多摩蘭坂まで 道行く人が何人か、立ち止まって佇んでいる。花を手向ける人もいれば、寄せ書きやノートに、じっと見入る人もいる。天気が崩れるという予報があったせいか、傘やクーラーボックスも設置されていた。 『多摩蘭坂』は、まだミュージシャンとして成功には至っていない、不遇の時代のことを歌ったものだという。 夜、ひとりぼっちで部屋にいて、言いようのない不安感に襲われる。かつて若者だった人ならば誰だって、そんな記憶はあるはずだ。だからいまも、心にしみる。