母親の胃がん手術と入院の記

今年のシルバーウイーク前、母(78歳)に胃がんが見つかった。幸いにも初期というかステージ1だったようで、即入院して手術をという話になった。

検査入院を経ていったん帰宅し、そのタイミングで帰省。9/18から再入院し9/20に手術というスケジュールが組まれた。

いまはもう無事に退院しており、検査結果も良好で転移は見られない。体重は7キロほど減ったそうで、痩せてスッキリしているが、食欲もあり便通も良好。日常生活は問題なさそうだ。

ちなみに退院したのは11/5であり、都合7週間と入院期間そのものは長丁場だった。

理由は、手術後の食事慣らしに2回ほど失敗したためだ。

胃の摘出後は点滴で栄養補給しながら、まずは経口で水分を摂る、飴玉を舐める程度から始めて、医師の許可が出れば重湯、お粥と食事のレベルを徐々に上げていくわけだが、その段階で胃から腸に食べたものが下りていかなかったのだ。

そうなると胃に残されたものをドレーンし、キレイにしてからまた点滴からやり直しとなる。

病院のサイトによると、胃の摘出手術をした人の平均入院日数が4週間と記載されていたが、食事慣らしが上手く行けば2週間くらいで出られるようなので、都合3セット行った母親であれば入院期間の長さも仕方がないのだろう。

むしろ、時間をかけて食事を摂れるようになっていったことで、退院後の経過が良好なのかもしれない。

ちなみに退院時の支払いは30万円ほどだったと聞いた。三割負担で、入院中は相部屋だった。がん保険には入っていたようなので、いま保険会社と書類のやり取りをしている。兄と私とで、それなりの額を退院祝いとして贈ったが、こういう類の出費は初めてであり、我が家計にも響いた(ていうか、飲みに行く回数をちょっと減らした)。

母の入院中、心配だったのは一人残される高齢の父親である。シルバーウイーク中は妻とともに家政婦モードで過ごした。とりあえず洗濯機の使い方を教え込み、帰京前には大量のレトルト&フリーズドライ、サトウのごはんを買い溜めておいた。さらに鍋いっぱいの芋の煮っころがし、特製ビーフカレー(我ながら美味)を仕込み、漬物類もタッパーに入れて冷蔵庫に残した。

シルバーウイーク後、調整がつく週末はできるだけ帰省し、様子を見に行った。母親はとにかく退屈そうだったので、娘の動画をDVDに焼き、ベッド脇のテレビで見られるようにしてあげた。本やマンガも持っていったが、照明が暗いので読む気にならないと、もっぱらそのDVDとテレビを見て過ごしたらしい。

退院後もまとまった有給を取り、先日行ってきたが、先に書いたように意外と元気でとりあえずは安心である。刺し身などナマモノも少量なら平気のようだ。

医者からは鉄分を摂るようにと言われたそうで、鶏レバーをウスターソースで煮込んだだけのシンプルな料理を努めて食べていたが、コレがけっこうイケる。みりんを少量、あとは本当にソースで煮るだけで良好なアテとなるため、毎夜のようにご相伴に預かった。

母の手術後、執刀医から摘出された胃を見せてもらった。「ここがガンなんですが、わからないですよねぇ」と指さされたが、確かにわからない。なんというか、程よく切って煮込みにして出されたら違和感なく食べちゃいそう、などと不謹慎なことを考えたりもしたものである。

昨今、某DeNAのWelqなる医療情報サイトが炎上して閉鎖となった。母親の胃がんが見つかって以来、医療系サイトを見まくったが履歴を調べてもWelqは出てこなかった。まあどうでもいい話ですがw

以上、とりとめもなく書き殴った次第でございます。

2016パ・リーグ総括、あるいはマネージメントの難しさについて

CSの最後まで見て、つくづく今年は大谷の年だったのだなあと思った。日ハムの脅威の追い上げと追い越しも、要所要所で大谷パワーが炸裂したわけだし、他にもいい選手がいっぱいいるのに、今年に限っては大谷以外はあまり印象に残っていない(強いて言えばレアードかな)。MVPぶっちぎりってのも当然だ。

