山田洋次の言葉

<人と付き合う上での煩わしさ>

考えてみると、その、もともと人間と人間が一緒に暮らしていくってことは、いろんな煩わしいことをたくさんクリアしないとできないことなんじゃないかと。それはかなり我慢しなけりゃいけないことがいっぱいあるんじゃないかと思いますね。

それは隣近所の付き合いだって同じなんじゃないかな。地域の人どうしが仲良くするために、払わなきゃいけない、さまざまな面倒臭さを含めて、人間の社会はあるわけだからね。

だから、そういうことを面白がるようになんなきゃいけないんじゃないのかな。そういうふうに同じように地域に住むってことは、あるいは家族が家族であるってことは、そういう面倒くさい煩わしいことをちゃんと覚悟しなきゃいけないだろう、と。それをクリアするという術をみんな身につけなきゃいけないだろう。

そうじゃないと仲良くできないし、そういうことをクリアしたうえではじめて本当に仲がいい、ああ一緒にいるといいなという瞬間をあじわうことができるんじゃないかと思いますね。

そういう意味では今の時代は本当に、隣近所の付き合いも家族の付き合いもどんどんどんどん、なんというかこの、機能的にしかならなくなってしまってね、人間と人間との情愛が切れてしまった時代。いったいどうすりゃいいんだろうということは、誰でも悩んでいるんじゃないかな。


2018/11/24放送
『さくらと民子、そして…山田洋次が描いた家族のかたち』より(NHK-BSP)

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