日本はいつまで蚊帳の外でいられるか

恒例の年度末Deathマーチで忙しさMAX! なので、投下しようと思ってたけどタイミングを逸してたエントリーを。

その本、アメリカ国内で正式に流通していないでしょ
→ってことはある意味、絶版だよね?
→じゃあ、ググれば全部読めるようにしとくわ

かようなGoogle様のスーパーコンボ技のおかげで、いま日本の出版業界はちょっとした混乱に陥っている。全体像をつかむには、このへんの記事がいいのかな。

具体的にどんなタイトルが該当するのか、と調べてみたら、大手中小関係なく、もう何千何万何十万もの本がリストアップされていて笑った。最新刊も読めちゃう。いいのか(笑)。

これ、ある程度の法務体勢があるところはいいけど、中小や地方出版社にとっては寝耳に水で、無用なトラブルになりかねない。ホンマに大丈夫かいな。日本のグーグルがうまく立ち回ってくれればいいけど……。

その一方で、何を今さら感だけど、Amazonの大英断がきました。Kindle for iPhoneね。これ、たまたま最初がiPhoneだったっていうだけで、準オープン化したってことが大きい。いずれAndoroidや、ほかのハードウェアにも広がっていくものと期待されるし、Kindle自体の購買にもつながるだろうから、いい企業判断だと思います。

両社の思惑がどうなっとるかにもよるけど、Appleがこのアプリの審査を通したってことは、Appleとしては電子書籍はやらないってことなのかもしれない。

先日、大学時代の飲み会があって、そのとき来ていた某大手出版社、某大手新聞社の人たちともこのへんの話題になったんだが、相当酔っぱらってたので、キチンと説明できたかはわからない。

なんとなく、酔っぱらいの戯言として捉えられたような気もするが、アメリカでは新聞社にとってKindleは、「溺れた人間に投げられた藁」どころではなく、控えめに言って「救世主」の域にまで達しつつあるんじゃないかと思う。

すぐれたコンテンツを作るメディアがあってこそ、グーグルやAmazonが彼らの商売を続けられるのであって、そういった作り手たちが(規模はちいさくなるのかもしれないけど)きちんと労働に見合った対価を得られるシステムの構築は、ほんとうに急務だ。じゃないと、なんとかJAPANのWBCでの活躍も、きちんと報道されなくなってしまう。

優れた記事と、いい写真。紙とか電子とか、プラットフォームなんてどうでもいいから、それらを生み出す人材やノウハウが途切れませんように。すでに若者たちの世代で断絶が始まってるかもしれないが、まだ間に合うと思うのよね。

Kindle2 雑感

今風なデザインで、むちゃくちゃ薄くなりましたね。今回はおまけに、スティーブン・キングの新作が独占(先行?)リリースされるなど話題性もたっぷり。初号機は散々な言われようだったけど、これは売れるんじゃないかな。いや、ぼくもガジェット好きとして欲しいです! アメリカの知人に無理矢理頼もうかしら。

新聞社や出版社が、どうみてもお先真っ暗な中、本気でどうにかしようとしてるのは、やっぱりGooglezonという現状はなんというか。放っておいたら、彼ら自身のメシの種がなくなるからってのはあるんだろうけど、取り組み方の本気度が違いますわ。

ネガティブなトーンは、相変わらず(少なくなったとはいえ)聞こえてくる。やれKindleなんてハードウェアとして見たらショボーンだとか、ソニーも松下もシャープもだめだったとかうつむいてる人もいっぱいいるんだけど、形はどうであれ、こうやって世の中にプレゼンテーションし続ける企業はすごいなあ、と思う。

インターネットはメディアを殺したけれど、メディアを甦らせるのもまた、インターネットなのだということがよくわかる。アメリカ人のみなさんには、ぜひKindleでNYTを購読しまくってもらいたいものだ。

電子ブックの未来はどこに〜その3

問題は、たぶんハードウェアだと思うのです。

だって、携帯電話がいくら優れたデバイスだろうと、そこで一般人が読もうと思えるようなコンテンツには、猛烈な制限がかかる。だって、あのサイズの表示領域で文字が読める解像度となると、どうしたって情報量に限界があるからね。

やっぱり、ケータイだと「恋空」みたいなフォーマットの作品がフィットするんだろうし、あのスタイルが今後、文字ベースの表現として主流になるかと言えば、さすがにそうは思わない。きっと、テクノロジーの進化のほうが速いだろうからね。

