日本語版の創刊は22年前というから、ちょうど高校を出て東京に出てきた頃だ。そう思うと、なんだか不思議な感じがする。
いまも出版業界の片隅にいるが、駆け出しの頃、カメラマンの車の助手席に乗っていたある日。「そこのビル」とアゴで指され、「エスクァイアを作ってるUPUっていう会社が入ってるんだよ」と教えてもらったことがある。
あんなカッチョいい雑誌を作ってるのはどんな編集部だろう、そもそも、どんな人たちがやってるんだろう。その場所が当時、自分が住んでいた街でもあり、また超絶な貧乏時代だったこともあり、なんとも自虐的な気分になった。だから今も覚えている。
財務的な状態はどうだったかしらないが、エスクァイアには圧倒的な「成功」のイメージがある。当時業界にいた編集者も、カメラマンも、自分のような末端フリーの人間も、うまいことしてやがるなあ、単なるアメリカ版のコピーじゃねえか、などと嫉妬に満ち満ちた目を向けつつ、ココロのどこかでは単純にうらやましかったはずだ。「ああいう仕事、いいよなあ」とは、口には出さずとも、みんなどこかで共有していた意識だったと思う。
時代は変わる。いまここで、紙メディアの終焉なんて話はしたくないが、少なくとも最終号(名目上は休刊だが)にしてこの出稿量は、例えは悪いが、老衰し、体中に管が刺さって死を迎えた媒体では決してない。颯爽と立ち去っていくニヒルな老人のようだ、とまで言ってしまっては大げさか。
改めて見ると、本当にいい雑誌だ。いい雑誌すぎるからこその、この結末なのかもしれない。
こんな贅沢なメディアは、しばらく出てこないように思う。