踊ろうマチルダの新作が出る!

踊ろうマチルダ、待望の新作が9月20日に発売される。じつに7年ぶりという音源発売を前にして、ワタクシは猛烈な興奮を隠せないでいる。おそらくこのアルバムは相当な傑作になるはずであり、踊ろうマチルダという歌い手の評価を一段と高め、メディアでの露出も増え、一躍スターダムを駆け上がるのではないかと思っている。

…思っているのだが、おそらくはそうはならないだろう。なんのこっちゃ。

そう、ブレイクするのならとっくにしているのである。だが、しない。近年、私が好きなアーティストでブレイクした人は皆無だ。あの寺尾紗穂でさえ、まだ一般の認知度は低い。低すぎる。

だけども、もうそういう時代でもないんだなあ、とも思う。


日本の音楽シーンが不幸だと感じるのは、ヒットチャートがひとつしかないということだ。結局のところ、それは大集団アイドル系、ジャニーズ系、大御所ベテランバンドくらいしか認知されないヒットチャートだ。

羨ましいことにアメリカだと大昔からいろんなヒットチャートがある。

R&B、ブラック、カレッジ、カントリーetc.

それぞれが独立したチャートであり、独立した支持層があり、カントリーの大物なんかはムチャクチャ稼いだりしてるのだ。

日本はオリコンに毒されている。それが良いか悪いかで言えば、個人的には巨悪であるのだが、国土も狭いし人種や文化も多様性に欠けるし仕方がない部分もあるのだろう。

本も売れないがCDも売れない。ミュージシャンは小さなハコを転々としてライブを重ね、それでも数少ないファンに直接音楽を届けようとしている。踊ろうマチルダや寺尾紗穂は、まさにそういったタイプのミュージシャンと言える。

でも、これってそんなに不幸な状況でもない。ドラマのタイアップで一発当てて大金ガッポリみたいなビジネスモデルではないけれど、それでも地道な活動が確かな評価へとつながるという意味では、良い時代になったのかもしれない。

そういえば、竹原ピストルみたいな成功例もあることだし、踊ろうマチルダがそのうち企業CMに使われることだってあるだろう。あ、そういえば寺尾紗穂はCM界ではけっこう使われてますね。パナソニックとかキャットフードとか。

ああそうだ、何の話をしてるかわからなくなってしまったが、マチルダの新作は本当に期待が持てるということを書きたいのだ。


個人的には今のマチルダは第三期と位置づけている。

釣部修宏という個人名義、あるいはNancy Whiskeyというバンド形態、つまりはインディーズでのデビュー当時が第一期。

サポートミュージシャンの協力を得たりして、DVDにもなってるけど、チャラン・ポ・ランタンの小春ちゃんとかを従えてバンド編成を完成させ、NHKのドラマ『とんび』のED曲であり屈指の名曲、「箒川をわたって」を発表。踊ろうマチルダとしてのひとつのピークに達したのが第二期。

ワタクシが彼の音楽と出会ったのはまさに「箒川」からであり、それから足繁くライブにも通うようになったが、フィドル、ウッドベース、アコーディオン、それにマチルダのギターという編成は完璧の一語であった。この形態でしばらく続けてほしいと思ったのだが……そうはならなかった。

いろんな理由があるのだろう。結果的に、踊ろうマチルダはひとりでライブ活動を続けることになった。

昨年の暮れ、渋谷でライブがあったので参戦してきた。

びっくりしたのは、マチルダのギターのテクニックが驚くほど進化していたことだ。表現力が増したというか、これまでは基本的にキーを押さえながら、そこそこオカズを入れていた感じだったのが、ルート音をキープしながら変幻自在、左手動かしまくりのメロディアスなプレイとなり、唄との一体感が何段階も増した。

加えて、シュルティボックスというインドの楽器を手に入れ、こちらも大活躍していた。ペダルを踏んで空気を送ってやると特定の音を出し続けるというもので、3オクターブの音域を持つ。↓こーいうのね。

