電子ブックの未来はどこに〜その3

問題は、たぶんハードウェアだと思うのです。

だって、携帯電話がいくら優れたデバイスだろうと、そこで一般人が読もうと思えるようなコンテンツには、猛烈な制限がかかる。だって、あのサイズの表示領域で文字が読める解像度となると、どうしたって情報量に限界があるからね。

やっぱり、ケータイだと「恋空」みたいなフォーマットの作品がフィットするんだろうし、あのスタイルが今後、文字ベースの表現として主流になるかと言えば、さすがにそうは思わない。きっと、テクノロジーの進化のほうが速いだろうからね。

ポケベル世代の断層、と聞いてピンと来た人なら話は速いかもしれないが、要するに、文化がハードウェアによって囲われるというのは今に始まったことではない。ポケベル打ちじゃないとメールが書けないという女性たちがひっそりと存在するようにね。

というわけで、携帯デバイスで読書やマンガというのは、一定のマーケットはできるだろうけど(すでにできてるか)、例えば週刊モーニングが丸ごと移行するとか、新刊の単行本を通して読むとか、そういうレベルの話にはなかなかならないと思う。単なる物理的な、ハードウェアの問題なので致し方ない。

そう考えると、ソニーのブックリーダーとかKindleみたいなサイズってのは、「妥協できるギリギリのライン」ってことなんだと思う。あの表示領域と一画面あたりの情報量という意味でね。「本読み」を考えるとこうなりますよね、っていう回答だ。実際、ハードウェアとしてもよくできてるし、さらに単なるデバイスじゃなくて、コンテンツあってのデバイスということもよく理解されて設計されてると思う。

でも爆発的には売れてないってのは、理由があるんだろうなあ。いろいろ言うこともできるけど、結局のところ、ひとは読書のため「だけ」のデバイスに何百ドルも出すほどの価値を見いだせない、ということなんだと思う。

では希望はないのかというと、そうでもない。昨今話題の、Netbookと呼ばれるカテゴリーがあるけれど、ああいったことに象徴される、「スペックとしては必要十分なレベルの低コストデバイス」が電子ブック端末になっていくんじゃないかなあ、というのがこのところの夢想のネタなわけで。

要するに、最先端のCPUなんかはいらないけど、そこそこ動いて低消費電力で、しかも安くてやろうと思えば何でもできちゃう、というところが大事。

例えば、OLPC(One Laptop Per Child)ってプロジェクトがありますが、XOXOっていう第二世代と呼ばれるモデルなんかは、コンセプト的に非常にいい感じ。2010年までに75ドルで提供とかいうけど、リアリティーあるよね。

(以下、blog.ted.comより)



あとは、デバイスそのものに革新性を持たせるというベクトルもアリですよね。クニャクニャにできる、まるで紙のようなデバイス。こっちのアプローチでは、例えばPlastic Logicなんかが面白いモノを出してる(Wiredの記事)。E Ink系というか、教育やビジネスの市場でも可能性ありそうだよね。

さて、まとめに入ります。

イマドキの若者は、テレビを見ながら携帯を常にいじってるんだってね。ホントかどうか知らんけど。

でも、思い当たるフシもある。私はテレビ見ながら携帯はいじらないけど、ノートPCを開いてることはよくある。野球見ながら2chの実況スレなんかを覗いたり。ドラマなら、俳優をwikiで調べてみたりとか、普通に何かを検索したりね。

仲間うちでは「コタツトップ」なんて言ったりもするけど、OLPCのXOXOみたいなものが100〜200ドルくらいで買えて、音楽や動画なんかも楽してめて、子供やメカに詳しくない人にも使いやすくて、さらには電子ブックリーダーにもなる、というのが「とっかかり」としてはいいんじゃないかなー、なんて思ったりします。

話題のNetbookなんかは、まだノートPC臭が強すぎる気がするんですが、機能的にはiPhoneやAndroidのようなハンドヘルドと同等でもよくって、もうちょっと画面が大きいもの、言ってみればA5くらいのキーボードレスデバイスってことなのかなあ。

すでにアメリカでも紙メディアの会社はエライことになってるけど、日本の新聞社も軒並み減収減益が騒がれてきた。まだ時間はあるようでいて、意外と待ったナシなんだよなあ。はやいとこ、何らかの打開策がワールドワイドで起こらないと、例えば新聞社や出版社は淘汰どころかガンガンつぶれて、きちんとした取材力をもとにきちんとしたコンテンツを作ることができる、作り手そのものがいなくなってしまう。

作家はインディペンデントでやっていけるだろうか。いけるかもしれない。でも、仮にいいものを生み出すことができても、作品をフォーマット化し、デザインし、プロモートし、ディストリビュートするのは1人ではツライ作業だ。iTunesStoreのようなサービスがこれだけ定着しても、インディーズとそうでないのとでは大きな差がある。

あるいは、業界全体が、この猛烈なスピードの中で一回リセットされたほうがいいのだろうか、とも思ったりするけれど……。

最後は酔っぱらいっぽくなっちゃったけど、本稿はこれにて一旦おわりまーす。ま、CES2009開催前の独り言ということで。