稲庭うどんと白石温麺

宮城県白石市の名物として、白石温麺(うーめん)なるものがあると知ったのは最近のことだ。

素麺とは異なり、食用油を使わないためアッサリ風味で、するすると食べられるのが特徴だという。

今から四百年ほど前、伊達藩白石城下に鈴木味右衛門という人がおりました。

父が胃を病んで床に伏し何日も絶食しなければなりませんでした。親思いの味右衛門は大変心配して、何か良い食餌療法はないかと八方手を尽くしたところ、たまたま旅の僧から油を一切使わない麺の製法を耳にし、これを作って温め父に勧めたところ、胃病は日ならずして快方に向かい、やがて全快したということです。

油を使わないで作る麺は胃にやさしく消化も良いので回復を早めたのでしょう。白石城の片倉小十郎公は、前記の孝行話の「温かい思いやりの心」を称え、その麺を「温麺(うーめん)」と名付け、地場産品として奨励しました。

白石市 きちみ製麺HPより

https://www.tsurigane.com/origin.html

問題は、それに続く一節だ。

この油を使わない伝統的製法は、その後秋田県稲川町に伝わり稲庭うどんとなったとも言われております。

 

宮城県白石市と秋田県湯沢市稲庭。この遠く離れた二つの地を繋げたものがあるとすれば、それは仙北街道に他ならないのではないか。

湯沢市稲庭は、仙北街道の秋田側にある。白石温麺が、水沢を経て仙北街道を辿り、東成瀬から稲庭(稲川)へと伝わったとしても何の不思議もない。ましてや保存食としても優秀な白石温麺は、仙北街道を歩く旅人たちにとって必携の食料だったのかもしれない。

稲庭うどんの発祥については諸説あるようだが、仙北街道を往く旅人によってもたらされ、日本三大うどんとも称されるにまで発展したのであれば、これも古道ならではの浪漫ではなかろうか。

 

今年の夏は仙北街道を歩く予定なので、いいタイミングで白石温麺のことを知ることができたと、まあそういう話でした。

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