信州上田を往く〜大叔父との対面を果たす

別所温泉を後にし、塩田平をのんびりドライブ。

聞くところによると、このあたりは年間降水量が極端に少ないため、あちこちに溜池がある。なるほどカーナビの小さな画面にも、大小さまざまな池が確認できる。田んぼの畦には、アヤメが咲いている。風光明媚。

ちょうど田植えの時期。日曜だというのに(あるいは日曜だからか?)田んぼ仕事にいそしむ方が大勢いた。

向かったのは、今回の旅の目的地でもある無言館。ここは、第二次世界大戦で戦場に散った画学生の遺した絵画が展示されている。以前このブログでも書いたが、祖父の弟の自画像が、こちらで所蔵/展示されているのだ。

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丘の上に佇む無言館は、入場時ではなく出口にて料金を支払うシステム。コンクリート打ちっ放しの館内は空気がひんやりとしている。日曜日の朝ではあるが予想以上に混み合っており、意外と若者も少なくない。

大叔父はどこかと探すでもなく、まずは順番に絵に見入る。戦没者というくくりではあるものの、こう言ったら失礼だが絵としてのクォリティーがどれもこれも非常に高い。それがゆえに、作品に添えられたエピソードであったり、展示されている遺品や手紙が痛切な響きとなり胸に刺さる。

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ひとまわりしたものの、目当ての作品が見当たらない。まさか見落としたかともう一周。出口で係の方に尋ねると、別館の入ってすぐ左手にあるという。名前を告げただけで展示位置まで即座に出るあたり、さすがというかありがたいというか、なんだか嬉しくなった。

「傷ついた画布のドーム」なる別館は、無言館に至る丘の中腹にある。入ってすぐ左。そこに、確かに画像でしか見たことのなかった「彼」の自画像が展示されていた。

多くは語るまい。ただ、二次元の画像ではまったくわからなかったが、ところどころ絵の具が盛り上がり、それが複雑な陰影となり、独特な表情を出している。

会ったことなどない、祖父の弟。自分によく似た顔を眺めながら、ずいぶんと長い間、その場で過ごした。

外に出て初夏の木陰のベンチに腰掛け、気の早い蝉の鳴き声の中、実家に電話を入れた。大叔父との対面を報告し、その場を後にする。

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図録的な関連書籍を3冊購入。大叔父の絵は3巻目に掲載されている。少しずつ読み進めようと思う。

と、今回のエントリを書くにあたって、大叔父の名前で検索していたら、コスモ教育出版というところで出している、「理念と経営」なる雑誌の最新号で、無言館の館主(水上勉の息子さん)が大叔父の自画像について語っているらしい。なんたる偶然。思わず取り寄せの手配をしてしまった。こういうの、なんだかウレシイ。

「信州上田を往く〜大叔父との対面を果たす」への4件のフィードバック

  1. 墓参り以外にも、ご先祖と巡り会えたという
    レアなケースですな。

    羨ましいことです。

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