昨年末、合格してすぐに投稿しようと思ってたのに、すっかり忘れておりました。時期を逸したのでどうかとも思ったが、せっかくなので。超長文ですが。
未来の自分に向けて書いているので、妙なところまで細かったりするし、ハッキリ言って他の方が読む価値は皆無です。
◆なにゆえ受験を思い立つに至ったか
我が家からは徒歩2分くらいに公立小学校、府中第一小学校がある。「第一」という名前が付いているとおり、市内で最も古い小学校であり、創立は1873年。学制発布よりも前に存在していたという地域随一の伝統校でもある。
保育園で知り合った父兄の方の中には、この「一小」に子供を入れるため学区内に引越しをしたという方さえいる。
ついでに言うと府中市の公立小学校は校庭がすべて芝生張りという、ちょっと信じられない環境の良さだったりもする。
なので、ムスメがまだ小さかった頃は無条件で一小に入学するもんだと思っていたのだが、4歳くらいだったか、いわゆる「年少」となる学年あたりで家人とも色々話し合い、周辺の私立小学校を調べることにした。
この段階では「どこか受験してもいいんだけど、別に一小でよくね?」くらいの感覚であった。なんといっても小学生なのだから、通学にかかる時間は短いほうがいいに決まっている。
「通える範囲」にある私立となると数が限られる。いくつかピックアップしてウェブなんかを見たりもしたが、どうもピンとこない。国立大の付属、つまり学芸大付属小金井なんかもあるんだけど、通学するのにバスを2本乗り継ぐ必要があり、大人の自分が通えと言われてもゲンナリする。却下である。
どうにかこうにか、ピックアップされた小学校は2つ。どちらも、個人的にとても敬愛するアーティストの出身校というミーハーな要素もあったが、家人とも相談のうえ「ここなら受けさせてもよいし、もし受かったら大層ラッキーな話であろう」という話になった。そもそも、落ちたとしても一小でまったく問題はないのだから。
そんなわけで「お受験」をやってみることにしたわけだ。
◆受験するなら塾に通う?
となると、いわゆる「お受験用の塾」に通わせるかどうかが悩みどころとなる。
ここでは、2つの理由から通わせることになった。
ひとつは、保育園の同期がほとんど幼稚園に転籍してしまい、同学年が誰もいなくなってしまったこと。上と下の学年はそれなりに数が揃っているのだが、ムスメの学年はただ一人。それはそれで、可愛がってもらったり責任感が芽生えたりとメリットもあるのだが、やはり同い年のお友達との触れ合いは必要だ。
もうひとつは、最終的に受験をするしない、受かる受からないとに関わらず、教育に関する投資は学齢が低いときのほうが効果が高いであろうということ。
小学校受験用の塾って、中学受験用ほどではないのかもしれないが、それなりに数があって特色もさまざま。ガチなところもあればゆるめなところもあり、大いに悩んだが、ムスメの性格的にもゆるめなところがよかろうとチョイス。
塾といってもやることは工作やパズルなど、遊びの延長線でもある。プリントは間違い探しとか数合わせとか、そんな感じだったかな。ムスメも保育園とはまた違う楽しみを見つけたようで、特に嫌がることもなく通い、毎週のようにヘンテコな工作物が部屋に増えていった。
◆1年前からが本番モード
5歳の10月からは、いわゆる「新年長(来年度年長さんになる、の意)」と言うらしいのだが、要するに受験本番まで1年ということで通うペースも週1から週2となった。新年度の4月からは毎月どこかで模擬試験があったりして、場所も国立、三茶、四谷、早稲田、目白など、都内のいろんなところに出かけた。
ちなみに三茶では長崎ちゃんぽんの銘店、四谷ではポルトガル料理、有楽町の国際フォーラムで模試があったときは、ちょっと奮発してWolfgangで熟成肉ステーキを模擬試験後に食った。もはや、子供の用事にかこつけてのグルメツアーとも言える様相であったが、何か「ごほうび」がないと親もキツイわけでしてw
模擬試験と同時進行で、各小学校では説明会が随時開催された。こっちはカミさんと分担しつつ対応。
なお、自分の出身大学の系列にあたる小学校については「とりあえず説明会に行ってみよう」ということになり、久々に母校のキャンパスを訪れたりもしたのだが、すこぶる印象が悪かった。
大きな講堂に人がギッシリ集まったのだが、壇上でしゃべる偉い先生方の話がとにかく上から目線であり、自画自賛な話ばかり。子を持った親、あるいは子ども本人の視点がまるで感じられず、押し付けがましく不快感極まりない。
そんな感じで内容が最悪なばかりかプレゼン自体が下手すぎる。大学までのルートが開かれているというアドバンテージをゴリ押しするだけなんだもん。親子3人で我慢を続けたが、しまいにはアホらしくなり、途中退出してムスメと戸山公園に遊びに行ったくらいだ(家人には悪いが一応最後まで話を聞いてもらった)。
このキャンパスで青春を過ごしたことが虚しくも感じられたが、いやまてよとよく考えたら、あんまりこのキャンパスには来てなかったわ。在籍だけは7年と長かったけれど。
◆3校に絞る
結局、受験したのは3校にとどまった。本当は、上にも書いた「通わせたいと思える」2校にしぼりたかったのだが、家人は塾の先生から(実績になるからという理由もあろうが)普通はもっと数をこなすものであって2校だけとかあり得ないと怒られていた。
