、大事な友達、あるいはペットなんかもそうかもだけど、愛する存在との死別は、本当につらいものだ。だがどんな人とも、別れは必然的にやってくる。この映画は、そんな別れの経験ある人、あるいはいずれ経験することになる人すべて(つまりほとんど全員だ)の胸に、強く響くメッセージを持っている。

テレビなどでもさんざん宣伝しているから知っている人も多いとは思うが、この映画は、亡き妻との約束を果たすために、家に風船をくくりつけて旅に出る老人の話である。さまざまな困難に直面し、さまざまな選択を強いられ、決断を迫られる。

できれば、誰か大切な存在の人と観に行き、映画の主題についてや、なぜ原題が「Up」なのかといったことについて語り合うと楽しいのではなかろうか。

ていうかコレ、子供や若造には相当わかりづらいテーマだと思う。目線が上すぎな気もするんだけど、きちんと子供ウケもよくなるよう構成されてるところがすごい。ジブリとかも上手いけど、ピクサーも相当だ。

おそらく私も、いずれ大切な人と死別する。両親はまだ健在だが年老いて入るのでいつ何があるかわからない。事故だってありえるし、来年は自分も本厄だしで、要するに人生一寸先は闇である。

実際にそうなったら、おそらくは悲しみの淵を漂い、思い出の品を前に酒を浴びるように飲み、涙を流して途方にくれるのだろう。が、すこし時間がたって落ち着いたら、この映画のことを思い出し、もう一度見たくなるのではないかと思う。

映画館によっては専用メガネをかけると3D映像として楽しめるようにもなっている。だけどこのメガネ、耳のあたりが痛くなるし、やや暗いフィルターを通すことになるので、前田センセイもおっしゃっているとおり効果の程は期待しないほうがいい。ただし、涙腺がゆるみきった私のような人間にとっては、その本来の用途ではないものの、非常に役立ったことを付け加えておく。

The Fate of Mitchell Brothers

個人のblogとはいえ、誰が見てるんだか分からないところにこんなこと書くのもアレですが……。

サンフランシスコのオファレルSt.に、ミッチェルブラザーズというストリップ劇場がある。正確には、Mitchell Brothers O’Farrell Theatreというんだけど、私に近しい人であれば、その話を聞いたことがあるかもしれない。大絶賛していたはずだが、おそらくは伝えたいことの10%くらいしか言葉に表せていなかったのではないかと思う。

言い訳するわけではないが、殊更ストリップ鑑賞が好きなわけじゃあない。とはいえ健康な男子なのでそれなりに興味もあって、学生時代に数回ほど行ったことがあるのは事実。浅草と、あとは水上。浅草ロック座なんかは、独特の風情がありますね。ついに足を踏み入れることはなかったが、渋谷の道頓堀劇場なんかも、できれば行っておきたかった。

水上温泉での体験はひどかった。客が我々の団体(といっても3人くらいだったかな)しかおらず、半ばヤケクソで、半ば仕方がなく「かぶりつき」の席に座り、義務的に見入るハメに。冬の鄙びた温泉街の、あのどんよりと重苦しい隠微な雰囲気は、それはそれで面白いものがあったけれど。

こうした後ろ暗さ(?)があるからか、はじめてアメリカでストリップ劇場に行ったとき、衝撃を受けたのだ。これはすごいな、と。

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早朝、サンフランシスコの公園にて。本文とは関係ありませんw



よくある話だけど、最初は仕事関係の仲間たちと酔った勢いで。確か全日空ホテル(いまは違うホテルになってるかな)の前でタクシーに乗り、運ちゃんに「ストリップに行きたいんだけど?」の一言で連れていってもらった。

後日、そこはポルノ界のパイオニアと呼ばれる、伝説のミッチェル兄弟が作った劇場だと知ることになる。日本人が連想するストリップとはまったく異なる(言い方は妙だが)、健全で、明るくて、ユーモアに溢れていて……とにかく感動の一語だったのですね。店も客も、とにかくノリがいい。だからなのか、女性客もチラホラいたくらい(ていうか、じつは私の連れにも女性の同僚がいたんですが)。

劇場内は、メインとなるステージ(左右にお約束のポールが立っていて、いわゆるストリップが入れ替わり立ち替わり)があって、それ以外にも色んな部屋があるのね。のぞき系とか、ポルノ映画を延々流してるシアターとか、おねいさんが膝の上に乗ってくれる部屋とかw

でも一番ウケたのが、「コペンハーゲン・ラウンジ」っていう名前がついた部屋で、ここはガランとした真っ暗な空間のみ。んで部屋に入ると、椅子の上に懐中電灯型のスポットライトが置いてある。中央では女の子が2〜3人ウネウネしていて、客はそれを照らして……という感じ。

なんか、そう書くとすごくエッチっぽく思うかもだけど、客の反応が「グフフ……」みたいなのじゃないんですよ。むしろ「俺たち、なんてアホなことしてるんだ!ガハハ!」「そんな立派なナリしてるくせして、自分がやってることを冷静になって見てみろ!」「オマエモナー!」「(一同)ゲラゲラ」みたいな、妙な連帯感が醸し出されてて最高に面白かった。部屋の名前からして、ノリのよさがあるよね。

はたして、アメリカのストリップ劇場がすべてあんな感じなのかは分からない。単に自分が行ったときが「当たり」だっただけなのかも。少なくとも、ダークでウェットな感じは微塵もなかったのは確かだ。

てなことを、サンフランシスコに詳しい某ジャーナリスト(その筋では非常にカタブツで有名な方)に話をしたら、「そのストリップ劇場は超有名で、映画にもなってるんだよ。そんなに気に入ったならDVDでも買えば?」とおっしゃる。

その映画こそが、『キング・オブ・ポルノ(原題は”Rated X”)』だ。しかもミッチェル兄弟の弟を演じてるのは、チャーリー・シーン。プラトーンとかメジャーリーグの彼ですね。兄役は、エミリオ・エステベス。よく似てるって、リアルで兄弟だから当たり前か。

もちろんDVDは購入。なのに、見るタイミングを逸したまま行方不明になっていたのが、最近になってカイシャの段ボールの片隅に押し込まれてたのを発見したのです。

あー、いつものことですが前フリが長い……。それをとうとう見ることができたと、そーいうエントリーなわけでございます。ちょっとダメポな部下に付き合って、朝まで仕事しなくちゃならなくなり、その合間に鑑賞。

いやー、題材が題材ではあるんだけど、これがなかなか面白い。

ミッチェル兄弟は、ラディカルな父親(実際はプロのギャンブラーだったらしい)に育てられます。兄は大学で映画製作を学んだりするんだけど、折しもベトナム戦争。西海岸といえばお花が満開なフリーダム・ムードが蔓延していて、なぜかポルノ映画を作ることに。で、いつの間にか弟も巻き込んで、さらには理解ある両親にも支えられ、自前の映画館がほしいってんで”Mitchell Brothers O’Farrell Theatre”を作っちゃう。全米で大ヒットした”Behind the Green Door”という作品を生み出し、大金持ちにまで上り詰める。サクセ〜ス!

