中身はなんてことない、田舎に暮らすばあちゃんの日常。だがそれが、じつに佳いのですね。
とりわけ、初回のエピソード。これはもう、高校生の頃、初めて読んだとき大変なことになったのをよく覚えている(泣けて泣けて)。
当時はバブル真っ盛り。世の中全体が浮かれていた中、こんな素朴すぎるテーマの作品は逆に目新しかった。
残念ながら世間での評価は芳しいものではなく、単行本が2冊出た後は、おそらくは絶版になっていたはず。茶色いクラフト紙の装丁からは、作品同様の温もりが感じられた。
それが、いつの間にか復刻されていたとは! しかも、またしてもエンブレ。単行本未収録作も網羅されているのがウレシイ。
エンターブレインのコミック部隊については、妙なシンパシーを感じている。新井英樹に対する力の入れっぷりでもよく分かるのだが、この作品のような、ある意味、大手出版社に見放された(?)味わいのある良作を復刻してくれるあたり、じつに目の付けどころがいい。
ググったらわかったのだが、作者の法月理栄さんは、静岡県島田市出身(在住?)らしい。どうりで、作中の方言に親近感がわくわけだ。なんとなく、長野県南部の伊那とか飯田あたりをイメージしてたんだけどなー。
島田といえば大井川。果たして利平じいちゃんが通っていた温泉とは、寸又峡か川根温泉か。
私は死んだばあちゃんには、父方も母方にも、よく怒られもしたが本当にかわいがってもらった。昔の人の説教というのは、いちいち説得力があるのだよね。いまだによく覚えている。
そんな、年寄りに思い入れのある人には、ぜひ読んで頂きたい作品です(とはいえ、下のアマゾンのリンクだと上巻は品切れなんだよね、増刷かからないのかな……)。
なお静岡のゆるキャラ、ふじっぴーも法月さんのデザインらしい。こ、これは知らなかった……。