栗山という人については、ここまでいい監督になるとは思っていなかった。日ハムのファンに言わせれば中島聖域問題を筆頭に愚将のレッテルを張る人もいるようだが、いやいや、そんなこと言っとらんで周りを見渡してみい、ってことだ。実際、中島はそこまで悪くないしね。

仮にホークスがシーズン優勝していたとしても、おそらくCSファイナルで「ぶっ潰され」て日本シリーズには出られなかったんじゃないかな。それくらい大谷を頂点とした強いチームを栗山監督が完成させたということだ。


そのホークスだが、優勝を逃した要因はいろいろあるものの、工藤本人も自ら語っていたように、純粋にチームマネージメントという点で劣っていたというのが私の見立てだ。劣っていたどころではない、明らかに問題点が多く、及第点にも至らなかった。プロ野球の監督に人事考課があるかどうかは知らないが、Bマイナスどころか、Cしか付けられないなあ。俺が上司だったら。

昨年があまりにもうまく行き過ぎて、悪い面が一切見えなかったのが、今年はその綻びが一斉に顕在化したということなのかな。漏れ出る報道すべてが信じられるわけでもないが、火のないところには煙も立たないわけで、全試合熱心に見ていたわけでもないのに「アレッ?」という謎采配がやけに目立った。

開幕戦の5番明石とか、交流戦でサファテが打席に立つことになっちゃった交代指示とか。

選手の上げ下げについても、斐紹をキャッチャーとして育てるっていう方針をアッサリ諦めちゃうあたり、ありゃ周囲の人間も白けるだろう。教育係を仰せつかったとされる和田とか攝津が匙を投げたのかもしれないが、それならそれで、リカバリープランがあったのかどうか甚だ怪しいし、そもそも見立てが悪いってことだわな。

各種報道でも、自らが城島を育てた的なエピソードを都合よく使ってたのが、シオシオになっちゃったしね。城島だってスクスク育ったわけじゃなくて、王監督に椅子投げつけたり紆余して曲折した過去もあったわけだから。


というわけで本題はここからなんだけど、だからこそ来シーズンの工藤監督には大いに注目したいと思っている。

マネージメントを預かる人間が、要は調子をこいて下手を打ったわけである。会社組織なんかを見てると、同じポジションのままで再度評価される人ってあんまりいない。

達川おじちゃんが補佐に入るにしても、実は相当いろんなことを努力しないと難しいんだよね。信頼関係をイチからきちんと構築し直して、その上で戦略を立てて、結果を出さなきゃならない。

なかなかに難易度が高い。失敗だらけのマネージメント職としては、ある種の親近感さえ湧く。

来期は覚醒した大谷を中心に安定した戦力を誇る日ハムが中心となろうが、監督のマネージメント力という視点で楽しめればと思っている。




日本シリーズ? あぁ、そんなのもありましたねw

この世界の片隅で愛を叫ぶ(適当)

好きな映画はたくさんある。クロサワの「生きる」をこないだ見たけど、最後のほうは泣きすぎて体が痙攣しそうだったし、いまだに落ち込んだときは「ロッキー」で気分を立て直したりもする。BTTFは定期的にリピートするし、ピクサーやディズニーも大好き。もちろんジブリも。そうそう、寅さんも忘れちゃいけない。あれはバイブルだ。

だけど、自分にとって特別な作品っていうのはやっぱりあって、僕にとって例えばそれは「ニューシネマパラダイス」だったりするんだけれど、いまだになぜあのラストシーンで滂沱の涙が溢れてくるのか、それをうまく言語化することが自分にはできない。

もちろん、トトとアルフレードの絆があのシーンに凝縮されてるわけだけれども、そんな陳腐な言葉では到底追いつかないほど、あの映画が自分に与えてくれた感動というものはとてつもなく大きいわけで。