NYでマフィアが海賊版で勝手に上映していると聞けば、FBIに手を回して、マフィア相手の争いにも堂々勝利。アメリカで販売されているビデオなんかでは、本編前に必ずFBIによる著作権関係のWARNINGが入りますが、そもそものきっかけが、ミッチェル兄弟の映画があまりにも人気で海賊版が上映されまくってたのを取り締まるためだったそうで。へぇ。

70年代から80年代へと時が移り、世の中に家庭用ビデオなんてものが普及し始めるとポルノ映画は斜陽化していきます。そこでシアターを改造して、ストリップやショーを売り物にした、という歴史があるんですね。なお、ポルノ映画を作ってた最後の頃には、駆け出し時代のトレーシー・ローズ(その後、超有名なビデオ女優になる)も出演していたそうだ。なるほど、ポルノ界のパイオニアだねぇ。

実話をベースとした映画ではあるけど、ドキュメント風なわけではなく、とにかくそのぶっ飛んだ生き様を追うだけでも楽しい。題材は確かにポルノなんで、それっぽいシーンもいくつか出てくるものの、そんなにエッチな感じではないかな。むしろ兄弟モノなんで。

古くはカインとアベルとか、ポピュラーなテーマだけど、この映画の場合、どっちもダメ人間というのがユニーク。それゆえか、とても切ない。毛色は違うけど、シド・アンド・ナンシー的な空気もちょこっと感じたり。

映画自体、特にお勧めとかではありません。私のように、実際にMitchell Brothers O’Farrell Theatreに行ったことがある人ならば、話のタネにはなりますが。とはいえ予備知識ナシで見てみたいという奇特な方のために、特にwikiなどにはリンクは張っておりません。兄弟の壮絶な生涯、そして運命は有名な話らしく、割とサラッとネタバレしてるところが多いんで。

日本映画界でも、ポルノ出身の名監督って多いよね。何度も書いてるけど、おくりびとの滝田カントクとか。ほとばしる才能はまず、矛先をエロスに向けるのかもしれないねぇ。本作でも、いくつかポルノを撮影してるシーンが出てきますが、設定とかムチャクチャ。セックスシーンさえあれば、あとはナニやってもOKみたいな、むしろそういった状況で作品として仕上げるのって、やっぱ才能なんだろうなー。AVなんかが出回る前の、古き良き時代ということなのでしょう。

ついでについでに、ミッチェル兄弟の弟の息子が柔術家になってて、日本でも総合格闘技の大会に出てるんですよ。ググってたら偶然見つけたんだけど、カレブ・ミッチェルといって、グレーシー柔術系だとか。

あー、仕事終わんねー。朝までの予定がもう昼過ぎじゃねーか!おかげで駄長文に……。

『サマーウォーズ』を観てきた

『時かけ』のデキが本当に素晴らしかった、細田監督の第二作。

やっぱり、当主の老婆役の富司純子がイイねえ。ぼくは年寄りが活躍する映画が大好きなんですが、このお婆ちゃんは特にツボ。背筋の伸びた、凛とした老人の姿は、実写だろうとアニメだろうと、もうそれだけで反則である。



作中、ライフラインとも直結した仮想現実世界が登場するけれど、そこはフルCG。時かけにもその片鱗はあったけれど、なるほど、こういう演出は見事だ。

時折、背中がムズムズしたりもするけれど、良質なアニメーションだと思う。開けっぴろげの縁側だとか、ズラリ並んだ朝顔の鉢植えだとか、大家族の食事だとか、現代の子供たちにとっては、ある意味これこそがおとぎの国なのかもしれないねえ。

そういえば、貞本つながりで『ヱヴァンゲリヲン新劇場版・破』も、ちょっと前に観てます。ずうっと忙しかったおかげでネタとしては放置しとったんですが、「メチャクチャ面白いわー」としか言えない。こういった作品の存在自体が許されるのは、さすがエヴァですなあ。

深夜に日テレでやってたオリジナルの一気再放送も、最後のほうは追っかけてました。あのラスト2話の展開は、今さらながらすごいね。さすがテレ東だわ〜。

山野井夫妻

訳あって、山野井泰史・妙子夫妻についての本とDVDを立て続けに。

「凍」沢木耕太郎著
「白夜の大岸壁に挑む」NHKエンタープライズ

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「凍」は、ヒマラヤの高峰・ギャチュンカンに挑んだ山野井夫妻のノンフィクション。登頂こそ果たしたものの、下山時に雪崩に巻き込まれ、標高7000m以上でのビバークを余儀なくされる。夫婦で計28本もの指を失ったというその帰還の詳細は壮絶という他ないが、何しろ沢木耕太郎の筆が冴えまくっている。近年の、沢木耕太郎の本の中ではダントツに面白いのではないか。題材に依るところも大きいんだろうなー。

「白夜の大岸壁に挑む」は、NHKで放映されたドキュメント。ギャチュンカンからの奇跡の帰還を果たしたふたりが、グリーンランドにある、高低差1300mの大岸壁に挑戦する。指がほとんどないなか、ギアに工夫をこらし、実際に登攀していく様子を、NHKのクルーたちが相当がんばってフィルムに収めている。いやもう、「変態」のひと言。もちろんホメ言葉である。

山野井泰史さんは、昨年、奥多摩で熊と格闘したことでも記憶に新しいが、blogなどで見る限り、経過も順調のようだ。それにしても、夫婦揃ってすごい日本人がいたものだ。