ポケベル世代の断層、と聞いてピンと来た人なら話は速いかもしれないが、要するに、文化がハードウェアによって囲われるというのは今に始まったことではない。ポケベル打ちじゃないとメールが書けないという女性たちがひっそりと存在するようにね。

というわけで、携帯デバイスで読書やマンガというのは、一定のマーケットはできるだろうけど(すでにできてるか)、例えば週刊モーニングが丸ごと移行するとか、新刊の単行本を通して読むとか、そういうレベルの話にはなかなかならないと思う。単なる物理的な、ハードウェアの問題なので致し方ない。

そう考えると、ソニーのブックリーダーとかKindleみたいなサイズってのは、「妥協できるギリギリのライン」ってことなんだと思う。あの表示領域と一画面あたりの情報量という意味でね。「本読み」を考えるとこうなりますよね、っていう回答だ。実際、ハードウェアとしてもよくできてるし、さらに単なるデバイスじゃなくて、コンテンツあってのデバイスということもよく理解されて設計されてると思う。

でも爆発的には売れてないってのは、理由があるんだろうなあ。いろいろ言うこともできるけど、結局のところ、ひとは読書のため「だけ」のデバイスに何百ドルも出すほどの価値を見いだせない、ということなんだと思う。

では希望はないのかというと、そうでもない。昨今話題の、Netbookと呼ばれるカテゴリーがあるけれど、ああいったことに象徴される、「スペックとしては必要十分なレベルの低コストデバイス」が電子ブック端末になっていくんじゃないかなあ、というのがこのところの夢想のネタなわけで。

要するに、最先端のCPUなんかはいらないけど、そこそこ動いて低消費電力で、しかも安くてやろうと思えば何でもできちゃう、というところが大事。

例えば、OLPC(One Laptop Per Child)ってプロジェクトがありますが、XOXOっていう第二世代と呼ばれるモデルなんかは、コンセプト的に非常にいい感じ。2010年までに75ドルで提供とかいうけど、リアリティーあるよね。

(以下、blog.ted.comより)



あとは、デバイスそのものに革新性を持たせるというベクトルもアリですよね。クニャクニャにできる、まるで紙のようなデバイス。こっちのアプローチでは、例えばPlastic Logicなんかが面白いモノを出してる(Wiredの記事)。E Ink系というか、教育やビジネスの市場でも可能性ありそうだよね。

さて、まとめに入ります。

イマドキの若者は、テレビを見ながら携帯を常にいじってるんだってね。ホントかどうか知らんけど。

でも、思い当たるフシもある。私はテレビ見ながら携帯はいじらないけど、ノートPCを開いてることはよくある。野球見ながら2chの実況スレなんかを覗いたり。ドラマなら、俳優をwikiで調べてみたりとか、普通に何かを検索したりね。

仲間うちでは「コタツトップ」なんて言ったりもするけど、OLPCのXOXOみたいなものが100〜200ドルくらいで買えて、音楽や動画なんかも楽してめて、子供やメカに詳しくない人にも使いやすくて、さらには電子ブックリーダーにもなる、というのが「とっかかり」としてはいいんじゃないかなー、なんて思ったりします。

話題のNetbookなんかは、まだノートPC臭が強すぎる気がするんですが、機能的にはiPhoneやAndroidのようなハンドヘルドと同等でもよくって、もうちょっと画面が大きいもの、言ってみればA5くらいのキーボードレスデバイスってことなのかなあ。

すでにアメリカでも紙メディアの会社はエライことになってるけど、日本の新聞社も軒並み減収減益が騒がれてきた。まだ時間はあるようでいて、意外と待ったナシなんだよなあ。はやいとこ、何らかの打開策がワールドワイドで起こらないと、例えば新聞社や出版社は淘汰どころかガンガンつぶれて、きちんとした取材力をもとにきちんとしたコンテンツを作ることができる、作り手そのものがいなくなってしまう。

作家はインディペンデントでやっていけるだろうか。いけるかもしれない。でも、仮にいいものを生み出すことができても、作品をフォーマット化し、デザインし、プロモートし、ディストリビュートするのは1人ではツライ作業だ。iTunesStoreのようなサービスがこれだけ定着しても、インディーズとそうでないのとでは大きな差がある。

あるいは、業界全体が、この猛烈なスピードの中で一回リセットされたほうがいいのだろうか、とも思ったりするけれど……。

最後は酔っぱらいっぽくなっちゃったけど、本稿はこれにて一旦おわりまーす。ま、CES2009開催前の独り言ということで。

電子ブックの未来は「そこ」に?

