開演前のひととき。ナナメ前にはしりあがり寿センセイがいらした。
もともと演奏力の高いバンドではない。だから、これまでライブに出かけるということは一度もなかったのだが、「無期限活動休止」が伝えられたとき、せめて最後の姿は見ておきたいとチケットを取った。
大まかなセットリストや演出については大阪公演のことを事前に知っていたので、なるほどという感じ。客をステージに上げるというライブは初めて見た。「かしぶち哲郎ダンス教室」で本当にダンスを踊っていたのにはビックリというか微笑ましいというか。
肝心要のところでミスったり、やっぱりご愛嬌なバンドだよなあ、という醒めた視点とは裏腹に、じつはところどころで涙腺がゆるみ、涙をこらえるのに必死だった。
ていうか、オープニングの「鬼火」をナマで見られただけでも、もうお腹いっぱいである。緞帳前の三人囃子。最新作コーナーも楽しめたし、Beatitudeでのキャノン砲はブルブルっときた。
「振り返ってみればあの作品がラストアルバムだった」「メンバーの誰かに不幸があってもう再結成は叶わない」
そんなケースはいっぱいあるけれど、35年も活動して、きちんとした形で「これが最後だよ(一応……)」と、アルバムもライブもやれるというのは希有な存在だ。
ちょっと前のエントリーでも書いたけれど、最後のアルバムはあまりにも多くのメッセージが込められていて、素晴らしい曲ばかりなのに聴くのはちょっと辛かったりする。辛いといえば、会場限定のアナログ盤が売り切れてたのがなぁ……。
彼等の音楽に出会ったことで、自分の人生は明らかに変わった。そう思える、数すくないバンドだ。知らなければ知らないで、幸せな人生を歩んでいたかもしれないが、知らないで過ごしていたら、それはそれであまりにも不幸すぎる。
いずれまた、時間があったらムーンライダーズについて書いてみようと思う。