土田世紀が、好きです。
初めて読んだのは、アフタヌーンだったか。東北に住む中古車販売業の青年を主人公にした「永ちゃん」という作品を連載していて、やたらとインパクトが強かったのを覚えている。
このところ、過去の名作の復刻版をよく見かけるけど、この『定本 俺節』もその流れか。太田出版、エンターブレインに負けず劣らず、いいところに目を付けてくれました。
表紙カバーは銀の地にスミとホワイト。題字はもちろん北島三郎。ひときわの存在感。写真だと、反射しまくってなんだかよくわからんけれど。
本作は、講談社での仕事で自分の才能に限界を感じていたところ、小学館にナニされて連載を始めることになったとか、巻末のメールインタビューに書いてあったけど、なるほどそんな経緯があったのか。
初期の作品だからか、ところどころ作画も荒いけど、逆にそれがいい。スピリッツで第一話を読んだときは大学生で、世の中はイカ天のバンドブームだった。そんな中、空気読まずに演歌をテーマに持ってくるってところが心意気。
改めてじっくり読み返してみると、実在する歌の歌詞や大ゴマが、随所に効果的に使われてる。タイトルも、毎回面白かったんだな。「俺のスペルマ150屯」とか。元ネタは、もちろん小林旭。う〜ん、ダイナマイト!
好きなエピソードは、やっぱり第一話と、あとヤクザの鉄砲玉を見送るシーン。まさしく演歌パワー。グッとくるぜ震えるぜ。
あと主人公・コージが、ストリッパーのフィリピーナ、テレサを抱くところね。相棒・オキナワのモノローグに深く、多いに、何度も頷く。
じつは物語の中盤以降は、あんまり記憶がない。山小屋でバイト始めたりして、スピリッツ読むのやめてたからかなあ。まあ、この上巻に続いて12月に中巻、来年1月に下巻が出るそうなので、楽しみに待つことにしよう。