『星影のワルツ』を観た

わが故郷、浜松が生んだ写真家・若木信吾氏による、ドキュメンタリーのような不思議なフィクション。天竜川や中田島など、浜松を舞台にロケされており、実際に若木氏の生家でロケされたそうだ。遠鉄バスなども出てくる。

私小説ならぬ、私映画。あるいは私フィルム? 亡くなった祖父を撮影し続けたのが写真家としての第一歩だったこともあってか、思い入れがヒシヒシと伝わってくる。そのおじいさんの写真集も出版されてるんだね。

たぶん特殊な機材を使うわけでなく、全編通して、HDカム(?)で撮影してるんだと思うのだが、写真家らしく、時にドキッとするような美しいシーンが挿入される。

主人公(本人)役は、バンプオブチキンみたいな感じの青年。親友役の2人は実際の監督の幼なじみ。どちらも(実際に)障害を持っていて、職場のシーンなんかがドキュメントっぽく挿入される。

都会ではそこそこ名の知れた写真家となっている主人公が、その親友2人と街中に遊びに行ったとき、なぜか鍛冶町(ローカルだなあ!)の横断歩道で東京の仕事関係の人間とバッタリ会ったりするが、ぎこちないやり取りがイイ。

それにしても喜味こいしの存在感はすごい。『ホノカア・ボーイ』を観ても思ったのだが、この人はある意味、笠智衆を越えているのではないか。凛とした様は、ベスト老人オブザワールドといってもいいくらいだ。

酒場で、若者に誘われて同じテーブルで飲むシーンなんか、すごくいい。威厳をひけらかすわけでもなく、あくまでも自然体であり、その佇まい、若者たちのあしらい方は、これぞまさに粋というもの。

極めつけは、海でのシーン。

以前も書いたことがあるが、浜松人にとっての海とは、延々と続く砂丘をひたすら歩いて、ようやく辿り着くというものであり、「海へつれていってくれないか」という言葉は、決して大げさではない。

砂に足を取られながら、一歩ずつ傾斜を登り、ようやく開けた視界の向こうに現れる水平線。海へと至るまで、どんな思いだったのか。そこで奏でるバイオリン、星影のワルツである。

監督自身の私的な思いだけでなく、見る者にとってはいとし師匠のことも思い出されるはずだ。

決して一般向けではないが、カッコいい老人が大好きな私としては、大いに満足。こいし師匠には、とにかく長生きしていただきたい。

この映画、実家に帰ってたときに1人で見た。そのまま置いてきたけど、はたしてウチの親父はどんな感想を持つだろうか。「よくわからん映画だったな!」とか言いそうだ(笑)。

『僕の彼女はサイボーグ』を観た

『猟奇的な彼女』で知られる韓国人のクァク・ジェヨンが監督。未来の自分からサイボーグが贈られる。しかもその容姿は、1年前に出会った素敵な美少女とそっくり。

公開時、観に行こうと思っていたのに、忙しくて気がついたら終わっていた。dai氏のご厚意でお借りできたので、自宅で鑑賞。

例によって、強いオンナとダメなオトコという、ある意味わかりやすい内容なのだが、なんというか、ブットビ具合がハンパない。こういう映画は、ちょっとビールでも飲みながら姿勢を崩して、ニヤニヤしながら観るのが一番だ。

未来の人間が過去を変えてしまったらどうなるのか。本来起こり得なかったことが起き、起きたはずのことが起きないという状況は、SFの世界では普遍的なテーマではあるが、もちろんそんなこと(あえて)真面目に取り合ったりはしない。

少なくとも、アイドル系女優の売り出し時期にありがちな、毒にもクスリにもならないばかりか掃いて捨てることすら面倒な軟弱ラブコメ映画なんかよりは、綾瀬はるかのファンを増やすことに成功しているんじゃないかな。

いやー、さすが、あの前田有一センセイが唯一「採点不能」と評しただけのことはあるわ。

それにしても綾瀬はるかは、おっぱいもさることながら、あの常人離れしたアゴが、たまらなく魅力的。オトコなら誰しも、一度でいいからあのアゴをなでてみたい、と変態的な欲求にかられること請け合いである。



↑amazonのレビューは、意外と高評価だなー。

『グラン・トリノ』を観てきた

デート向きではないし、なんとかクリフのような潤沢な宣伝予算があるわけでもない。アカデミー賞とも無縁だったし、ブロンド美女も一切出てこない。名の知れた俳優は主役のみ。要するに、いまひとつパッとしない。

事実、上映スケジュールもやや先細り感がある。日本ではあまり話題にはならないまま上映期間が終わってしまう気もする。



だがしかし、素晴らしい映画だ。私は今後しばらく、会う人会う人すべてに、この映画を勧めまくるだろう。

物語後半、佳境に入ってからの展開には、決して大げさではなく震えが来た。ここんとこ、映画については「当たり」が多くて本当にうれしいのだが、その中でも明らかに群を抜いている。文句ナシの大傑作。

ある程度の「老い」や「枯れ」を自覚しつつあるオッサン世代なら、この映画が語りかけるテーマは、ストレートにココロに響くはずだ。しかも響いて終わりではなく、しばらく居座ってしまうに違いない。ああ、いろいろ書きたいところだけど、そこはグッと我慢。だけどひとつだけ。男らしさとか格好良さとか、いかに世の中に、ステレオタイプなものが溢れているのかが、かえってよくわかりました。

これが最後の映画出演と言われている、78歳となったクリント・イーストウッド、いやさダーティー・ハリー。無茶苦茶カッコいいよ、アンタ。

公式サイトはココ

『スラムドッグ$ミリオネア』を観てきた

インド、あるいはアジアへの憧れというのは、ヒマな大学生なら誰もが一度はかかる熱病のようなものだ。私も留年していた数年間、何度もアジア貧乏旅行に行きたくなり、その都度思いとどまった。

きっと行ったら行ったで、現地でクスリにハマって半端に居着いてしまうタチの悪い学生崩れになってしまいそうなのと、日本に帰ってこなくなるような気がしたからだ。

18歳のとき、半ば儀礼的にパキスタンに行く機会があったことも、抑止力となってくれたのかもしれない。

さて、そんなわけでスラムドッグなんですが、映画館が混んでましたねえ。さすがアカデミーの力は偉大です。府中のTOHOシネマズはいっつも閑古鳥なんで、潰れやしないかとヒヤヒヤしてるんだけど、やや安心といったところでしょうか。まあGWだしなー。

