『ウォーリー』と『ティンカー・ベル』を観てきた

年末年始を挟んで、ディズニー映画を楽しんできました。もはや、どちらもディズニーっつうよりピクサー映画だなあ。

ウォーリー(WALL・E)は、ピクサーの真骨頂とも言える、ロボット人情モノ。ポニョ一色だった夏頃からTVスポットがガンガン流れてたのを見てもわかるとおり、相当の宣伝予算を使ってたよねえ。

量産型ロボット、ウォーリーはApple製品としては珍しく(笑)、耐久性が高い。なんと700年も動き続けるタフさは、バッテリーがヘタッてきた我がMacBook Airも見習ってもらいたいところだ。恋人(?)役のイブも、某WIredによるとジョナサン・アイブがデザインに関わったとか眉唾な感じの情報もあり、まあ、その手のネタが好きな人にとっては二重に楽しめる映画とも言える。

ロボットが主人公、さらには誰もいなくなった地球でのシーンが冒頭のほとんどを占めたりするのに、まったく退屈にならない。ロボットなのにロボットくさくない仕草や、シーンのつなぎ/構成の妙味か。監督のアンドリュー・スタントンは、ファインディング・ニモに続くメガホン(って言うのか?)。彼もすっかりピクサーのキーパーソンだねえ。

あえて個人的評価をつけるとすると、★3くらい。あくまでもピクサー作品としては、という但し書きが付きますがね。

いっぽうティンカー・ベルは、どちらかというと子供向けで、劇場内もほとんど家族連れで賑わってたわけですが、前田有一センセイが100点満点を付けたというからには観ずにはおれない。何十年も昔、浦安の某施設でピーターパンのナニしてたこともあったしな!

Tinkerっていう単語は、もともと職人とか、修理屋とかそういう意味なんだけど、なるほどこの妖精の生い立ち編とも言える本作で、そのへんも納得。妖精の国でいろんな道具を作ってたんだね。物語のほうは、確かに表面的には子供向け映画にありがちなんだけど、ライバルっぽいのがいて、挫折を味わうものの、仲間たちの友情と持ち前の●●●(適当に好きな言葉を入れてください)で乗り越え、大団円を迎える。

確かに、その過程に盛り込まれたメッセージは明快・ストレートで心に響く。特に大人にはね。前田センセイは「アメリカそのもの」とおっしゃっているが、個人的にはこれこそニッポンのサラリーマンの胸を熱くするんじゃないかなあ、とも思う。

4部作とか大風呂敷をひろげてるけど、果たしてどうなるか。尤も、つくりとしてはここで終わりと言われても納得はできるがね。でも、じつは皆が思ってるほどヒーロー的なキャラでは決してない、ピーターパンとの絡みは、ティンカー・ベル視点でこそ面白い話になるんではないかと期待してる。

DVDが出たら買おっと。字幕版でもう一度観てみたい。

『Mr.インクレディブル』をこっそり見てきた

『Mr.インクレディブル』(2004年 ブラッド・バード監督)

仕事柄、ピクサー作品はすべて目を通しているので、チェックしてきた。今週末からかな、封切りは。原題は「The Incredibles」、つまり「インクレディブル一家」だ。邦題を決めるのに苦労したとは思うが、これじゃ映画のコンセプトが台無しかとも思う。まぁ、邦題問題は挙げたらキリがないか。

そもそも”incredible”という単語自体が、日本人には馴染みが薄い。”unbelievable”なら知ってるんだろうけど。あと、いわゆるMrs.インクレディブルの名前は、”Elasty Girl”(伸び縮み娘)だが、パンフや公式サイトなんかだと「スーパーガール」になってた。気を回しすぎるのもどうかなあ、と思う。まぁいいや。

ピクサー作品の歴史は、テクノロジーの歴史でもある。『モンスターズ・インク』に出ていた女の子、ブーは、当初は髪を垂らしている設定だったが、当時の3D技術ではそれが困難だった(髪は、結局結ばれている)。そう、実はピクサー作品で人間が主人公なのは、この作品が初めてなんである。長女は内気で、いつも長い髪で顔を隠しているのだが、そういった表現もやっと実現できたわけだ。ちなみに、エンドクレジットには、「Hair & Cloths」のレンダリングチームが独立して記されていた。かなりの大所帯で、かつこの映画のテクノロジー的なキモでもあったのが、よくわかる。

他の作品との差異は、まだある。最も大きいのが上映時間。アメリカでは、「アニメは90分以内」というのが一般的なのだが、本作は110分を越える。要するに、長い作品は子供受けしないということらしいんだけど、この上映時間については、相当ディズニーとモメたらしい。

肝心の内容だけど、これがすこぶるイイ。過去の作品では『モンスターズ・インク』が個人的ベストだったが、それを上回ったかな。

スーパーヒーローたちが活躍する陰で、市民への被害も拡大。そして訴えられ、敗訴。彼らはみな、一般市民としての隠遁生活を余儀なくされる(なんてアメリカっぽい!)。イクレディブル家を支えるお父さん、Mr.インクレディブルも今では冴えない保険会社のサラリーマンだが、つい情に溺れて保険金を支給してしまうため成績はよくない。これまた元スーパーヒーローの妻と営む家庭を支えるために働くも、完全なリストラ要員である。ヒーローの資質は子供たちにも遺伝しているが、長男はそれを隠して暮らすことにフラストレーションがたまる毎日で、イタズラばかり。長女は、とことん内向的で好きな男の子に話しかけることすらできない。そんなある日、父親のもとに、スーパーヒーローとしての仕事の依頼が入るのだが……。

伏線の張り方も絶妙。笑わせるところ、泣かせるところもバランスよくて、見る前はかなり眠かったのに、寝入ることもなくラストまで引っ張られました。原題からもわかるように、テーマは明らかに「家族」。特に母親の存在がカギですな。私はチョンガーなんでアレですが、夫婦子供連れで見に行くといいんじゃないかと思いますヨ。

最後に、ピクサーとディズニーについて。

この両社がタッグを組むのは、次回作『Cars』まで(車が主人公って……しかもNASCAR??)。ディズニー側は新しいCGアニメ制作会社を開拓したそうで、本格的に契約は打ち切りということらしい。スティーブ・ジョブズは激怒したそうだが、ディズニー側が、ピクサーをコントロールしきれなくなったというのが真相か。まぁ、ディズニーもいい話ばかりは聞かないんで、潮時だったのかねぇ。

じゃあ、ピクサーは配給に関してどこと組むのか? ジョン・ラセターは何を考えてるのか? ひょっとして、ジョブズが強引に動画配信事業をアップルで始めるとか……って、それはさすがにないか(笑)。