寺尾紗穂のライブについて長々と書いてみる

昨年末のことだから、何をいまさらそんな昔のことを書いてるんだと怒られそうだが、永福町のソノリウムという室内楽ホールで行われた、寺尾紗穂のソロライブに行ってきた。キャパは100人という小さなハコなのだが、とにかく音響が素晴らしいとのことで楽しみにしていたのだ。

じじつ、いちばん後ろの席だったにも関わらず、本当に繊細な音まできちんと届く。ペダルや打鍵の音、そういったCDなんかではあまり聞こえてこないような音も含めて、ピアノ弾き語りという形態とは思えない迫力を感じた。

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うれしかったのは、イタリアの古典“Caro mio ben”を歌ってくれたこと。寺尾さんはこの曲がきっかけとなり、声楽から独唱へとスタイルを変えたと語っていた。

高校時代の音楽教師がちょっとトリッキーな人で、地方の受験校としては珍しかったと思うんだけど、カンツォーネやボサノバなど、世界中の音楽をよく授業で取り上げ、皆の前でソロで歌わされたりしていたんですよ。帰れソレントへとか、このCaro mio benとか。懐かしかったー。

あと、ジョニ・ミッチェルの“A Case of You”のカバーが最高で、その後、期間限定で公開されていたライブ音源のストリーミングを何度も繰り返し聴いた。とにかく、日本語歌詞がすばらしいデキ。

でも、いろんな権利の問題で、以前書いたチャボ同様、音源化されることはないだろうなあと思っていたら、なんとYouTubeに上がってるじゃないですか!

なるほど、YouTubeでなら権利関係も処理してくれるんだっけ? とにかく原曲を知ってる方には是非聴いていただきたい。ダイアナ・クロールみたいなハスキーなカバーもいいんだけど、寺尾紗穂によるカバーは、じつに味わい深い。

そういえば年末のライブでは、井上陽水の「傘が無い」もカバーしてくれてました。ちょうど参院選の投票日で、演奏された時間帯は開票速報で自民党の圧勝が報じられた頃だったはず。こちらも印象的でした。

じつは、寺尾紗穂のライブは4月にも体験している。「仙川森のテラス」という会場で、このハコはさらに小さく、8畳間くらいだったかな。グランドピアノの周りに座布団が敷いてあって座るという、学生時代の演劇みたいな感じだった。

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なんと子供連れOKとのことだったので、ムスメも連れて行ったのですよ。オーガニックっぽいおにぎりも付いてた。ところが、第1部は静かに聞いてたんだけど、第2部でちょっとむずかりだして、出たり入ったり。他のお客さんには迷惑だったことであろう……。

結局小雨降る中、子供を抱いて庭で佇んでいたのだけど、これがまた、かえってなんともいえない上質な体験であった。壁ひとつ隔てて、寺尾紗穂の唄声とピアノが流れてくる。森のテラスというだけあって、緑濃い、多摩川崖線の樹々を雨がしっとりと濡らしている。

人がいっぱいいる空間では緊張していただけなのか、ムスメも大人しくなり、聴き入っている様子。何曲か続けて、そのまま外で楽しませてもらった。

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この方のピアノを生で体験してわかるのは、意外なほどの力強さだ。例えば最新アルバムにも入っている「老いぼれロバの歌」などは、CDだと軽快なイメージなんだけど、ナマだととにかく左手のキレと重さがすごい。

ピアノは素人なんで、キレっていうと不適切かもだけど、野球でピッチャーの投げる球にも、同じスピードでも重い軽いがあるような感じかしら。

ともかく自分にとっては、今後もタイミングの許す限り、できるだけライブに足を運びたいミュージシャンなわけである(こないだの渋谷クアトロも行きたかったなぁ!!)。

あ、そういえば、森のテラスでは今年はバンド(Thousands Birdies’ Legs)のほうでも活動するとか言ってたはず。そちらも楽しみである。

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