刀??士 南非
Originally uploaded by West Zest
事件や事故もなく、無事にパラリンピックが閉幕した。選手のみなさんおつかれさまでした。
今回のパラリンピックは、毎晩教育テレビでダイジェストを放送してくれてたんで、初めて映像を楽しむことができた。NHKにはいろいろと言いたいこともあるんだが、やはりメダル至上主義的な放送はどうかなーと思う。いろんな競技を、もっとできるだけ見せてもらいたかったというのが本音。そりゃまあ、金メダル、あるいはそれに限りなく近いレベルの競技を優先したくなる気持ちもわかるんだけど、それじゃあ民放と変わらんじゃないかね。
メダルを取った人のインタビューやドキュメントっぽいものも、狙いとしては理解はできるけど、一方で、多くの日本人が、競技そのものに驚き、そのエンターテインメント性に気がついたんじゃないかと思う。いつまでも、障害者だからという視点でいるから、無意識のうちにマイナー競技として捉えられてしまうし、典型的なお涙ちょうだい式の伝え方に留まってしまう。
もちろん、それもひとつの要素ではある。人間だもの、苦難を乗り越える姿には感動するし、応援したくなるし、また我が身を振り返ったりして、普段のスポーツ観戦とは異なるおもしろさを発見したりもする。
ここは日本人が苦手とするところだけど、もうひとつ上のレベルに観る側、見せる側がいかないと、実際に競技するひとたちのステージがいつまでたっても変わらないことにもなりかねない。
すでに欧米では、パラリンピック競技はプロ選手がいたりして、意識のレベルは日本とは段違いだ。4年に一回注目すればいいという話ではなくて、きちんと強化を考え、選手の生活を考えている。要するに、社会の一員としてしっかり捉えてるってことなんじゃないかと思う。転じて日本を見ると、まだまだ発展途上としか言いようがない。
実際、パラリンピックは(かいつまんでしか見られなかったが)とても面白かった。新たな発見があった。車椅子バスケなんて、「車椅子に乗ってバスケットするのね、ふーん」くらいにしか思っていなかったが、あれはもう、まったく別モノのスポーツだ。本格的な格闘技に近い。ちょっとナマで見てみたくなるくらい激しく、そして面白い。
前回アテネで銅メダルだった女子ゴールボールは、予選リーグで2勝するのが精一杯で、決勝トーナメントに進めなかった。そのせいかどうか、最後まで映像が流されることはなかった(と思う、見逃してたかな?)。浦田理恵ちゃんも健闘むなしく、海外勢の高い壁に屈してしまった。
最近、ゴールボールでは、フラットなシュートよりもバウンドさせたシュートが主流となり、ブロックの難易度が飛躍的に上がっている。そのため、総合力を身上とする日本チームは、体格に勝り強烈なシュートを打つ欧米勢に相当苦戦したんじゃないかと推察している。ディフェンスの司令塔だった理恵ちゃんは、相当悔しかったのではなかろうか。おまけに、じつは日本のエースは肩を壊しており、シュートを打つ手を逆にして臨んだという不利もあった。このあたり、きちんとしたコンディショニングができる環境や人材が確保できていれば、と思うと残念だ。
パラリンピック競技には、とにかく金と人の問題が常につきまとう。
個人的にも注目していた、男子車椅子円盤投げの大井選手。このひとは、マグロの遠洋漁業で首の骨を折ってしまい車椅子生活になってしまったのだが、なんと60歳である。年齢もさることながら、愕然としたのは、ふだんの練習。場所は町内の運動場で、大井選手が1キロの円盤を投げると奥さんがそれを拾って持ってくる、というもの。しかも奥さんも下半身に障害があり、普通には歩けないという。投げては拾って、投げては拾ってを繰り返す老夫婦。結果、見事に銅メダルを獲得した。
これは美談なんかでは、決してない。日本陸連よ、4継リレーで銅メダルは確かに素晴らしかったが、本当にこれでいいのか?
まあ、何事も一気には進まないだろうから、少しずつでもいいのかもしれないけれど、4年後のロンドンではもっと環境を整備してあげてほしいと切に願うのであった。