なんか、ヨソの家にことはアレコレ言いたくはないが、中には居住エリアの中で受けられるところはすべて受ける、というご家庭もあるそうで、塾で仲よしの子なんかは6校くらい受けたようだ。
世間的に、わざわざ小学校受験するというご家庭としては当然の意識なのかもしれない。ウチがおかしいのだ。別に落っこちて公立でいーじゃん、芝生でサッカーできるし的な呑気な家庭のなせるワザである。
結局、確かに予行演習的なものは必要かもしれないと思い至り、志望校2つに加えて、もう1校を加えた計3校を受験することが決まった。
◆本番を迎える
受験当日は朝が早い。寝起きの悪い一家の中で、最も朝が苦手なのはムスメだったりもするし、いわゆる「お受験服」で行く必要もあったりしたので、朝の身支度は本当に苦労した。
じっさい、ある受験日はバスに乗り遅れ、急遽駅まで歩いてタクシーを拾い、カミさんとムスメを押し込んで自分は出社のため電車に乗ったのだが、「道路が渋滞」と泣き顔マーク付きでメッセージが飛んでくる。まあ落ち着けと返信するが、「本当にダメかも、ピクリとも動かない」と悲壮感マシマシに。
タクシーの現在位置を確認し、GoogleMapで裏道を指示し、運転手にこう伝えろと伝達するなどこちらも新宿へと向かう満員電車の中で悪戦苦闘したが、どうにか試験開始ギリギリで間に合った。ムスメが試験会場に入ってすぐ、その学校の教頭先生(!)から「大丈夫ですか?」と確認の電話がヨメのケータイにかかってきたらしい。いい学校だなーと思った。
この朝以外は、余裕を持って試験に臨めた。当たり前っちゃ当たり前だが。
なお小学校受験は、ペーパー重視の学校もあれば行動観察重視の学校もあり、親の面接もあるところとないところがある。それぞれの校風によってスタイルもさまざまだ。
今回、ムスメのおかげで面接を受けるハメになったが、正直気が重かったのは事実。でも、普段なかなか面接される側にはならないので、ある意味新鮮ではある。
学校にはそれぞれキャッチフレーズみたいなものがあるのだが、ほとんどアドリブで、その学校のポリシーをいかに親として重視しているかをまくしたて、どうにか乗り切る。あとで家人から「よくあんな思ってもないようないいかげんなことをペラペラ喋れるね」と褒めていただく。
そういえば面接で、校長先生がムスメに「将来何になりたいですか?」と尋ねたところ、特に仕込んだわけでもないのに、ムスメは満面の笑みで「コックさん」と答えていた。親としては「してやったり」である。
校長先生は「?」という表情でもう一度聞き直し、「ああ、コックさんですか!」とややウケした様子で納得していたのが面白かった。「4歳の誕生日プレゼントで包丁を与え、毎日握らせています」とわざと真剣な表情でフォローした。
◆合否の発表
インターネットでわかる学校もあれば、現地に行かないと分からないところ、郵送のパターンもあり、そのへんはさまざま。
練習として受験した学校は合格。家族全員で書類なんかを受け取りに行ったが、泣いてるお母さんとかもいたりして、ああ受験っぽいなあと妙に感動した。なんにせよ、合格というのは気分がいいものである。
本命のふたつだが、結論を言うとどちらも不合格であった。
ひとつがダメと分かり、翌日にもうひとつがダメと分かったときのカミさんの顔といったらなかった。ちょうどその日、有給を取ってよみうりランドに行くことになっていたので、ムスメは朝から大はしゃぎなのだが、親はドヨ~ンである。
「どう伝える?」
「今日はやめとこう…」
そんな悲壮感あふれる親と、平日で空いているよみうりランドでガンガン遊ぶムスメ。あのときは本当に辛かった。
「もともと公立でよかったんだし、倍率もものすごい高かったわけだから、いいチャレンジができたと割り切ろう」「そうね……」
そんなやり取りをした帰り道の、足の重さをよく覚えている。
◆逆転繰り上がり
そんな暗黒の週末を過ごした明けの月曜日、本命2校のうち、片方から繰り上がり合格の連絡が来たのである。きっと、W大学系列の小学校に受かったご子息の辞退があったのだろうと推察。補欠でも何でも、結果的に合格したのだから大したものだ。
まあよかったよかった。めでたしめでたしである。
カミさんとは、もう片方も繰り上がりで合格になったらどうしよう? などと盛り上がったりもしたが、結局ナニも起こらず。
受験のときの話、どんな問題や課題が出たかとか、先生とどんな話をしたかをできるだけ詳細にムスメから聞き出したのだが、補欠でもぐりこんだほうの小学校の試験のとき、「お休みの日はどんなことをしていますか?」という質問があったらしい。
「なんて答えたの?」ときいたら「おとうさんとやきそばをつくっています」だと。
それだ、それだな。合格したのは、そのひとことがあったからに違いない。
◆無事に通っています
そんなわけで4月からムスメが小学生になった。朝が早いので、グータラな我が家としては革命的なのだが、それまで8時すぎにようやく起き出すような生活だったくせに、いまでは6時30分起床である。
ワタクシに至っては、11時くらいに悠々と出社してたのが、朝のラッシュにもまれながらの9時出社を続けている。朝の新宿駅マジ半端ないわ。
不安もあったが、どうにかなるものですな。おかげで日々眠いけど。