晩秋札幌往訪の記③

レンタカーを借りたので、どっかそのへんドライブでもすっかという話になった。

さりとて、あんまり遠くには行けないし近場やろと、地図で適当にアタリを付けて野幌森林公園で散歩でもしようかということに。


サクッと到着して駐車場にクルマを停めると、なにやら周囲がモノモノしい。遠くからシュプレヒコールのようなものが聞こえてくるし、テレビの取材クルーみたいな集団もいる。

その日、11月7日はここ野幌森林公園にある北海道百年記念塔の解体が始まる日だったらしい。あとで調べてわかったことだが、この塔を維持するか解体するかでけっこうモメており、解体反対派はクラウドファンディングなどもしたようだが、結局北海道としては老朽化を理由に解体することに決定。

今後50年維持するのにかかる費用が29億円、いっぽうで解体するのに4億円。

反対派は、維持のための費用のエビデンスが乏しい点を指摘している。仮に適正だとしても年間6000万円なわけで、市内の観光資源同様、何らかのマネタイズを工夫すればどうにかなるだろう、50年にわたり愛されてきたシンボルを簡単に壊されてはたまらん、ということらしい。

道としては解体後に新しい施設の建設を予定しているみたい。この手のスクラップ&ビルドは地方に限らずよくある話ではあるが……。


反対派のデモがかまびすしい中、ともあれ森を抜け、奥へと分け入った。

北大キャンパスは紅葉真っ盛りだったが、ここ野幌森林公園はピークを過ぎ、落葉が進んでいる。それでも晩秋の森は気持ちがいい。透明感ある空気の漂う原生林(+植樹林)をテクテク歩く。

適度な起伏や地形の変化がおもしろい。ここはクロスカントリースキーとかやる人にとっちゃ冬は楽しかろうなあ。

時折、チチチと鳥の声。シマエナガちゃんじゃね?などと笑いつつ歩く。カカカカカカと、アカゲラが木を小突くような音も聞こえてくる。

いいなあココ。


北海道という名前が付いたのは1869年。百年後の記念事業として塔を建てることになったのが1968年(私が生まれた年だ)。塔が完成したのが1970年。それから50年以上が経った。

部外者の観光客目線で言えば、なにかの記念碑的なもの、それも巨大な建造物をもって寿ぐという発想は高度成長期っぽいマインドであって、これだけ素晴らしい森を擁する場所なのだから、今後200年後、300年後のことを考えてローインパクトかつサステナブルな方向に舵を切るのであれば、そのほうが説得力があるとも感じる。


反対派には申し訳ないけれど。

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