前回、こんなエントリを書きましたが、著作権問題についてはものすごい動きがありました。

Googleのリリース:いろいろうるさいから著作権管理の会社作ったるわ(意訳)

要点はココ。

Google is also funding the establishment of a Book Rights Registry, managed by authors and publishers, that will work to locate and represent copyright holders. (中略)Since the Book Rights Registry will also be responsible for distributing the money Google collects to authors and publishers, there will be a strong incentive for rightsholders to come forward and claim their works.

Googleが、出版社や著者の代わりに、著作権を管理しますよ、と(あくまで管理なので、放棄ではない)。それによって、その著作物が使われた内容に応じて、出版社や著者にはお金がチャリンチャリンと入る。日本でいうところのJASRACの書籍版みたいなもんか。

池田信夫さんのblogでも語られていましたが、これ、Windows7のβとか吹っ飛ぶ話題だと思うんだけどなあ。言ってみれば、Googleに著作権管理を委託されたプロダクトに関しては、「金さえ払えば」きちんと二次利用できるということであり、電子ブック用コンテンツを作るようなベンチャーなんかが生まれてもおかしくない(あるいはGoogle自体がそういったことを始める可能性も高いが)。

仕事が忙しくて、ネタがあるのに更新できてなかったけれど、この件はさすがに別格かなあ。やっぱり、Google様が世の中のあらゆるリソースを牛耳ってしまうのでしょうかね。

電子ブックの未来はどこに〜その2

前回の続き、書こうとは思ってたんです。第二回はサービス、第三回は端末の話を適当にゴニョゴニョして、お茶を濁そうと思ってたんですよ。

だけど、サービスだけ切り離して考えることは難しいなーって感じで頓挫してました。なので殴り書きっぽく、問題点的なことだけ羅列しつつグダグダします。

ちょっとその前に書いておきますが、AdobeはAdobe Digital Editionsっていう、電子ブックのデータ流通までをも見越したソフトを作っていて、まさに書籍版iTunesという出来映え。PDFとepub(たしか)っていう形式に対応。ちなみに、PDFリーダーとしても優秀(高速)なので、AdobeReaderよかこっちのほうがいいかもしれない。



無料サンプルでアリスとかシャーロック・ホームズとかあるので、けっこう楽しめます。あと、なんとこのソフト、図書館から借りる(borrow)っていうモードも備えております。返却期限(というかファイルを開ける期限?)もあったりするらしく、じつによくできてる。

でも、Adobeはソフトは作ってくれたけれど、その先についてはあんまり力を入れてない。それについては色々あるかとは思うんだけど、要するに「金にならない」ということなんだろうと思う。音楽におけるiTunesStoreは、楽曲販売によって得る利益は重視されていないという。それよか、1台でも多くのiPodを売るほうがAppleにとってはオイシイわけだ。

価格設定の問題はあるにせよ、Adobeとしては端末を開発するわけでもないから、そこまで深入り(したくても)できないっていうのが実状なのかもしれない。単なる妄想だけど。

認証システムとかもちゃんとしようとしてるし、本腰入れてやればいいのになあ、と個人的には思う。あ、ちなみにAdobe Digital Editionsに対応した端末は、いまんとこソニー製品のみ(かな?)。なので、こんどの発表では、Adobeも絡んでくるんじゃないかな。んで、NY公共図書館の蔵書の、例えばほとんどがAdobe Digital Editionsで借りて読めるぞ、みたいな。んで、持ち出すのはソニー端末でどうぞ、と。

前フリのつもりが思いっきり長くなりましたが、

続きを読む 電子ブックの未来はどこに〜その2

電子ブックの未来はどこに〜その1

またしてもソニーネタですみません。10月2日に、ソニーが新しい電子ブックリーダーを出すようです。

著作権が絡むと遅々として進まなくなる日本を尻目に、米国ではこの市場はけっこう注目されてる。現時点での図式としては、アマゾンとソニーの2強なのかな。アマゾンはご存じKindleで、面白い試みではあるんだけどいまひとつパッとしない印象。デザインがナニだからでしょうか?

ことこの分野に関しては、自分の仕事も関係してるので、言いたいこと/言えないことがたくさんあるんだけど、自分用のメモも兼ねて。長文です。

続きを読む 電子ブックの未来はどこに〜その1