池上永一 『ぼくのキャノン』

ようやく、年末進行地獄も出口が見えてきたか。週末は、月島のあんこう鍋@ほていさんを堪能したかと思えば徹夜でいろいろ作業したりと、かなり体をいじめてしまった。「じゃ、あとはヨロシク」と帰ってちょっとだけ寝て、出社しても……まだ終わってねぇでやんの。まあいいけど。

池上永一 『ぼくのキャノン』

戦争中、帝国陸軍によって村に設置されたキャノンを崇め、3人の老人によって支配されている沖縄の村が舞台。大戦によって焦土と化した沖縄だが、この村は驚くべきスピードで復興し、豊かさのレベルがズバ抜けて高い。もちろんそれには秘密がある。老人の孫たちが、謎に挑む。

評価が難しい本、というのが最初の感想。冒頭、1/3くらいは正直読むのが苦痛だった。なんというか、「滑ってないか?」感が非常に高かったのだ。おかげで何度、途中で読むのをやめようと思ったことか。それでも、後半以降は持ち直したんだけど、この作者のユーモア感覚には、たぶん最後までなじめなかった。

作者の池永永一という人は、沖縄本島出身の石垣育ち。「沖縄戦はそろそろ物語になる時期に達した。僕でなければ、誰がこれをやるの?」とオビで言ってるんだけど、「なるほど」と素直に思う。沖縄の戦争が絡んだ話というのは、どうしてもある一定のトーンでしか語られてこなかった。最後の「戦後」が、まだ沖縄には残っているという感覚は、おそらく理解されやすいのではないか。

では、作者の目論見は達成されたかというと、そういう視点で見ると殊更「構えて」しまうのが、僕のような無責任な観光客的視点のヤマトンチュではないかとも思ったり。作者は1970年生まれで自分と同世代だが、おそらく親の世代の影響もあるのだろうな、きっと。

もう一冊、読んでみようと直木賞候補にもなった作品を入手。そういう意味では、気に入った書き手なのかもしれない。

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