原りょう 『愚か者死すべし』

あの沢崎が帰ってくる!本屋で発見した瞬間、手にとってレジに向かったくらいで、とにかく大期待。

「りょう」としかネットでは表記できないのがナニだが、この人の名前は「寮」のうかんむりがない字だ。そのため、世界中のウェブサイトがUnicode完全対応になっても、おそらくスンナリとは表記はできそうにない(少なくとも、OS Xのテキストエディット&ことえり環境でも字は見つからなかった)。「草なぎ剛」より、もうちょい奥深い問題である。

原りょう『愚か者死すべし』

そんなことはともかく、この週末はヒマを見つけては読み進めた。だが結論から言うと、いかに前三作がよかったかの再確認にしかならなかった。この復帰第一作に関しては、読み手としては非常にフラストレーションがたまってしまい、なんともはやな感じである。

決して小説としての水準が低いというわけじゃないんだけど、いかんせん沢崎を中心とした世界がこじんまりとしてしまったせいか、どうもイマイチ感が拭えない気がする。当世っぽく「ひきこもり」が登場したり、まぁほかにもそれらしい仕掛け(ネタバレになるので書けない)があったりもするんだが、これなら、短編集『天使たちの探偵』の中にある小品のほうが読後感はよかった。長い長い沈黙の末に出た続編がゆえに、期待しすぎちゃってたのかもしれない。

著者は、あとがきでこの沈黙の期間に何をしていたかを書いてるんだけど、かいつまんで言うと、要するに「いい作品を書くための鍛錬」だったそうだ。残念ながら、僕にはそれが響くことはなかった。だけど、次回作もたぶん手に取ると思う。渡辺がいない世界で、沢崎がどうやって読者を引っ張るのか、作者の悶々とした闘いに興味があるからだ。

「原りょう 『愚か者死すべし』」への10件のフィードバック

  1. ぎくっ。もう読んだのかあ。
    いかに前三作が良かったかって……、おれ、まだ半分しか読んでないんだよ?。

    したがって、そこんとこ以下は読まずにコメントしている次第。

    読み終わったら、ぜんぶ読みます(いや、自分の感想書いてから読もうっと)。

  2. 原寮『愚か者死すべし』早川書房

    曇りのち晴れ。

     本など読んでいる場合ではない。しかし、畏友nozueに先に感想を書かれてしまった。危うく感想を読んじまうところだった。やばいやばい。思…

  3. 感想書いたよ、とコメントする前に読んでいただけたようで恐縮です。
    nozueくんのフラストレーション、わかるなあ。
    しかし、俺は期待度低かったせいか、久々の原りょう節を楽しみましたよ。
    個人的には『さらば長い眠り』があんまり強い印象がないんだよね。もう、どんな話だか忘れてしまった。残り3冊はよく覚えているのだが……。
    『そして夜は甦る』と『私が殺した少女』の2冊を超えるのは難しいだろうなあ。両者とも、ネタてんこもりで、作者の偏屈な世界観が炸裂していて、ちょっと奇跡みたいなできだと思う。
    とはいえ、新刊が楽しみな作家であることは間違いないけど。

  4. 愚か者死すべし/原りょう

    法月綸太郎に続いて、待ち人来る。正直言えば、もう新刊は出ないのではないかと思っていたよ。9年振り。ちゃんと文庫版の『さらば長き眠り』の巻末に収録されている短編の…

  5. (すでに、あちこちに書きましたが)
    皆さん「後書」を、どう読まれました?
    九年ぶりにしか新作を発表出来なかった自分への「探偵」流の皮肉なセリフか、
    はたまた違う意図なのか。いずれ、今後が楽しみですね。
    あ、さっき未読の「ミステルオーツ」が、アマゾン社から届きました。これで、ハードカバーが、全部揃いました、グフフ。
    私のベストは、短編集「天使たちの探偵」です。
    週に一作だけ読むことをお勧めします。

  6. あー、私も大好きですよ「天使たちの探偵」。短編も味わい深いですよねぇ。でもきっと、短編のほうが書くのはタイヘンなんでしょうねぇ……。

  7. 早い上梓をするための9年の歳月だということ。 これからは待ちくたびれることなく作品に会えるはずです。 これだけでも満足なのに、作品への不満もまったくありません。 正統派ハードボイルド万歳!!

  8. 原籙

    原籙 † 【はら りょう】 原籙 『そして夜は甦る』 『私が殺した少女』 『天使たちの探偵』 『さらば長き眠り』 『ミステリオーソ 映画とジャズと小説と』 『愚か者死すべし』 ↑『そして夜は甦る』 † (早川書房)1988年4月 【現…

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