鑑識レコード倶楽部のこと

鑑識レコード倶楽部という「実験」に参加してきた。今年の夏の、暑い盛りの頃のこと。場所は、下北沢のB&B。

写真は左から、ムーンライダーズの鈴木博文さん、翻訳者の柴田元幸さん、カーネーションの直枝政広さん。

なんと、博文さんと柴田さんは高校の同級生だったんだね!しかも日比谷高校、超名門!

てっきり、直枝さんつながりでの参加かと思っていたのだが、この3人はズブズブの(?)関係だったんである。

柴田元幸×鈴木博文×直枝政広
「黙ってレコードを聴く会をじっさいにやってみます」
『鑑識レコード倶楽部』(アルテスパブリッシング)刊行記念
2022/07/18 Mon 18:00-

本書の刊行を記念して、この「鑑識レコード倶楽部」をじっさいにやってみることにしました。翻訳者の柴田元幸さんをホスト役に、推薦コメントを寄せてくださった直枝政広さんとmoonridersの鈴木博文さんのお二人をゲストに、そしてお客さまにも参加していただき、持ち寄ったレコードを順番にかけていって、でもアーティスト名と曲名以外はだれも何も喋らないという、なんとも奇妙なトークイヴェントです。

当日自身のレコードをかけたいという方は、お好きなシングル盤(ジャンルはロックやポップスにかぎりません。3分前後でしたらOKです)を1枚ご持参ください(先着10名様限定のチケットをご購入下さい)。ライバルとして登場する「告白レコード倶楽部」「認識レコード倶楽部」にもトライしてみるつもりです。ほかの方は回転する盤面を眺めながら、音楽(と倶楽部によってはお喋り)をじっくりご堪能下さい。

https://bookandbeer.com/event/bb220718a_frs

幸運にもこの「先着10名」枠をゲットしたのである。

チケット申込みから当日まで、どんなレコードを持っていくべきか悩んだ時間がとにかく幸福で幸福で楽しくて。

メンツがメンツだし、いわゆる「そっち系」の選曲はあざといかな。いっそ、思いっきりドメスティックにアイドル歌謡みたいなのを持ってったほうが実験的で面白いかな。いやいやここは単純にセンスいい感じでまとめるのが吉であろう。3分きっかりの曲はないか?あった!ハニードリッパーズのシー・オブ・ラブだ!…etc etc

結局何を持っていったかについてはここでは記さない。そんなことより、「鑑識的に」音楽を聴くということについてちょっとだけ考えてみたい。

鑑識的なアプローチは、対象物を読み解こう、理解しようとする際には自然と発露するものだと思っている。たとえば鑑賞であれば絵画や、博物館の展示などがこれに当たる。映画なんかも、モノによってはレベルが異なるかもしれないが、近いと思う。

いっぽうで音楽、しかもポピュラー楽曲ともなると、リスナーの立場やTPOによって千差万別だ。ただ、音楽そのものに向き合っている瞬間でさえも、「鑑識的」かどうかでいえば、まだもうちょっと及ばないことのほうが多いような気がする。

強いて言えば、ゲストの鈴木博文さんや直枝政広さんらは日常的に行っているような、レコーディング時のミックスダウンであったりプレイバックをミキサールームで聴くようなシチュエーションが近いだろうか。つまり、一般消費者があえて鑑識的に音楽に接する機会というのは極めて少ない。

だからこそ逆説的に、鑑識的なアプローチはおもしろかった。自分が選んだ曲はかえって居心地が悪い。やはり他人が持ってきた楽曲が新鮮で、知ってる曲もあれば知らない曲もある、そんなのが順繰りにターンテーブルに乗せられ、針を落とされてからのワンダーなモーメントの素晴らしさ。

ただ疲れるね。とっても疲れるw

そりゃあ、そんな音楽への接し方ってあんまりないから、普段とは異なる筋肉をむちゃくちゃ使ったあとのような疲労感が残った。

下北沢B&Bは素敵な書店さんで、本の内容と同じく黒ビールをグイグイ飲みながら、楽しいひとときはあっという間に終わったわけです。行きも帰りも、再開発ですっかり変わったシモキタを懐かしみながら、曽我部さんのカレー屋にも寄ったりして楽しい一夜を過ごすことができました。

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