あ、肝心の内容ですが、徹底的なスラムの描写と反比例するかのような恋愛映画で、すこぶるよかったですよ。主人公の兄弟はムスリムという設定なんだけど、幼い頃、母親をヒンドゥーの原理主義者たちに撲殺されたりする。ただし、意図的なんだろうけど、映画全体を通しては、イスラムがどうとか、そういった要素はほとんど出てこない。クイズに答える主人公、ジャマールも、最後まで神に祈ったりはしなかった。彼には神なんかよりもっと大事なものがあったのだ。

個人的には、1000ルピーには誰の肖像が描かれているか知らないジャマールが、なぜ100ドル札に描かれている人物を知っていたか……ココのエピソードがよかったなー。

あと、最後の問題が象徴するもの。あまりにもストレートではあるけれど、その答えに至るまでの流れにグッと来た。

みのもんたがやってたクイズ番組はほとんど見たことがなかったけど、ライフラインは重要な意味を持ってると思うので、知らなければ、鑑賞前にまわりの人に聞いておくといいかもしれません。

帰宅後、故ねこぢるさんの『ぢるぢる旅行記〜インド編』を読んで寝た。これもまた、名作である。果たして自分の人生で、インドに行くことはあるのだろうか……。

『おっぱいバレー』を観てきた

小学生だったか中学生の頃、親父のクルマの助手席に乗っていたときの話。バイパスで、速度は100キロ以上出てたんじゃないかな。おもむろに窓を開けて外に手を出し、ひたすら空中を揉んでたんです。

そうしたら親父が、パワーウインドーで窓を閉めてしまいました。無言でウイーンって。そして気まずい沈黙。あるよね、こーいうの。

あと、女のアソコはチーズビットの匂いがするっていう都市伝説、なかった? そんでジャンケンで負けたヤツが、休み時間にスーパーで買ってきて、目を閉じて匂いを嗅いだり。

夜中にテレビで愛染恭子が出てた白日夢やるっていうんで、当時としては珍しかったビデオデッキ持ってるヤツに頼んで録画してもらって、みんなで見たわ。マジで鼻血出したやつがいた。俺だけど。

まあ、中学生なんてこんなもんです。いや、こんなもん”でした”というのが正しいのかもしれない。

いまの中学生は、道ばたに落ちてるエロ本をドキドキしながらめくったりはしないでしょう。ていうか、エロなんて、コンビニとかネットでいくらでも手に入る。時代は変わる。土曜の夜は鶴光だった世代にとっては、甘く切ないノスタルジア。

そういう意味では、おっぱいバレーはとてもいい映画でした。こまけぇこたぁいいんだよ。40代くらいのオッサン連中なら、きっとココロが疼きます。女子や子供は、きっと理解できないだろうなあ。

それにしても、こんな映画に出ることを承諾した綾瀬はるかは偉いと思った。


本屋で原作本を手に取ってみたら、舞台設定が浜名湖のあたりだった。映画は北九州なんだけどね。元ネタはラジオの投稿らしいんだけど、場所はどっちとも違うみたい。

『ウォッチメン』を観てきた

アメコミ界の金字塔、ムーア先生のWatchmenを、300<スリーハンドレッド>のザック・スナイダーが映画化するというので、心待ちにしていたのです。いやー、堪能した!

●日本語版トレイラー


ナット・キング・コールのUnforgettableがバックに流れる中、コメディアンが殺されるシーンなどは失禁モノです。美しすぎる。あと、ロールシャッハ(英語読みだとロールシャックなんだね)がいいですねえ。あの猥雑な感じがマスクのCGと相まってタマランです。

よくぞ、あの世界をここまで忠実に再現できたなあ。さすが、300で湯気が出そうなガチムチ・スパルタンを描ききったザック・スナイダー。ワタシは、まだBlu-rayプレーヤーもハイビジョン対応テレビも持ってないけど、そのへんが揃ったら真っ先に買いたいと思ってるソフトが300なのです(一時期、某オンラインゲームでは”THIS IS SPARTA!!”が合い言葉でした!←意味不明)。そしてそのリストの2番目には、ウォッチメンが入ることが決定。劇場公開版は160分と長尺なんだけど、カットされたシーンなんかが入った完全版があるというウワサもあり、ヒジョーに楽しみ。

内容にサラリと触れておくと、ヒーロー活動が法律て禁止された世界が舞台となります。ピクサーのMr.インクレディブルを思い起こさせますが、あちらは「家族」がテーマ。ウォッチメンでは、パラレルなリアルワールドというか、ヒーローたちの活躍によってアメリカがベトナム戦争に勝ってしまったり、さらにはニクソンが法律を変えてまで3期目となる長期政権を敷いている1985年。米ソの冷戦による全面核戦争の危機が、まるで水でいっぱいになったコップのように影を落としている、そんな設定です。

しかし、現実世界に本当にヒーローなんてものがいたら、実際どうでしょう? マスクをかぶって町の警備? 正直、とってもうさんくさいです。腕が立つだけになおさら不気味。さらには、ヒーローって言ったって色んなヤツがいて、聖人君子系ならまだしもお色気系、マッチョ系、手段を選ばない系などさまざま。それゆえ、「ウォッチメンが町を見張るのはいいとして、いったい誰がウォッチメンを見張るんだ?(Who watches the Watchmen?)」というのが民衆の素直なキモチなわけです。

さらには、実験ミスにより、ホンマモンの超能力者、Drマンハッタンが生まれてしまい……とまあ、ワタシがくどくど書くより、作品の内容については優れたblogがいっぱいありますんで、そちらをリンクさせて頂きます。

今こそ読まれるべき傑作、『WATCHMEN』
http://blog.goo.ne.jp/biting_angle/e/2e1715a4c80033620ad772d354ff3286

というわけでこの映画、間違っても、「なんかおもしろそうだし」程度のノリでは見てはいけません。原作を知らない人はチンプンカンプンで、単なる支離滅裂なトンデモ作品にしか思えないはず。

だからといって、原作自体も相当難解なので、ページを行きつ戻りつ、何度か読み込まないとしっくりこないと思われます。しかも、B5変で464ページというボリューム。

さらにいま、映画公開ということもあって原作本がなかなか入手できない状況のようです。なので、もし興味があれば Amazonの「なか見!検索」で1章がまるまる読めるので、まずはそちらをどうぞ。日本のマンガに慣れてると、絵柄やコマ割りとか、生理的に受け付けないかもしれないけど……。

