小島一郎の写真集『津軽』

青森県立美術館
小島一郎 – 北を撮る –  戦後の青森が生んだ写真界の 「ミレー」

ちょっと前に、テレビで見たのだ。男前列伝とかいう番組だったと思うけれど、テレビの画面越しでも、その作品の圧倒的な存在感に目を見張った。

番組終了後、即Amazonでポチる。写真は好きだけど、写真集を買い求めることなど滅多にないのに。いやとにかく、相当なインパクトだったのだ。

それが、届いた。忙しい中、すぐ手に取る気になれず、週末の時間があるときにようやくページをめくることができた。

暗室の技法として「覆い焼き」というものがある。Photoshopにも同様の機能があるのでなんとなく知ってはいたが、暗室での露光時間を部分的に変えることで、仕上がりの明暗を調整することだ。

例えば、コントラストが強い写真で、飛び気味のところは露光時間を短めに、暗いところを長めにすることで、通常の均一的な焼き方では写らなかったものが見えるようになる。Photoshopの覆い焼きツールのアイコンがなぜあのデザインなのか、ようやく理解。光の当て方を調整するのに、ああいった治具を使うのね。

最近だと、HDRみたいなものもありますよね。ハードディスクレコーダーではなくて、ハイダイナミックレンジの略。iPhone 4のカメラなんかにもHDR機能が搭載されて話題になったし、ちょっと高性能なコンデジならたいていは搭載されてる。

平たくいえば、露出を変えながら複数の画像を一度に撮影し、それらを合成することによって「イイとこ取り」をして1枚の画像に落とし込むことだ。

昨今のHDRでは、ものすごく幻想的な雰囲気に仕上げることができたりして、けっこう面白い。以下、flickrからCCなHDR画像を並べてみる。

Templestorm, and Stunning Results from the HDR Workshop
Attribution-NonCommercial-ShareAlike License by Stuck in Customs

My Accord in HDR
Attribution-NonCommercial-NoDerivs License by Extra Medium

Dawn HDR II
Attribution-NonCommercial-NoDerivs License by Raymond Larose

http://www.flickr.com/search/?q=HDR

例によって前フリが長くなってしまったけど、いや本当に素晴らしい写真集です。酒をチビチビなめながら、ゆっくり見入ってしまう。昭和30年代にこの表現力を持っていたのはすごいね。津軽という地域特性が、モノクローム+覆い焼き技術によって、さらにその濃度を高められている。

RAW現像とかHDRによって、デジカメの表現力は飛躍的に高まったわけだけれど、自分など生まれるずうっと前の時代、すでにここまで高い次元に到達していた人がいたとは……。

おそらく当時は、邪道とかレッテルを貼られていたんじゃないかと邪推しちゃう。もっと評価されていいと思うんですよね。

なお、それなりの技量の高い人間が残されたネガから同様に覆い焼きの技法でプリントを試してみたものの、どうしても小島一郎が焼いたようには仕上がらなかったらしい。39歳の若さで亡くなったそうだが、天才は早死にするというのは本当だねぇ。

願わくば、いちどその実物、プリントされたものを見てみたいものだ。

「小島一郎の写真集『津軽』」への6件のフィードバック

  1. 今日、新宿のキノクニヤまで
    行って見てきたよ。
    うーん、よかった。

    でも、写真集より、
    一眼レフを買おう!と
    意思を新たにしたりして?

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