何が言いたいかというと、「この世界の片隅に」も同様に、自分がこれまで見てきた素晴らしい映画の中でも特に異彩を放つ、言語化できないほどの魅力に溢れた作品なんだってこと。



立川のシネマシティではパンフは売り切れてた。全国的にも公開3日目で完売してたらしい。

ネットでもバズってるが、多くのシネコンでエンドロールが完全に終わったあとに拍手が起きたようだ。

そういう映画なのだ。


できれば原作コミックは読んでからのほうがいいかもしれないが、見てから読んでももちろん問題はない。

コミックにはコミックの表現手法があり、映画には映画のそれがある。本作については各所で言われているように、原作つき映画としては桁外れのレベルでの再現性であり、映画ならではの表現手法によって多くのシーンで原作を凌駕している。これはこの片淵さんという監督の素晴らしい仕事によるものだ。

例えば、これはネタバレにはならないと思うので書いてしまうが、呉が空襲を受けるシーンがあって、当然日本軍も攻撃するわけだが、そのときの対空砲火の色がやけにカラフルなのだ。原作にはない脚色なのかと思っていたのだが、帰宅後に調べたら以下の対談に詳しく書かれていた。ちょっとだけ抜粋しよう。


呉の空襲に遭った当事者の手記を読むと「当日の対空砲火の煙は色とりどりだった」と書いてあるんですよ。これは、その日やってきたアメリカ軍のパイロットの手記でも同じように「色とりどりだった」と書いてあるんです。ただし、どちらも「色とりどり」なんですが、何色と何色だったというのは合致しないんですよ。しかもそれが二人ではなくもっと何人もいて、茶色と書いている人もいるし紫と書いている人もいるし、赤もピンクもいました。本当は何色なのかということで調べを進めたところ、日本がどれぐらいの技術水準を持っていたのかということを戦後にアメリカ海軍の人が来て調査をするんですが、その英文レポートの中に「カラーバーストプロタクタイル」についてのレポートがあって、「空中で爆発して色を染めるための染料が5種類ある」と書いてあるんですよ。白黒も合わせると、全体で6色の対空砲火があったというわけです。

色とりどりにする理由は何だったのですか?

これは、軍艦がどの対空砲火が自分の撃ったものかを識別するためです。呉の軍港には多数の軍艦がいて密集しているので、色を分けないと自分がどこへ撃ったかわからないので、色とりどりになるんです。ところが、陸上砲台は白と黒しか持っていないんです。つまり、日本の他のところでは色とりどりにはならず、呉だからこそ色とりどりだったというわけです。

http://gigazine.net/news/20161111-sunao-katabuchi-interview/



このシーンは主人公の心象表現においても重要な意味合いがあるところで、まさに感服つかまつりである。ホントこの人は徹底的に調査して映画を作ったのだなあというのがわかるエピソードだ。


今年はシンゴジに象徴されるように、映画の当たり年だ。チマタでは「君の名は。」がメガヒットしており、もちろん私も見たには見たが、あれは本当に残念な映画である。ここでは詳しくは書かないが(個人の感想です)。

おそらく「この世界の片隅に」が「君の名は。」を興行収入で越えることはないと思うが、この映画に関しては胸を張って2016年の最高の1本と言えるし、世界中の人に見て欲しいと心底言える作品だ。


僕はこの映画のために有給を取り、妻を伴って立川のイタリアンレストランで昼のコースを堪能し、その後、シネマシティの極上音響で見ることができた。

見終わったあと余韻に浸りながら、この映画を1人で見なくてよかったと強く思った。大事な人と見ることができて本当によかったと心底思った。帰路、私もカミさんも言葉少なであり、彼女もこの映画の余韻に浸っていたのだろう。尤も、昼に食べたハンガリー産ポークのナントカ風のことばかり考えていたかもしれないのだが。