あ、運良く原作が手に入ったら、こちらのサイトがお勧め。

PlanetComics.jp出張版「ウォッチメン」特集サイト
http://planetcomicsjp-watch-the-watchmen.blogspot.com/

ま、万人向けじゃないのは事実だし、興行的な成功は日本では難しいだろうなー。私自身、この作品を知ったのは、仕事先のマニアックな方に教えて頂いたから。それまではアメコミなんてまじめに読んだこともなかったけれど、ちょっと見方が変わりました。まさに、目から鱗状態。今後、色々と手を出していくつもりです。

原作と映画、合わせれば、とにかく至福。おそらく数週間〜一カ月くらいは想像力フル稼働で楽しめます。連日、オカズなしでドンブリ飯状態ですよ。

我々が住む現実世界にあるさまざまな構図、起こり得る、あるいは起こり得た事態や、その結果あったかもしれない世界なんぞに思いを馳せるのも面白いでしょうし、単純に、平和や正義といった深いテーマについて考えてみるのもいいかもしれません。

最後に、映画でオープニングのタイトルバックに使われている映像があったので埋め込んどきます。第二次大戦中に結成されたヒーローチーム、ミニッツメンの面々の栄光と挫折、あるいは成れの果てが、あの名曲とともに。JFK暗殺の真相(?)や、気が狂ったヒーローが病院に運ばれたり、レズのヒーローが誰かに殺されたり。本編へと繋がる重要なシークエンスをこうしてまとめてあるあたりが、さすがのセンス。

『釣りキチ三平』を観てきた

原作を読んでいる人であれば、1〜3巻までのエッセンスがぎっしりと詰まっている本作には、ニヤリとしてしまうはず。とにかく脚本が、とてもうまくまとまってると思う。愛子ねえちゃんを三平の姉としてしまうという大胆さ。日本全国釣行脚の魚伸さんを、米国在住のバスプロにしてしまうあたりも違和感がない。

CGがどうのとか、細かいことは言いっこ無し。沢の音、イワナの美味さ、鮎の香り。日本の源流の素晴らしさが、この映画ではよく表現されていると思う。みなさんが、「イワナのタタキってのは、イワナの骨酒ってのは、そんなに美味いだか?」と思ってくれればそれでいいのです。オラは知ってるだ。美味いぞ。本ッ当〜に美味いぞ。

どこまでも緑の森、満点の星空、少々のイワナに焚き火、これさえあれば屋根がなくとも三ツ星ホテルなのである。

ところで、畏友dai氏の調査によると、夜泣き谷のロケ地は法体の滝とのこと。秋田県は鳥海山、子吉川の上流、赤沢川にあるらしい。日本の滝百選の一つだそうだ。鳥海といえば、まさに原作者の矢口高雄センセイの出身地である。いいところだのぅ。

カントクの滝田洋二郎にとっては、『おくりびと』の次作となる。おかげで、5月のカンヌを筆頭に海外からは相当引き合いがあるらしいけど、ま、この世界は外国人には理解しづらいんじゃないかなあ。

それにしても、香椎由宇はいい。いっしょに源流に行きたい!

『ヤッターマン』を観てきた

バカバカしいことを心底真剣に突き通した結果、本当に面白いモノに昇華した、そんな映画。なんの衒いもなく、2時間通してキッチリと仕事がしてある。まったく手を抜くことなく、これでもかと観客を煽ってくれる。見ようによっては、相当マッチョだと思う。とにかく文句ナシに最高の映画。大いに笑わせてもらいました。

まったく同時期に、ドラゴンボールの実写版なんかも上映されてるわけだけど、地元のシネコンだと閑古鳥だったなあ。ヤッターマンは異例の満席続き。相当な観客動員が期待されそうですな。

あちこちで、とにかく深田恭子の評価がうなぎ上りである。それも納得のデキ。おそらく彼女の人生は、この作品を機に大きく変わるんじゃないだろうか。

「やっておしまい!」の、あの絶妙なチカラ加減がたまらない。これまで何の興味もなかった私のような人間でさえ、見終わった直後、深田恭子のドロンジョフィギュアが欲しくなったくらいだ。危うく写真集には手を出すところだった。iPhoneの壁紙に設定してはいるけれど。

ドロンジョ=フカキョンが発表されたときは、ネガティブな反応のほうが多かった気がする。やれ、アンジェリーナ・ジョリーだの、ほしのあきだの、西川史子だの、ネットでは代役談義が盛んだったが、フタを開けてみれば、これはもう彼女以外にありえない。見れば、わかる(特に、ほしのあきに関しては、ちょっとググれば彼女がドロンジョのコスプレをしている画像なんかもすぐ見つかるわけだが、ただセクシーなだけでは、あまりにも「浅すぎる」のだ)。

さて、深田恭子もスバラシイが、その魅力を引き出しているボヤッキーの生瀬勝久がまた絶品だ。ケンコバのトンズラも相当だけれど、あの怪演なくしては、この映画は成り立たない。フカキョンも魅力半減だろう。嗚呼、あの「全国の女子校生のみなさん?」のシーンだけでも、ご飯が三杯はいける。

なお、アニメ放送の影響もあるのか、劇場ではちいさな子供たちの姿がけっこう見られたが、うーん、どうなのかな。基本は、オトナ向けだと思うんで、子供はやっぱりアニメ版のハチャメチャのほうが楽しいんじゃないかなあ。

ま、子供の頃に見てたという中年以上の人になら、文句なくオススメできます。

『マンマ・ミーア』を観てきた

怖いものみたさ? いやいや、なんというか、あんまり頭を使わなずに、気楽な気分で映画を見たいときもあるじゃないですか。

祝日の午後、最前列までギッチリ埋まった超満員のハコでした。客層もオトナの女性が多い感じで、プロモーションの効果もしっかり出てたかな。

ミュージカル映画といえば個人的にココロに残るのは『ダンサー・イン・ザ・ダーク』なわけですが、もちろん内容はまったくの対極。あたりまえか。原作のミュージカルは未見ですが、話のスジとしては、TVCFがすべてを語ってくれている。父親候補の3人目の展開が、個人的にはツボった(笑)。

それにしても、あー、ABBAはやっぱり素晴らしい。Dancing Queenなんかは映画とは別に脳内であのビデオが再生されてたし、CHIQUITITAのメロディーが流れると、無条件で涙腺がゆるくなる。とにかく出る曲出る曲、みんな知ってるかつ名曲ばかりだから、それだけでも楽しいですね。


↑やっぱ、このアルバムはいいよね!