このシュルティボックスでキーの音を出し続けながら、ギターと唄を組み合わせることで、ソロとは思えないライブパフォーマンスを実現していたのには、心底驚いた。よくあれだけ楽器を弾きながら唄えるな、と。

ハーモニウムも駆使する一方、アコーディオンは封印されていた。これは、ずっとアコーディオンを抱えて唄ってきた「箒川をわたって」がライブでは演奏されないことにもつながり、そのへんは「強い意思」を感じた。「箒川」は確かに名曲なのだが、いまのマチルダの世界観とはちょっとしたズレがあるということなのだろう。

キャリアの中で最も注目された曲を演奏しないという決断は、重い。だけども、ライブで披露された新曲の数々は、その決断を肯定的に受け止められるほどであり、だからこそ今回の新作は間違いなく傑作であるとの確信につながるのである。そう、いまがまさに第三期真っ只中というわけだ。


あー、適当にツラツラ書いてたら疲れてきた。YouTubeで唯一公開されている新曲でも聴いてみよう。



あと、先日NHKで放送されていた南三陸でのライブから、「千と千尋」のテーマ曲をカバーしていたので、それも貼っつけておく。すぐ見つかって削除されるのかしら。

9月20日発売。前日にタワレコでフラゲする準備は万端である。

対応力

映画「男はつらいよ」が好きだ。ただ、そんなにマニアックに細かいところまで見てるわけではないんだが、毎週土曜日にBSジャパンでやってる放送をスマホに落として、通勤中に見ているくらいは好きだ。

あと、この本は家族が寝静まった夜中にスコッチなめながら読むと最高ですよ。



全部でシリーズ48作品あるわけで、いまや「やすらぎの郷」で老骨に鞭打って(全員か!)がんばってる浅丘ルリ子のリリー編なんかは好きだし、「寅次郎 夕焼け小焼け」も心に残る。

で、先日の放送で「寅次郎 子守唄」をやってたんだけど、思わずここに書きたくなるようなエピソードがあったのだ。といっても、どうってことない1シーンなんだが。


とある宿で寅さんが晩酌を楽しんでいると、隣の部屋から赤ん坊が泣く声が聞こえてくる。すると男の声。

「うるさいやつやなあ、静かにせえや、もう、飯くらい食わしたれや、頼むわ。静かにせい!しまいに海の中ほり込んでしまうぞ!」

などと乱暴な言葉。もちろん赤ん坊に通じるわけもなく、さらに泣き声が大きくなる。

「やかましい!見てみい、おまえのためにお汁までぬるうなってしもうとるやないか!」

この男、女房に赤子を押し付けられ逃げられたわけなのだが、そこで寅さんがスッと襖を開ける。

男を叱りつけるなんてことは、さすがにしない。とはいえ、優しく諭してやるくらいかなと思って見ていたら、寅さんはそんなことさえしないのだ。

「こっちきて一緒にやんねいかい? ひとりじゃ酒も旨かねえや。な」

そういって、男を誘って一杯やるわけである。

ああ、こういう対応を取れる大人になりたいなあ、と思った次第。


葛飾柴又には行ったこともないが、そのうち機会があれば訪れてみたいなあ。

『AIの遺電子』のこと

AIは「アイ」と読む。ついでにいえば、「遺電子」はもちろん遺伝子のもじり。

なんというかなあ、未来型ブラックジャック的な? でも詳しい内容紹介など野暮だからしないけど。


この作品は自分にとってはちょっと立ち位置が一般の面白いマンガとは違っていて、作者はかつて私がいた職場でITニュースの記者をやっていた方なのだな。

直接の面識などもちろんない。ただ、かつての上司とは接点があるらしい。

そんなわけで一方的に親近感を抱いているのだが、作品の素晴らしさは別格だ。連載してるのは少年チャンピオンかな? 単行本でしか追ってないけど。


作者の方がかつて記者として活動していたサイト、ITMediaでいくつかの作品が読めるので、興味がある方は確認してみてほしい。

http://www.itmedia.co.jp/keywords/binaryfield.html