あと、ABBAの曲の歌詞って、すげーわかりやすいのね。もちろん映画版としてオリジナルじゃないところは多いんだけど、なんというか、メロディーと歌詞とが、そんなにトリッキーじゃないというか。

そんなことを感じつつ楽しんでたわけですが、いっぽうで、最近読んだ、ネット界隈で特に話題になった本のことが終始頭から離れなかった。その件については、また後日。

『ウォーリー』と『ティンカー・ベル』を観てきた

年末年始を挟んで、ディズニー映画を楽しんできました。もはや、どちらもディズニーっつうよりピクサー映画だなあ。

ウォーリー(WALL・E)は、ピクサーの真骨頂とも言える、ロボット人情モノ。ポニョ一色だった夏頃からTVスポットがガンガン流れてたのを見てもわかるとおり、相当の宣伝予算を使ってたよねえ。

量産型ロボット、ウォーリーはApple製品としては珍しく(笑)、耐久性が高い。なんと700年も動き続けるタフさは、バッテリーがヘタッてきた我がMacBook Airも見習ってもらいたいところだ。恋人(?)役のイブも、某WIredによるとジョナサン・アイブがデザインに関わったとか眉唾な感じの情報もあり、まあ、その手のネタが好きな人にとっては二重に楽しめる映画とも言える。

ロボットが主人公、さらには誰もいなくなった地球でのシーンが冒頭のほとんどを占めたりするのに、まったく退屈にならない。ロボットなのにロボットくさくない仕草や、シーンのつなぎ/構成の妙味か。監督のアンドリュー・スタントンは、ファインディング・ニモに続くメガホン(って言うのか?)。彼もすっかりピクサーのキーパーソンだねえ。

あえて個人的評価をつけるとすると、★3くらい。あくまでもピクサー作品としては、という但し書きが付きますがね。

いっぽうティンカー・ベルは、どちらかというと子供向けで、劇場内もほとんど家族連れで賑わってたわけですが、前田有一センセイが100点満点を付けたというからには観ずにはおれない。何十年も昔、浦安の某施設でピーターパンのナニしてたこともあったしな!

Tinkerっていう単語は、もともと職人とか、修理屋とかそういう意味なんだけど、なるほどこの妖精の生い立ち編とも言える本作で、そのへんも納得。妖精の国でいろんな道具を作ってたんだね。物語のほうは、確かに表面的には子供向け映画にありがちなんだけど、ライバルっぽいのがいて、挫折を味わうものの、仲間たちの友情と持ち前の●●●(適当に好きな言葉を入れてください)で乗り越え、大団円を迎える。

確かに、その過程に盛り込まれたメッセージは明快・ストレートで心に響く。特に大人にはね。前田センセイは「アメリカそのもの」とおっしゃっているが、個人的にはこれこそニッポンのサラリーマンの胸を熱くするんじゃないかなあ、とも思う。

4部作とか大風呂敷をひろげてるけど、果たしてどうなるか。尤も、つくりとしてはここで終わりと言われても納得はできるがね。でも、じつは皆が思ってるほどヒーロー的なキャラでは決してない、ピーターパンとの絡みは、ティンカー・ベル視点でこそ面白い話になるんではないかと期待してる。

DVDが出たら買おっと。字幕版でもう一度観てみたい。

『容疑者Xの献身』を観てきた

福山雅治のことを好きな男ってけっこう多いと思うんだよね。ルックスは最上なのに下ネタが得意なところとか。下ネタって意外と扱いが難しいんだけど、放送禁止ギリギリのところをサラリと流す。あの顔で。

キミのアソコを湖に例えると? とか素人に聞いたりすんなよ。なんて答えりゃいいんだ。阿寒湖とかピュアっぽいけど、浜名湖とかだと塩けが多くてヒリヒリすんぞ。おまけに自称オナニー公爵ってアンタ、最高だよ。

さて『容疑者χの献身』です。これ原作は何度読んだかわからんくらい読んだし(自慢じゃないが初版で買った)、勢いあまって、当時入院してた母親に送って読ませたりもしてる。その後ミステリー関係の賞を総ナメして直木賞まで取ってしまうわけだが、それも納得。東野作品としては一般の認知的には『秘密』かコレかってところじゃないですかね。

ミステリー作品としての構成批判もあったようだけど、この作品で使われてるトリックは、個人的にはオリエント急行とか、そのくらいのインパクトがあった。その行動を支えていたのが「愛」であるという点も、この作者らしいところだと思う。

で、福山くん。キミはもちろん原作読んだよね? その上でこの映画に主演してるわけだけど、実際のところどうなのよ。満足してるわけないよね。フジテレビとか東宝とか、偉い人たちはなんて言ってるか知らんけど、これからは映画やらドラマやらの企画そのものに、もっと口を出した方がいいよ。監督も、(決して自分でやろうとしちゃいけないけど)主演するなら自分で選ばせてもらいなよ。

まあ、それはともかく。

なにがひどいって、やっぱキャスティングかな。ほんの一部だけど、その一部が決定的にひどいのだ。いや、堤真一本人に罪はない。だけどカッコよすぎるだろ。演技で一生懸命キモ数学オタっぽくしてたけど、原作をどう読んだら堤真一をキャスティングできるんだか。いまからでも遅くはないから、カンニング竹山で撮影しなおしてくれんか。ヤツなら絶対ハマる。

松雪泰子も弁当屋にしちゃ眉毛細すぎだけど、元ホステスってことで許せる範囲。くどいようだが堤真一が石神とか、選んだヤツどんなチャレンジャーだよ。松雪&ダンカンなんかより、圧倒的に松雪&堤真一のほうがお似合いカップルじゃねーかっ!

おかげで鑑賞前から「堤真一があのラストシーンをどのように演じるか」だけが個人的注目ポイントだったわけだけど、辛うじて及第点レベル。ある意味、堤真一のうまさ。だけど、あのエンドロールまでの展開はないわー。泣かせどころで敢えて泣かさないとか、流行ってるのか? 福山くんが吐くべき、あのセリフもカットされてるし。

原作の存在が大きい場合、忠実に作るか映画ならではの演出を仕掛けるかは迷うところだけど、いずれにしても「原作に対するリスペクト」は絶対的に必要な要素だと思う。この映画の製作陣は、その精神を忘れてしまっていたとしか思えない。

わかってて見に行ったドMな私としては、予想通りすぎだったが、なじみの深い浜町とか新大橋界隈の映像が多かったのと、長塚圭史ふんするあわれな被害者の出身地が自分の故郷だったのがツボだった。以上。

『パコと魔法の絵本』を観てきた

アヤカ・ウィルソンのカワユサについ釣られて。

じつは『下妻物語』も『嫌われ松子の一生』も未見なんですよ。この監督の映画って、いつもこういうテイストなんでしょうかね。ギャグのセンスとか、脈絡なく散りばめられたアニメネタとかパロディーとか、合わない人はとことんダメだろうなあ。実際、年齢制限ありそう。R45くらいかなー。たまたま客席にお年寄りがいたからなんだけど、このおじいちゃん、楽しんでるかなと、ちょっと気になったんです。

土屋アンナはなるほど、こういう役をやらせたら右に出るものはない。役所広司もまあ、さすがといえばさすが。妻夫木聡とか、小池栄子とか、テーマ曲を歌うだけじゃなくてなぜか度々出てくる木村カエラとか、登場人物はおしなべてハイテンションなんだけど、テンションが高いにもほどがあるというかw

ドタバナな感じや派手な色彩、セリフや立ち回りにしても、そのまんま映画にしたらストレートなお涙モノになってしまうからってんで、こーいうパッケージにしたのでしょうねえ。おかげで、ベタなセリフもすんなり入ってくる。

あと、ドタバタすぎるおかげで、無茶なCGの使い方をしても全く違和感がない。それどころか、実写とCGの行き来が絶妙に仕上がってて、後半、登場人物たちが絵本『ガマ王子対ザリガニ魔人』の内容を演じるあたりは実によくできてる。

ま、このテンションに付き合えるかどうかが評価の分かれ目かなあ。おもしろい映画だとは思う。まあその、いろんな意味でねw

なおアヤカたんですが、普通にカワユイです。カナダ人とのハーフで11歳。3歳からモデルとして活動、ですか。さすがにダコタ・ファニング級ではありませんが、「ゲロゲーロ」とか絵本を朗読するあたりは無垢な感じ。子役にありがちな「いまが人生最大のピーク」にならないよう、がんばってほしいものです。

『おくりびと』を観てきた



いい映画です。で、これがモントリオール世界映画祭でグランプリを取ったり、米アカデミー外国語映画賞の日本代表作品として選出されるなど、内外で高い評価を得ているのは、とてもいいことだと思う。

派手なシーンや大きな仕掛けがあるわけではないけれど、このような極めて日本的な題材を扱ったものが、外国人にウケているということ自体が、なんだか不思議な気もする。かように人に勧めたくなる映画は珍しい。できれば多くの日本人に観てもらいたいと素直に思う。

日本人には、死に対する潜在的な穢れの意識があるし、差別に通じることもある。もちろんこの映画でも、そのあたりは触れざるを得ないわけだけど、扱いがうまい。主人公の妻や幼なじみの反応なんかは、非常に平均的な日本人像だと思うし。たぶん、このくらいの意識がちょうどいいんだと思う。突っ込みすぎると、それはそれで映画としては成立しにくいものになるからね。

納棺師という職業自体、一般人にとってはピンとこない。ただ、毎日のように、どこかでだれかが死んでいるのも確か。ひとりの人間にとっての身近な死というのはそんなに多くはないかもしれないけれど、だからこそ、いざそのときになり、誰かの死に直面すると意識は一変する。この映画は、そういった日常モードと当事者モードの描き分けが、とっても上手い。

どう生きたかに関わらず、死びとは等しく尊厳を有する。古来言われるように、死んだヤツの悪口を言うひとはいない。繰り返すが、この映画が海外で評価されているというのは、日本人の死生観が受け入れられているということであり、本当にウレシイことだと思う。カミカゼ・ハラキリだけじゃないんですよ。

テーマがテーマだけに、適度なユーモアも重要な要素。冒頭から笑わせてくれて、とにかく全体のバランスがいい。モックンや山崎努はもちろんのこと、個人的には笹野高史がよかった。ついでに言うと、ヒロスエのヘソもよかったですよ。

ここ数週間のトピック

やばいです。すげー忙しいです。海外出張から帰ってきてからも、ペースが戻せない。年度末ってことで来期予算とか臨時研修とか、なにやら不穏な雰囲気……。とりあえず最近仕入れたネタの寸評だけ、駆け足で。

●映画『SAW』はスゲーです

ずーっと見たい見たいと思っていながら、見られなかったSAWを見てきました。もうね、スゲーですよ、この映画。たぶんもう、そろそろ劇場公開は終わるんだけどDVDも3月には出るそうなので、もし興味がある人は必見ってことにしておきます。

いわゆるホラーとかスプラッターとかそのテのものかというと、人によっては物足りなかったり、あるいはそれ以上の恐怖だろうし……って、ああ! とりあえずなかなか言葉にしにくいんですけど、ラストでは「エエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!」と声が出そうになりました。それが驚きなのか、恐怖なのか、はたまた全然ちがう感情なのか、そのへんはとてもとても語ることができません!

●マンガ『俺と悪魔のブルーズ』はスゲーです

コミック誌『アフタヌーン』で連載されてるんですが、これまたスゲー。先日、ついに単行本<第一巻>が出てました。ブルースといえばロバート・ジョンソン、ロバート・ジョンソンといえばブルースの神様。その、ロバート・ジョンソンを「RJ」として、ブルースを主題にしたストーリーが展開されるんですが、実在の人物をモデルにしたフィクションって感じですね。

作者は、ヤンマガで「アゴなしゲンとオレ物語」というギャグマンガを連載している、平本アキラ氏。そのギャップもステキです。

十字路で悪魔と取引をすれば……というかのクロスロード伝説から、第一巻の終わりのほうでは、あのカップル強盗も登場。名作に育つ予感がヒシヒシと伝わってきます。

●理論社の、「よりみちパン!セ」シリーズはスゲーです

このところ、ジュブナイル系というかライトノベルというか、そういったジャンルの市場は密かに伸びているという話があります。私も子供の頃は、江戸川乱歩シリーズとか、朝日ソノラマ文庫とか、けっこう読んでました。んで、理論社という出版社が、「中学生以上のすべての人」を対象にしたシリーズを出してるんです。それが、「よりみちパン!セ」。私は、そのうちの『いのちの食べ方』を手に取りました。

日本人は毎日魚や肉、そして野菜などを食べている。で、例えば魚は築地のような市場、そして野菜についても、どのように流通してくるかは自然に理解している。だけど、肉は?? 肉はどこで解体されて、どのようにしてスーパーに並ぶのか?? 我々は、実はほとんどの人が中間プロセスについてまったく知ろうとしないし、それを不思議とも思わない。著者は、『A』などオウム関連の著述でも有名な森達也氏。そりゃあもう、良質なドキュメントですよこれ。

中学生以上を対象にしてるということで、漢字にルビが振られたり、本文も口語だったりしますが、その内容は硬質というか、ズシンと来ます。円周率が3とか、運動会は手をつないでゴールとか、最近の子供はカワイソウだなーなんて思うんですが、こういった本にはぜひ触れて欲しい。というか、自分の子供の頃にこんな本があったら……なんて思うと、中年になって腹が突き出たオッサンとしては涙をこらえるのが必死です(ようわからん)。

「学校でも家でも学べないリアルな知恵満載!」というキャッチコピーは伊達じゃない。他のシリーズの概要を見ても、これは大人こそ読むべきではないかという気さえします。

ふぅ、駆け足とか言いながら、イッキに出してしまった。あー、忙しいゼ!

寸止めで泣けず……映画『ターミナル』

年末で実家に帰っている間、特にやることもないし家にはネット回線もないので、自然と駅近くのシネコンに足が向いた。一般の映画館より料金も高いんで地元では人気が薄いようだが、ケータイで指定席が事前購入できるってのは楽ちんだよなぁ。

『ターミナル』(2004年 スティーブン・スピルバーグ監督)

トム・ハンクスとスピルバーグ。以前なら「エ〜」とか言って素通りするような組み合わせだが、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』は印象良かったし、CMも大量投下中、しかも感動作(?)らしいってこともあり、実は楽しみにしていた。年をとったせいか若い頃よりもさらに涙もろくなっており、この映画にもそれを期待していたのだ。

政治的な事情やなんかで空港に足止めを食らうということは、そんなに珍しいことではないのかもしれない。トランジット時のトラブルとかも、意外とあるもんだ。だが数週間、数ヶ月、さらには「住む」ともなると、もう立派な物語。この映画は、実際にシャルルドゴール空港に住んでいたイラン人がモデルのようだ。

東欧のクロコウジアからJFKに降り立ったビクター・ナボルスキーは、祖国で勃発したクーデターにより、パスポートが無効となってアメリカに入国することができず、ターミナルで足止めをくらう。警備局に支給されたミールクーポンをなくしてしまい、腹をすかせたナボルスキーは、カートのデポジットで25セントが戻ってくることを知り、ターミナル中のカートをかき集める。こうしてまずは「生活」の基盤を得る。

出世欲の強い警備局長は、ナボルスキーのような人間にうろつかれると自分の査定に響くと、あえて警備にスキを作り、空港から抜け出せるように仕向ける。その後は、不法入国で警察に引き渡せるからだ。だが、ナボルスキーはターミナルにとどまる。そして空港職員との交流や、渡米した秘密、そして果たされるべき約束とは……。

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おそらく実在する『ニュースの天才』的な毎日

川崎で映画を見て、浪花ひとくち餃子「餃々(チャオチャオ)」で各種餃子をビールで流し込む。いいなぁコレ。近所に欲しい店だわ。安いし。それにしても最近は、川崎で遊ぶことが多いなぁ。

『ニュースの天才』(2004年 ビリー・レイ監督)

1914年に創刊され、唯一、大統領専用機「AirForce One」に設置されているという老舗の政治雑誌、「The New Republic」。そしてその編集部で働く新進気鋭の記者、スティーブン・グラス。若干25歳の彼は、独特なセンスと切り口でさまざまな記事を執筆し、編集部内でも評価の高いバリバリのヤリ手である。

だがある日、「Hack Heaven」という記事にライバル出版社のネットマガジンが反応する。ある子供のハッカーが大企業を恐喝し、まんまと報酬を得ていたとする内容だが、ライバル社としては「なぜウチが知らないような記事を?」というわけだ。そこで調査を進めると……。

「真実を伝える」ことは、実は途方もなく難しい。NHKのニュースだから真実だというわけではない。言葉の使い方、ニュアンスの伝え方、話の順番、そして網羅性。意図的にそうしようと思えば、ニュースというものはいかようにもその姿を変えることができる。

例えば先の新潟中越地震。そりゃ被災者は困ってる。これから雪も降るし、エコノミークラス症候群で亡くなる人さえいる。震災のドタバタで暗躍する裏稼業の連中。罹災証明を受けられないがために現場を離れられない人たち。偏った救援物資。そして窓口だけでいくつあるのかわからなくなるような義捐金の受付。

これらを報じる記事は、あくまでも断片でしかない。受け手は、断片を集めることでしか本質に迫れないのだろうか。そして「真実を伝える」ことは、実は途方もなく難しいくせに、「作る」のは、実はとても簡単なんである。大なり小なり、日々のニュースはまさに作られている。

史実に基づいて制作されたというこの映画は、いろんな意味で身につまされる。この1年でネットの世界はブログを中心に大きく変貌を遂げたわけだけど、その片隅でこんなこと書いてる人間でさえそうなんだから、マスコミ関係者は必見ではないか(笑)。

個人的には、アメリカにおける雑誌編集部の描写がけっこう面白かった。一般スタッフでも個室あるのね〜とか、そういうレベルで。あと、会議なんかの仕切り方もいいねぇ。

年末公開映画の中では地味なのは否めないが、決して後味は悪くない。むしろ、こういうネタなのに最後まで緊張感を持って物語が進んでいくのは、なかなか爽快だった。

う〜ん、なかなか「ハウル」に足が向かないなぁ……。